以上の如く十善十悪業に各々四種の原因業の区別(順現業・順次業・順後業・順不定業(注1))及び結果報の差異ありて(華報・果報・等流果・増上果(注2))、賢愚老少男女利鈍を問わず、すこしもこの法則から脱することはできない。これを天地自然の真理の制裁という。であるからこの十善戒は近くは人の人たる所以の至徳を全うする事であり、遠くは無漏法性に通達する要道である。(実際、殆どのお経にこの十善戒は出てきます。阿含経・生経・非華経・佛本行集経・大般若波羅密多経・仁王護国般若波羅蜜多経・華厳経・涅槃経・大日経・守護国界主陀羅尼経・・・等です。つまりこの十善戒は仏教の入口であり、同時に出口たる覚りをも保証するものでもあるということです。)
(注1
・順現業とは、現世に善悪業因をなして現世にその賞罰を受けるもの。
・順次業とは、現世に善悪業因をなして次の世にその賞罰を受けるもの。
・順後業とは、現世に善悪業因をなして三回目以降の世にその賞罰を受けるもの。
・順不定業とは、つよい善悪を造ってないため、報いを受ける時期が定まっていないもの。
)
(注2
・華報は現世に賞罰を受けきり、余報を残さないもの。
・果報は重い善悪の業を造ったため、現世には軽い賞罰を受けて後世、後後世に残りの重い賞罰を受けるもの。
・等流果は善因から生じた善果、悪因から生じた悪果のように、因と同じ性質(等しき流類)の結果 のでるもの。前世に於いて学門を修めたものは生まれながらにして優秀であり、前世に於いて大酒好色であった者は生まれながらにして大酒好色なるようなもの。
・増上果、これは結果に対して力を与えて強くする因の力によって生じた果という意。すなわち業の強い余勢によって現われた結果のこと。前世に強き善業をつくれるものはその身体に好結果を得るのみならず、なすところ万事福慶ならざるということなし。桃李等の植物を植えれば果実を多く結び、邸宅を建てれば邸宅堅固にして火事等の災害なく、国土を宰領すれば国土豊饒にして百穀成熟し、山林を購入すれば樹林繁茂し、衣服を裁製すれば染色光沢あるがごとし。悪業の増上果はこれに反し、戦乱の後は必ず飢饉あるがごとし。)
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