おくやまの いわがきもみぢ ちりぬべし てるひのひかり みるときなくて
奥山の 岩垣もみぢ 散りぬべし 照る日の光 見る時なくて
藤原関雄
奥山の岩の崖の紅葉は散ってしまうことだろう。照る日の光を見ることもなく。
詞書には「宮仕へ久しうつかうまつらで、山里にこもりはべりけるによめる」とあります。作者の藤原関雄(ふじわらのせきお)は平安時代初期の貴族で官位も得ていましたが、宮仕えよりも隠遁生活を好み、自ら東山に隠棲したとされます。しかしながらこの歌からは、天皇の恩寵(=照る日の光)を得ることができないまま人生を終わらんとしていることの不遇を嘆く思いが感じられます。晩年には病を得て官職を辞してもおり、自ら隠棲を望んだという言われは必ずしも事実ではないのかもしれません。
勅撰歌人として、古今和歌集には二首が入集しています。