むすぶての しづくににごる やまのゐの あかでもひとに わかれぬるかな
むすぶ手の しづくに濁る 山の井の あかでも人に 別れぬるかな
紀貫之
掬う手からこぼれる雫で濁ってしまい、少ししか飲めない山の清水のように、飽き足りない思いのまま別れて行ってしまうのですね。
古来評価が高く、貫之の代表作のひとつとされている名歌です。また、手に掬う水と言えば思い出されるのは 0002 のこの歌。
そでひちて むすびしみづの こほれるを はるたつけふの かぜやとくらむ
袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらむ
さらに、貫之の辞世の歌でもモチーフとなっています。(拾遺和歌集 1322)
てにむすぶ みづにやどれる つきかげの あるかなきかの よにこそありけれ
手に結ぶ 水に宿れる 月影の あるかなきかの 世にこそありけれ