かづけども なみのなかには さぐられで かぜふくごとに うきしずむたま
かづけども 波の中には さぐられで 風吹くごとに 浮き沈む玉
紀貫之
水に潜っても、波の中にはみつけることができず、風が吹くたびに浪間に浮き沈みする玉であるよ。
隠し題は「なみのなかには さぐられで」と詠み込まれている「かにはざくら」。現在では樺桜(かばざくら)と呼ばれている桜のこと。「かづく」は水に潜る意で、泡立つ波を玉に見立て、それが水中では見つけられないと詠んでいます。歌意的には「だから何?」と言いたくなる系(失礼!)の歌ですが、六文字と比較的長い言葉をうまく詠み込んだ物名歌として楽しみましょうか。