からごろも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ
唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞ思ふ
在原業平
着物を着て褄に慣れるように慣れ親しんだ妻を残して来たので、妻のことを思い出しては、はるばるとやって来たものだとこの旅をしみじみと思うことだ。
「唐衣」は「着る」にかかる枕言葉。「つま」は着物の「褄」と自身の「妻」との掛詞になっています。
詞書に「かきつばたといふ五文字を、句のかしらにすゑて、旅の心をよまむとてよめる」とあります。歌を構成する五句(五・七・五・七・七)の最初の文字を拾っていくと「か・き・つ・は・た」となっているという訳で、いわゆる「折句」の技法ですね。