大唐青龍寺恵果和上の御釈にも、「人の中に立つ時は国王、法の中に最上なるは密教なり」と釈したまふ(大師の「性霊集・大唐神都青竜寺故三朝の国師灌頂の阿闍梨恵果和尚の碑」に「(恵果和上)常に門徒に告げて曰く『人の貴きは国王に過ぎず、法の最なるは密蔵にしかず、牛馬にむちうって道に趣くときは久しくして到り、神通に駕して跋渉するときは労せずして至る。諸乗ると密蔵と豈に同日に論ずることを得んや・・」とあります)。ここをもって善導和尚も「余経に漏れたるを陀羅尼をもってこれを利す」と、説かせたまふ。このゆえは念仏はひとえに他力による。真言には「以我功徳力、如来加持力、及以法界力(本人の徳分・仏様の加護・周囲環境の支援 )」とて、この三力によれば、末法劫末のときにもしゃり(舎利)の利益あるべしとみえはべるなり。六波羅蜜経にいわく、「・・あるいはまた、有情、もろもろの悪業、四重八重(謀反・謀大逆・謀叛・悪逆・不道・大不敬・不孝)・不義)五無間罪(殺父、殺母、殺阿羅漢 、出仏身血、破和合僧)をつくり、方等経(大蔵経)を謗る。一闡提(一切の善根を断じた者)等の種々の重罪を消滅することを得せしめ、即疾に解脱し、頓に涅槃を悟る。しかも彼がためにもろもろの陀羅尼蔵を説く」と云々。まことにありがたくも、三大僧祇の修行を一念の阿字に超え(無限の時間を要する修業を梵字の阿字を心に思い浮かべるのみで達成し)、一字の真言あれば大乗とても鈍愚のものも、唱えやすし。智浅きとても呪力深ければ利益むなしからず。観念せざれども、三力の加持(以我功徳力、如来加持力、及以法界力)なれば悉地成就しやすし。現当(現世・来世)には罪障を払ひ、到来(遠い将来)には菩提を得て、九品蓮台のまえに、弥陀(阿弥陀様)の聖容を拝せん事疑いなし。(続)
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