たむけには つづりのそでも きるべきに もみぢにあける かみやかへさむ
手向けには つづりの袖も きるべきに 紅葉に飽ける 神や返さむ
素性法師
手向けには、私のこの粗末な着物を切ってでも幣としてささげるべきでしょうけれど、美しい紅葉を堪能している神様は、いらないと言って返してこられるでしょうか。
一つ前 0420 の道真の歌を受けての詠歌。幣を用意できなかったので手向山の美しい紅葉を幣としましょうという道真歌に対して、紅葉を堪能した神には、もはや私の粗末な着物などを幣としてささげたところで返されるのが関の山でしょう、と返した訳ですね。
さて、0406 から始まった巻第九「羇旅歌」もこれでお仕舞い。次の 0422 からは巻第十「物名」となります。言葉遊びの類ですが、個人的にはとても好きな分野です。どうぞ引き続きお付き合いください。