ひととせに ひとたびきます きみまてば やどかすひとも あらじとぞおもふ
一年に 一度来ます 君待てば 宿貸す人も あらじとぞ思ふ
紀有常
一年に一度だけいらっしゃる人を待っているのだから、その人をおいて他に宿を貸す相手もいないだろうと思う。
「天の川にやってきたのだから、今夜は織姫に宿を借りよう」という 0418 に対し、織姫は一年に一度だけやってくる彦星を待っているのだから、彦星以外の人に宿を貸すことはないよ、という返しです。旅路での戯れのやり取りですが、機智に富んだ当意即妙の返しと言うべきでしょうか。
作者の紀有常(き の ありつね)は平安時代前期の貴族にして歌人。勅撰歌人として古今集にこの一首、新古今和歌集に一首が入集しています。