福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

四国遍路日記(山頭火)・・その20

2014-03-27 | 講員の活動等ご紹介
 十二月十四日 晴。

藤岡さんを局に訪ねて郵便物をうけとる、いずれもうれしいたよりであるが、とりわけ健からのはうれしかった、さっそく飲む、食べる、――久しぶりに酔っぱらった。
夕方帰宿すると、留守に高橋さんが来訪されたそうである、新居の吉報を齎らして、――すみませんでした。
ぐっすり寝る、夢も悔もなし、こんとんとしてぼうぼうばくばくなり

 十二月十五日 晴。

昨日の飲みすぎ食べすぎがたたっている、朝酒数杯でごまかす。
午前、高橋さん来訪、厚情に甘えて、新居へ移った、御幸山麓、御幸寺の隠宅のような家屋、私には過ぎている、勿体ないような気がする。
高橋さんがいろいろさまざまの物を持って来て下さる、すなおに受ける、ほんとうに感謝の言葉もない、蒲団、机、火鉢、鍋、七輪、バケツ、茶椀、箸、そして米、醤油、塩。
昼食は街のおでんやで、夕食は高橋さんの宅で。――
夜は高橋さんに連れられて安井さんを訪ねた、あるだけの酒をよばれる、揮毫したり、俳談したり、絵を観せてもらったりしているうちに、いつしか十時近くなったのでいそいで帰る、練兵場を横ぎりそこなって、うろうろしたけれど、さわりなく帰れた、そしてすぐ寝た。
  ………………………………………
(ここで私は宿の妻君に改めて感謝しなければならない、まことによい宿であった、よい妻君であった、私はとうとう二十日近くも滞在してしまった(事情がそうさせたのであるが、宿がよくなかったならば、私はどこかへとびだしたであろう)。
四国巡拝中の遍路宿で、もっとも居心地のよい宿と思う(もっとも木賃料は四十銭で、他地方よりも十銭高いけれど、道後の宿一般がそうなのである、それでも一日三食たべて六十五銭乃至七十銭)。
夜の敷布上掛はいつも白々と洗濯してある、居間も便所も掃除が行き届いている、食事もよい、魚類、野菜、味噌汁、漬物、どれも料理が上手でたっぷりある、亭主は好人物にすぎないらしいが、妻君は口も八丁、手も八丁、なかなかの遣手だった。
(遍路はいつの時代も遍路宿が一番の気がかりと見えます。いまでも遍路同士の会話は宿の話ばかりです。もうすこし信仰の話があってもよいと思うのですが・・)
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