平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「べらぼう」 第1回「ありがた山の寒がらす」~面白さを追求し華やかな江戸文化をつくった男

2025年01月06日 | 大河ドラマ・時代劇
 黄表紙、浮世絵、狂歌──面白さを追求し華やかな江戸文化をつくった男の話である。

 第1回は主人公と登場人物たちの紹介。

 主人公・蔦屋重三郎(横浜流星)は困難に立ち向かう熱い男。

「天下御免」「幕府公認の遊郭」「公界」だった吉原も陰りが出て来た。
 品川や新宿などの宿場でも岡場所ができたからだ。
 客は高いお金を出して、わざわざ吉原で遊ばなくていい。
 安い女郎なら宿場にたくさんいる。
 結果、「呼び出し」のかかる花魁以外の遊女は貧困。
 病にかかれば使い捨て。
 完全な格差社会。
 和泉屋、駿河屋などの女郎屋の主人もそれでいいと思っている。

 そんな吉原の現状に異を唱えて行動するのが重三郎だ。
 重三郎は知恵を使って老中・田沼意次(渡辺謙)の屋敷に入り込み、
 品川・新宿などの岡場所を取り締まってくれ(警動)と直談判。

 ここでの意次と重三郎のやりとりが面白い。

「宿場が栄えるには何が必要か?」
「女と博打です」
「ではそれらを取り締まったら宿場が廃れる。宿場がなくなれば人の行き来や流通が滞る。
 つまり運上冥加(営業税)が減り、経済滞る」
「おまえは吉原に客を呼び込む工夫をしたのか?」
 こう問われた時の重三郎のリアクションが素晴しい。
「今のお言葉で目が覚めました。『ありがた山の寒がらす』にございます」

 重三郎は意次が語った「経済の論理」を即座に理解したのだ。
「客を呼び込む工夫をしたのか?」という問いかけもたちまち反応し、吸収した。
 これが主人公なのである。
 老中様が訴えを聞いてくれなかった、で引き下がるのが普通の人。
 吸収して客を呼ぶ工夫を考えるのが主人公。

 重三郎は客を呼び込むために「女郎たちのガイドブック」を作るらしい。
 そして「女郎の錦絵」
 江戸の出版王の始まりである。
 ………………………………………………

「文化」と「経済」
 1月2日のブログでも書いたが、これは僕の今年のテーマなので今作はドンピシャ。
 どう描かれるか楽しみだ。
「江戸文化」ってすごいと思うんですよね。
 浮世絵、歌舞伎、寿司、天ぷら──現代日本が誇る文化はすべて江戸発祥だ。
 ただ「困難に立ち向かう熱い男」というのは主人公として定番すぎるので気になる。

 妓楼の旦那衆が魅力的だ。
 貧困の女郎を助けろ、と正論を吐く重三郎を無視。
 自分たちは「忘八」、人でなしだからと言い放ち、歌を詠む。
 こう書くと完全な悪役だが、彼らは「人でなし」であることを引き受けて生きているのだろう。
 彼らには覚悟がある。
 今後、どんな言動をするのだろう?
 ちなみに「忘八」とは「八つの徳を忘れた外道のこと」
 八つの徳とは「仁」「義」「礼」「智」「信」「忠」「孝」「悌」。

 今回は吉原の風俗も紹介された。
・大尽、大通、馴染み、一見、鴨~「大通」という言葉は初めて聞いた。
・引手茶屋、待合、妓楼~高級遊女と遊ぶには茶屋や待合で酒宴をしてから妓楼に案内される。
・公界~吉原では武士も町民も関係ない。妓楼に上がるとき武士は刀を預ける。
・絢爛豪華な花魁道中
 これこそが「吉原の文化」
 粋とか野暮とかも描いてほしい。
 今作の脚本は森下佳子さん。
「JIN」の脚本家さんだから吉原には精通している。


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2 コメント

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始まりました (TEPO)
2025-01-06 15:02:52
新年明けましておめでとうございます。

ここ数年、大河では前年からの「つなぎ」をつけるパターンでしたが、今年は花魁たちの「源氏名」で「光る君へ」を継承したのでしょう。
森下佳子さんは自らが脚本を手がけた「Jin」「(男女逆転)大奥」に対するセルフ・オマージュ?
「Jin」については、吉原を舞台としたこと、そしてナレーターに綾瀬はるかさんを起用したこと。
しかも綾瀬さんは声のみならず、姿も見せてくれるサービスぶり。
もっとも、彼女は人間では無く「お稲荷様の化身」なので「何でもあり」。
今回は狐の尻尾付きの花魁姿で、スマホを駆使しての解説。
今後も様々な姿で登場してくれるようです。
「大奥」については、10代将軍・徳川家治@眞島秀和さん=稲葉正勝@「大奥」、8代将軍。徳川吉宗@冨永愛さん=大奥総取締高岳、など。

私にとって吉原についての情報源は、「Jin」の他には隆慶一郎氏の吉原物作品(『吉原御免状』『かくれさと苦界行』)があり、遊女の最底辺「河岸見世女郎」の存在や「けいどう」についてはそこから知っていました。

「Jin」での「夕霧姐さん」を思わせる「朝顔姐さん」は、重三郎を助け、書物の世界を教えてくれた恩人。
そして、差し入れてもらった弁当すら仲間に譲って亡くなる「気高い優しさ」の持ち主。
そんな彼女の遺体が全裸で投げ捨てられるという残酷なリアリズム。
死者の囚人服を使い回したというアウシュビッツを連想します。
この場面のために、AV女優(最近は「セクシー女優」と呼ぶらしい)さん3名に遺体役で出てもらっているそうです。
もう一人の遺体役の女優さんが覆い被さってくれているので、朝顔役の愛希れいかさんは辛うじて全裸露出になっていないというギリギリの配慮。
初回退場は、まひろの母ちやはを思わせる衝撃の設定です。
>「困難に立ち向かう熱い男」というのは主人公として定番すぎるので気になる。
今回後半の暴走とも言える重三郎の行動の原動力はこの「悲惨さ」の描写あってのことかと思います。

押しかけの重三郎とまともに対話してくれた田沼意次は明らかに好意的でした。
和泉屋―この人は忘八ではなく、花の井馴染みの大商人―の「小判鮫」になって面談の場にまで潜り込んできた才覚と行動力とを買っていたからでしょう。
意次の息子意知は重三郎と同年配と思いますが、外からこの面談の場を見ていて「面白い奴」と思ったようです。
今後、田沼父子は重三郎の味方になってゆくのでしょう。

60年くらい前、私が小中学生だったころの歴史教育・学習雑誌の類いでは、徳川吉宗、松平定信、水野忠邦らが「善玉」、汚職政治家である田沼意次は「悪玉」といった論調で示されていた記憶がありますが、その後の世代ではどうなのでしょう。

「大奥」では(女)田沼意次の庇護のもと、大奥の男たちの中に蘭学が芽生え、「赤面疱瘡」克服のための研究が進むが、田沼意次が失脚し松平定信の時代となって蘭学が弾圧されるとされています。
本作も「田沼意次は味方、松平定信は敵」という「大奥」の政治世界観を継承するようです。
「大奥」は家光時代から幕末までを描いていますが、ことによると森下佳子さんは「大奥」の脚本を手がけながら、「大奥」の中からこの時代を取り上げてみようと考えたのかとも想像します。

ちなみに、森下さんと「大奥」原作者のよしながふみさんとは共に1971年生まれ。
森下さんには会社員の経験があるとのことですが、かつての東大生には多数の会社から勧誘があったのに彼女には就職した「リクルート」社しか可能性が無かったそうです。
まさに「就職氷河期世代」であり、そうした世代的世界観が森下さん、よしながさんに共通した背景にあるのかもしれません。
もっとも、「平賀源内視点」だと必然的に田沼意次は「味方」となります。
まさに彼女たちが生まれた1971年~72年、源内@山口崇さんを主役とする「天下御免」という作品が放映されており、当時高校生だった私も視聴していました。
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JIN×大奥 (コウジ)
2025-01-06 16:51:46
TEPOさん

新年明けましておめでとうございます。

僕は「大奥」を見ていないので気づかなかったのですが、幕府の田沼意次パートは森下さんの得意分野だったんですね。
つまり今作は「JIN」×「大奥」。

今作の意次は「お金」や「人の欲」を肯定的にとらえている人物のようですね。
経済こそが「経世済民」、人を救うと考えている様子。
僕は意次や将軍・家治についてほとんど知識を持っていないので勉強させてもらいます。
平賀源内などもどう描かれるか楽しみです。

僕も『吉原御免状』を思い出しました。
吉原は家康が認めた公界。
花魁道中などを見ると、まるで幻想の異世界のようですね。
「吉原御免状」は改めて読み返してみます。
「かくれさと」は探して読んでみます。
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