漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0415

2020-12-18 19:40:10 | 古今和歌集

いとによる ものならなくに わかれぢの こころぼそくも おもほゆるかな

糸による ものならなくに 別れ路の 心細くも 思ほゆるかな

 

紀貫之

 

 糸に縒ることができるわけでもないのに、別れ路がまるで糸のように心細く思えることよ。

 別れの心細さを細い糸にたとえつつそれを否定(「糸でもないのに」)する手法。この歌について、吉田兼好は徒然草第十四段で

 貫之が、「絲による物ならなくに」といへるは、古今集の中の歌屑とかや言ひ傳へたれど、今の世の人の詠みぬべきことがらとは見えず。

と言っています。古来この歌が「古今集の歌屑」と酷評されたこと、そしてそれに対して兼好が反論していることがわかります。