平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」 第46回「刀伊の入寇」~書くことはどこででもできる。紙と筆と墨があれば

2024年12月02日 | 大河ドラマ・時代劇
 宮廷から解放されて自由になったまひろ(吉高由里子)。
 しかし、自由とは不安になることでもある。
 解放されて一時の高揚感を得られるが、やがて自分が何者であるか、わからなくなる。

 たとえば会社員は会社に勤めている時は「会社員」でいられる。
 母親は子育てをしていれば「母親」でいられる。
 それらがなくなった時、自分は何者なの? と考え始める。

 まひろは自分の思いを周明(松下洸平)に語った。
 道長(柄本佑)については、
「あの人はわたしに書くことを与えてくれたの。
 書いたものを大勢の人に読まれる歓びを与えてくれた。
 私が私であることの意味を与えてくれたのよ」

 現在の気持ちについては、
「もう私には何もないの。
 あの人に役立てることは何もない。
 都にも私の居場所がない。
 何かを書く気力もない。
 わたしは終わってしまったの。
 終わってしまったのに、それを認められないの」

 今作の特徴は登場人物が多くを語らないことだが、今回のまひろは多弁だった。
 自分の思いを素直に語った。
 まひろは「自分探し」をしている。
 いや、もはや自分探しをする気力がなくなっている。
 まひろは完全に燃え尽きてしまった。

 自分には何もないと嘆くまひろに周明はこう語る。

「まだ命がある。これから違う生き方ができる」
「書くことはどこででもできる。紙と筆と墨があれば。都でなくても」

 さて、まひろは「第二の人生の自分探し」にどう結論を出すのか?
 周明の言葉と死はまひろに何をもたらすのか?
 太宰府に戻った時、周明は何を語ろうとしていたのか?

 おそらく、まひろはまた何かを書き始めるのだろう。
 まひろの生涯は「書くことがすべて」だったから。
 では何を書くのか?
 その答えは次回。


※追記
 枯れてしまったまひろと対照的に、書くことに意欲旺盛な赤染衛門(凰稀かなめ)。
 発注は道長の物語だったのに、宇多天皇の時代から書き始めた!
 余裕があれば、藤原氏が隆盛を誇るきっかけとなった大化の改新から書きたかったらしい。笑
 赤染衛門が書きたかったのは、仮名による壮大な歴史書!
 まひろより年齢が上だと思うけど、赤染衛門のこのパワーはすごい。
 まひろ、枯れている場合ではないぞ。
 それと「栄花物語」の成立をこんなふうに解釈するとは!
 
※追記
 紫式部の後半生や殁年は明らかになっていないので、太宰府パートは作家が自由に書けるパート。
 脚本・大石静さんは「作家が筆を折るとはどういうことなのか?」と追及したくなったのだろう。
 それと大石静さんのだんなさんは「光る君へ」執筆前に亡くなったらしい。
 周明が亡くなり、道長が亡くなり……
 ここからは大石静さんの「私小説」パートになるのかもしれない。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 聖地巡礼② 「ウ・ヨンウ弁護... | トップ | 韓国の戒厳令事件で『緊急事... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
周明の再登場 (TEPO)
2024-12-02 14:38:58
ネット上の情報によれば、最終盤(今回から最終回くらいまで)にかなり大幅なシナリオ変更があるらしいとのこと。
周明の登場もその一環で、公式ガイドブック(の実物を私は見ていませんが)を元としたネタバレ予想情報には周明の登場は示唆されていませんでした。
無論、公式ガイドブックとは無関係なところでは、宋と関係深い周明の再登場を予想する声はありましたが。
周明はまさに「今回限り」での再登場ですが、今回に限ってはひたすらまひろに寄り添っていました。
太宰府を案内し、双寿丸との再会、隆家との出会いにも立ち会い、最後は「刀伊」の襲撃との遭遇まで同行しています。
>今回のまひろは多弁だった。自分の思いを素直に語った。
おそらく、そのための「聞き手」として周明が起用されたのでしょう。
周明とまひろとの間にあったことは、すでに20年の時の彼方。
当事者性(利害関係)はほぼ無いにもかかわらず、道長への思いをも含めてまひろを最も理解できる立場。
前回は「まひろロス」に狼狽える道長に対して「余裕綽々」と見えたまひろですが、今回はまひろ側の思いをまひろ自身の口から語らせるための仕掛けだったのでしょう。
ところでこの「シナリオ変更」、本当にシナリオ変更だったのか。
ここで周明を登場させることは当初からの予定であって、ネタバレ予想を引っ繰り返して最終盤を盛り上げるため、公式ガイドブックには「ダミー」のあらすじを載せておいた、などといったこともあるのでしょうか。

敵から逃れる途中で転んだまひろに周明が手を差し伸べたところ、偶々通りかかった息子が「あ、この人死ぬ!」と叫び、次の瞬間本当に矢が飛んできたのには驚きました。
気がつくと最近私は「メタ」的なコメントが多くなっています。
歳のせいで物語にのめり込まなくなっている―無論、今回も含め「泣かせる」場面で涙ぐむくらいの感情移入はしますが―のかもしれません。
他方、若い息子は断片的な視聴でもドラマの世界に入ってしまう―それゆえに却ってドラマ(辛い場面)嫌いなのですが―のかもしれません。

ところで、隆家は人が変わったかのように立派になりましたね。
まさに「太宰府の名君」といった雰囲気でした。
返信する
迷っている大石静さん (コウジ)
2024-12-03 07:43:54
TEPOさん

いつもありがとうございます。

大幅なシナリオ変更。
大石静さん、迷っている感じがしますね。
おっしゃるとおり周明はまひろに語らせるための役割。
それが見え見えですし、僕はまひろが多弁なのが気になりました。
まひろにとって道長がどのような存在だったのか(私が私であることの意味を与えてくれた)を語らせるだけでよかったと思います。
無理矢理、「書く」というテーマをねじ込んできた印象も受けました。
さて、どう決着をつけるのか?

息子さんの感性、鋭いですね。
僕もラストでああなるとは思いませんでした。
確かにベタ過ぎる展開ですし、周明の不在期間が長く、いきなりの再登場、いきなりの退場なので、その死に感情移入しにくくなっています。
これも、迷っている大石さんが大きなシナリオ改変をした結果でしょうか?
大石さんは、作品を上手くまとめるより、破綻覚悟でさらに別のテーマを描きたかった?

隆家は「窮屈な宮廷生活」を否定する人物として描かれていましたね。
物語は「武家の時代の到来」を告げる形で進行しているようです。
返信する
死亡フラグ (2020-08-15 21:49)
2024-12-04 07:02:48
説明セリフになりますが、こんなやりとりを出した方がよかったかもしれません。
まひろ「ことば、分かる?」
周明 「宋でも高麗でもない、誰だ、こいつら」

刀伊は女真族系統ともいわれているようです。
今では中国やロシアの一部になっている地域ですが、当時は異民族の土地だったわけですし、ここで周明に「言葉が分からん」というひと言をいわせれば、世界観が広がったと思います。
もっとも、今回はまひろと周明のラブラブがメインだった感じですし、そのあたりは仕方ないのかもしれません。
また、刀伊が正規軍ではなく民間的な海賊的なイメージになっていたのは、よかったかと思います。

周明の「お亡くなり」シーンですが、わたしは予測できませんでした。ただ、違和感はありました。あの場面だけ急に整った構図になって、カメラもFIXに近い状態になったので「おや?」と思ったら矢が飛んできたので、妙に納得したわけです。
返信する
次回、掘り下げてほしいですよね (コウジ)
2024-12-04 08:58:15
2020-08-15 21:49さん

いつもありがとうございます。

ソウルに旅行に行っていたこともあり、今、ソウル関連の本を読んでいるのですが、韓国の歴史は中国・モンゴル・女真族、そして日本の侵攻に悩まされてきた歴史のようですね。

内乱もあって、660年に百済が新羅によって滅び、663年に白村江の戦いで日本の援軍が敗れ、大量の百済の難民が日本に避難してきたとか。
そして新羅の報復を怖れた大和は防衛のために、対馬、壱岐、筑紫などに朝鮮式の山城を造ったとか。

日本の古代史は大陸の関係なしに語れないんですよね。
なので中世史になりますが、今回の刀伊の入寇に関しても、次回はもっと掘り下げてほしいですね。
なぜ侵攻して来たのかなどを描いてほしいです。

死亡フラグについては映像を見て感じられるとはお見事です!
僕は繋いだ手のアップの方が気になってしまいました。
返信する

コメントを投稿

大河ドラマ・時代劇」カテゴリの最新記事