あきをおきて ときこそありけれ きくのはな うつろふからに いろのまされば
秋を置きて 時こそありけれ 菊の花 うつろふからに 色のまされば
平貞文
秋が盛りの菊の花だが、それ以外の時にも盛りの時期があるのだなあ。色が変わってその美しさが褪せるのではなく、別の美しさを見せるのだから。
詞書には、退位・出家して仁和寺に移り住んでいる宇多法皇に菊の花が召された際に、法皇の命により菊に添えて奉った歌とあります。色変わりもまた美しい菊を賞美することを通じ、立場や住居が変わってもなお人生の盛りを失わない法皇を祝賀する意味を込めているのでしょう。