福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

時空を消す蝉の声

2018-07-24 | 法話
猛暑の中、庭のクマゼミの大合唱が聞こえます。蝉の声は一瞬のうちに,生まれた山寺の裏庭に連れ戻します。そこは庭一面の苔に松の緑が映り、腐葉土から立ち上る山の香に裏山からの蝉の声だけがいつまでも聞こえてくる甘美な世界でした。時間も無く、人間もいない不思議な空間でした。蝉の声はあっという間に60年間の時空を消す力を持っています。三島由紀夫の「豊饒の海」の最後の「この庭には何もない。記憶もなければ何もないところへ、自分は来てしまつたと本多は思つた。  庭は夏の日ざかりの日を浴びてしんとしてゐる…… 」という描写はまさに自分の為のものかと思いました。
「いそのかみ ふるきみやこのせみしぐれ 声ばかりこそ 昔なりけれ」とでもいうところでしょうか。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 五輪九字明祕密釋・・23 | トップ | 今日は十斎日です »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

法話」カテゴリの最新記事