こひしくは みてもしのばむ もみぢばを ふきなちらしそ やまおろしのかぜ
恋ひしくは 見てもしのばむ もみぢ葉を 吹きな散らしそ 山おろしの風
よみ人知らず
恋しくなったら、残った紅葉の葉を見て盛りの頃を偲ぶのだから、山おろしの風よ、紅葉の葉を吹き散らすなよ。
一見、歌意のわかりやすい歌のようですが、繰り返し読んでいると、恋しくなって偲ぶ対象は紅葉の葉なのかそれに見立てられた愛しい人なのか、また、作者が今見ている紅葉の葉は盛りは過ぎたとは言えまだ枝に残っているのかすでに道端に散っているのか、いずれの解釈も成り立ちそうですね。個人的には、「(今だけではなく)恋しくなったらその時に見て偲ぶ」のですから、わずかに枝に残った葉と捉えておきたいと思います。