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『トランプ大統領始動、文句を言うだけで何もしない政治家はいならいとばかりに有言実行』

2017-01-27 06:19:55 | 日記

公約として掲げてきたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)離脱に関する大統領令に署名し、「永久的に」離脱すると言明した。それに対して、日本の閣僚は口をそろえて自由貿易の大切さをトランプ大統領に説明する。とトンチンカンな発言です。もはや、トランプ政権が再びTPPの交渉につくことはない。いつまでも拘って他の参加国と協定を結んでも利益を喪失するだけです。今は対米輸出企業への擁護の方が重要です。「有言実行」をおこなうトランプ大統領と向き合えるかが安倍政権の試金石となるようです。

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米国のトランプ政権への期待が再び高まり、トランプ相場の「第2幕」が開いたようだ。昨年11月8日の大統領選以降、市場はここへ来てトランプ大統領の施策などを再評価、株高・ドル高・金利上昇の動きが強まった。25日のNYダウはついに史上初の2万ドル台に乗せた。これを受け、日経平均株価も1月5日につけた高値1万9615円をうかがう勢いだ。

■「有言実行」を評価した市場

 なぜ株価は再び騰勢を強めたのか。大統領選勝利以降初めてとなった記者会見では、トランプ氏は具体的な政策などに言及すると思われたが、その期待は見事に裏切られ、一部メディアへの集中的な攻撃に終始、全く中身がないものとなった。これに失望した市場が、株価の上値を買うことを止め、調整モードで就任式を迎えることとなった。

 20日の就任式では、大統領らしさを見せるものと思われたが、今回も具体的な政策に触れることはなく、選挙戦から訴えてきた「米国第一主義」を繰り返すにとどまり、大衆迎合的な内容だったとの印象を強く植え付けることとなった。米国第一を掲げるスタンスは、これまでトランプ大統領が訴えてきた考えの中心的なものではあるが、これまでの強気一辺倒のスタイルに比べると、ややネガティブな印象を受けたというのが正直なところである。

 しかし、ここからがトランプ大統領の尋常ではないところである。公約として掲げてきたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)離脱に関する大統領令に署名し、「永久的に」離脱すると言明した。まさに「有言実行」である。その他にも、矢継ぎ早に米国の大手企業トップと会談し、また外交面でも動きを見せるなど、フットワークの軽いところを見せている。

 この数日間のトランプ大統領の行動を見る限り、とにかく行動が早く、結論を出す、あるいは決断を下すのが極めて速い。これはトランプ氏がビジネスマンとして培ってきたスタイルであり、このスタイルで成功を収めた自負がある。今後も、重要事項でもかなり早いスピードで次々に決断し、周りを圧倒するだろう。このような動きに周りがついていけるかがポイントになりそうだ。

「話せばわかる」は通用するか?

 もっとも、今回の新政権の閣僚はビジネス出身者が多いこともあり、こうしたテンポで政権運営を進めるのはお手の物であろう。そのうえで重要なことは「自らの利益になるかどうか」がすべての判断の物差しであるという点である。米国の金融機関の仕事ぶりをご存知の方は理解できるだろうが、とにかく仕事に厳しい。

 そのうえ、かなり早いスピードで結果を求められる。また、ビジネスである以上、双方の利益になることが本来の姿だが、まずは自らの利益優先をさせる傾向が強い。一定の妥協はあろうが、基本はこのスタンスである。他国の代表者や企業の経営者などのカウンターパーティーは、相当の覚悟をもって対処しなければならないはずだ。

 心配なのは、日本側にそのような認識や経験を持つ閣僚や官僚がどの程度いるのかだろう。もちろん、企業経営者も同様である。今後は、米国の利益になるような提案ができなければ、ビジネスは進められない。

■米国の政権は「トランプHD」になった

 トランプ大統領に日本的な浪花節や粘り強い交渉が通用するのだろうか。そう簡単ではないことだけは確かである。安倍晋三政権内には「トランプ大統領は理解不足であり、日本側が丁寧に説明すればわかってくれる」との期待もあるようだ。TPPについても、粘り強く説得すれば、いずれ理解してくれるとの期待もあるようだが、トランプ大統領がすでに「永久的に」TPPから離脱するとし、大統領令に署名してしまっている。そうした期待は、それこそ水泡に帰すだろう。

 かなりのスピードで選挙戦からの公約を次々に実行に移している姿から見えてくるのは、「トランプ大統領は本気であり、妥協を許さない人物である」ということだ。トランプ大統領のビジネススタイルに一定程度則って行動することが求められそうだ。トランプ大統領が米国内外の主要企業に対して国内に工場を作り、そこで生産することを強く要求している姿などは、さながら「トランプ・ホールディング・カンパニー」の代表取締役であり、最高経営責任者(CEO)を彷彿とさせる。傘下にある子会社が、それぞれの企業体と考えればわかりやすいだろう。

 つまり、トランプ大統領は親会社の社長あるいは経営責任者として子会社にトップダウンで業務を指示し、子会社の社長である各企業の代表者が指示に従って行動するわけである。いまのところ、完全なるトップダウンであり、指示に逆らうことは国に逆らうことでもあり、ある意味選択の余地がない。

日本はトランプHD「傘下」に入るのか

 こう考えると、大変だ。フォードがメキシコに工場を建設する予定だったのを、トランプ大統領の「鶴の一声」で米国内に建設する方針に変更したのはその典型例である。しかし、トランプ大統領にとって重要なことは、米国の繫栄だ。米国として収益が最大に上がる方法であれば、トランプ大統領は口出しをしないだろう。

 問題は、日本企業はこの「傘下」に入るのか、である。その判断は極めて難しい。だが日本国外で競争することは、さまざまな意味でリスクも伴う。少なくとも米国民の雇用を保障し、それを一段と目に見える形で実行することが求められそうだ。確かに、トランプ大統領はすべてを正しく理解していない節がある。実際、日本企業は米国内で多くの米国人を雇用している。しかし、トランプ大統領はあえてそのことに触れずに、問題があるかのように振る舞っているのだろう。そう振る舞うことで、自国に優位になるように仕向けていると考えているはずである。日本企業だけではないが、改めて、大変な時代を迎えたといえる。

■「少しずつ」投資をして、株価の下落に備える

 投資をするうえで重要なポイントは、やはりドル円相場の水準であり、方向性だ。トランプ大統領は「現在のドル高では中国とは競争できない」とし、ドル高をけん制する発言をした。ムニューチン次期財務長官候補も、「過度に強いドルは短期的には米国経済にマイナス」とし、バランスをとりつつも、ドル高けん制を明確にしている。

 今後、トランプ大統領が推し進めようとする政策を実行すれば、ドル安志向にならざるを得ない。これは筆者が従来から指摘してきた通りだ。イエレンFRB(米連邦準備理事会)議長が「利上げペースを速める」といったたぐいの発言をし、これまでの慎重な姿勢から大きく転換したかのような印象を与えているが、これはこれまで自身を批判してきたトランプ大統領への当てつけである可能性もある。いずれにしても、FRBの政策の重要度は、トランプ大統領の登場によって、従来よりも低下した感がある。

 もちろん、トランプ大統領の言動を快く思っていない人は決して少なくない。だが市場を見るうえでは、そのような個人的な好き嫌いは関係ない。むしろ、投資判断を曇らせる可能性の方が高い。いまはトランプ大統領の言動を淡々と見守り、その成果や影響を見極めることが肝要である。

 それでも具体的な投資戦略が浮かぶわけでもないだろう。とすれば米国の今後の成長性が変わらないことを前提に、無理せず少しずつでも投資をし続けるのが、結局は勝利への近道かもしれない。

 果たして、このあとトランプ相場の「第3幕」があるのかはわからない。言えることは、「第2幕」が終わり、何らかのショックで大きく株価が下落したときに、たっぷりと仕込めるように現金を用意しておくことである。トランプ大統領が、米国への投資をさらに促すような政策を打ち出せば、このような考えに基づく投資は長期的に見れば奏功するだろう。また、今後はドル安円高になりやすいことを考慮すれば、投資対象としては、日本株よりも米国株に分があるだろう。この点にはこれまでも、そしてこれからも注意が必要と考える。

江守 哲

コメント (1)
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