こひしくは したにをおもへ むらさきの ねずりのころも いろにいづなゆめ
恋しくは 下にを思へ 紫の 根摺りの衣 色に出づなゆめ
よみ人知らず
恋しく思うのであれば、心の中で思っていなさい。紫草の根で摺った衣のように、決して表には出さずに。
「紫」は紫草の意で、根から赤紫色の染料が取れる。「ゆめ」は禁止や打消しの語を伴って「決して~するな」「まったく~ない」の意を表す副詞。現代でも、少し文語調がかった文章などで「ゆめゆめ~するでないぞ」などと使いますね。
こひしくは したにをおもへ むらさきの ねずりのころも いろにいづなゆめ
恋しくは 下にを思へ 紫の 根摺りの衣 色に出づなゆめ
よみ人知らず
恋しく思うのであれば、心の中で思っていなさい。紫草の根で摺った衣のように、決して表には出さずに。
「紫」は紫草の意で、根から赤紫色の染料が取れる。「ゆめ」は禁止や打消しの語を伴って「決して~するな」「まったく~ない」の意を表す副詞。現代でも、少し文語調がかった文章などで「ゆめゆめ~するでないぞ」などと使いますね。
よしのがは みづのこころは はやくとも たきのおとには たてじとぞおもふ
吉野川 水の心は はやくとも 滝の音には 立てじとぞ思ふ
よみ人知らず
私の思いは吉野川の水のように激しいけれど、滝が音を立てるような噂にはならないようにしようと思う。
世間の人には知られまいとする恋歌が続いています。
なとりがは せぜのむもれぎ あらはれば いかにせむとか あひみそめけむ
名取川 瀬々の埋木 あらはれば いかにせむとか あひ見そめけむ
よみ人知らず
名取川の浅瀬に埋もれ木が現れるように、私たち二人の秘めた仲が世間に知られたらどうするつもりで、逢瀬をし始めたのだろうか。
weblio古語辞典 によれば、「むもれぎ(うもれぎ)」とは、
① 木の幹が、長い間水や土の中に埋もれていて炭化したもの。細工物に用いる。仙台に近い名取川のものが有名。
②世間から捨てられて、顧みられない身の上のたとえ。◆中古以降は多く「むもれぎ」と表記。
とのこと。「名取川」は今の仙台市・名取市を流れる川で、0628 に続いての登場です。
きみがなも わがなもたてじ なにはなる みつともいふな あひきともいはじ
君が名も わが名も立てじ 難波なる みつともいふな あひきともいはじ
よみ人知らず
あなたの噂も私の噂も立てるまい。だから、難波の御津ではないが、私を見たとも言うな。私も逢ったとは言わない。
第一句と第二句、第四句と第五句が対になって軽快なリズムを生み出していますね。「御津」は今の大阪市にあった港の名です。
さよふけて あまのとわたる つきかげに あかずもきみを あひみつるかな
さ夜ふけて 天の門わたる 月影に あかずも君を あひ見つるかな
よみ人知らず
夜が更けて、空を渡って行く月の光に照らされながら、いつまでも満ち足りることなくあなたと逢ったことであるよ。
「天の門」は天の川の舟の渡し場のこと。「あかず」は「飽かず」で、月が空を渡る間ずっと逢っていてもそれで満ち足りることはなく、いつまででも一緒にいたいという気持ちですね。