続日本記・霊亀元年(715)十月七日「(元正天皇)詔して曰はく、国家の隆泰は、要ず、民を冨ましむるに在り。民を冨ましむる本は、務、貨食に従ふ。故に、男は耕耘に勤め、女は機織(はたおり)を脩(おさ)め、家に衣食の饒(にぎわい)有りて、人に廉耻の心生ぜば、刑錯の化、爰に興り、太平の風致るべし。凡そ厥の吏民、豈勗(つと)めざらめや。今、諸国の百姓、産術を尽さず、唯、水沢の種に趣きて、陸田の利を知らず。或は水害・旱魃に遭はば、更に余穀無く、秋稼若し罷まば、多く饑饉を致さむ。此れ乃ち唯に百姓の懈懶(けらい)せるのみに非ず、固に国司の教導を存せぬことに由る。百姓をして、麦禾を兼ね種うること、男夫一人ごとに二段ならしむべし。凡そ粟の物とあるは、支ふること久しくして敗れず、諸の穀の中に於いて、最も是れ精好なり。この状を以って遍く天下に告げて、力を尽して耕し種え、時候を失ふこと莫からしむべし。自余の雑穀は、力に任せて課せよ。若し百姓の、粟を輸して稲に転する者有らば聴せ、とのたまふ」
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