やまかくす はるのかすみぞ うらめしき いづれみやこの さかひなるらむ
山隠す 春の霞ぞ うらめしき いづれ都の さかひなるらむ
乙
山を隠す春霞がうらめしい。どの山のあたりが都なのであろうか。
詞書には「東の方より京へまうで来とて、道にてよめる」とあります。東国から都へ向かう道々、早く着きたいと逸る気持ちと裏腹に、春霞に遮られて行く手が見通せないもどかしさを歌にしています。
作者の乙(おと)は、遠江介壬生益成(みぶ の ますなり)の娘で、9世紀を生きた人物。古今集へは、この歌が唯一の入集です。