「真言宗義章」(真言宗各派聯合法務所編纂局 1916))
・はしがき
(「真言宗は大日如来の直接説かれた教えであり弘法大師がこれをお伝えになった。この教えは、衆生も佛であるとの教えであり、過去現在未来を超えた教えである。曼荼羅に投華得佛して所縁の仏を感得すれば、機根の優れたものは即身成仏し、教えにより利益を蒙る者は浄土に往生する。この教えは現象即真理の教えであり、鎮護国家の教えである。故にこの逢い難き密教に逢うことのできた現在将来の不思議な縁を歓び菩提心を退転せずに常に不殺生・不偸盗・不邪淫・不妄語・不綺語・不悪口・不両舌・不慳貪・不瞋恚・不邪見の十善戒を守り、父母・国・衆生・三宝の四恩に恩返しすべきである。僧も俗人も努めよ、努めよ。」)
夫れ我が真言陀羅尼宗は法身如来の直説にして高祖大師之を相承したまふ。じつにこれ凡聖不二の妙道、三時超越の法門なり。是をもって曼荼羅灌頂の壇に入り、機教相応する者は即身に成仏し、教益甚深の利益を蒙る者は浄土に往生す。況や斯教えは即事而真の深法、鎮護国家の洪範なり。故に現当二世の宿縁を歓び菩提心を退転せず常に十善をおこなひ四恩に報答すべし。通俗其れ旃を勉めよ。