漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0404

2020-12-07 19:16:28 | 古今和歌集

むすぶての しづくににごる やまのゐの あかでもひとに わかれぬるかな

むすぶ手の しづくに濁る 山の井の あかでも人に 別れぬるかな

 

紀貫之

 

 掬う手からこぼれる雫で濁ってしまい、少ししか飲めない山の清水のように、飽き足りない思いのまま別れて行ってしまうのですね。

 古来評価が高く、貫之の代表作のひとつとされている名歌です。また、手に掬う水と言えば思い出されるのは 0002 のこの歌。

そでひちて むすびしみづの こほれるを はるたつけふの かぜやとくらむ

袖ひちて むすびし水の こほれるを 春立つけふの 風やとくらむ

 

 さらに、貫之の辞世の歌でもモチーフとなっています。(拾遺和歌集 1322)

てにむすぶ みづにやどれる つきかげの あるかなきかの よにこそありけれ

手に結ぶ 水に宿れる 月影の あるかなきかの 世にこそありけれ