・十三佛は自己曼荼羅を導く究極の密教曼荼羅であること・・31
第七章
第十三節、虚空蔵菩薩。この虚空蔵菩薩は、虚空の一切森羅万象を含蔵するがごとく、その徳の広大無辺なるを顕す。宇宙観であればこそ唯一絶対の妙実在であると云いうるので十三佛曼荼羅の主尊と為しうる。このとこを明瞭に言っているのは密教最極秘の瑜祇経の金剛薩埵吉祥品で、その中に青黄赤白黒の五色の五大虚空蔵を説いてある。この五大虚空蔵は宇宙を人格と見たる大日如来の五智の作用で全く大日如来を現実化したものである。虚空蔵菩薩は右手に智慧の利剣を持ち、左手には如意宝珠を載せて御座る。これ仏教でいう福智の二門である。福徳とは現実で、智慧とは理想である。しからば虚空蔵菩薩は理想と現実とを調和してこれを具体化したる象徴である。この右手の徳を開いたのが壇・戒・忍・進・禅の五波羅蜜で、左手の福徳の宝珠の徳を開いたのが般若・方便・誓願・力用・智慧の五波羅蜜である。故に虚空蔵菩薩はこの十波羅蜜を眷属としてござる。(先に述べたように胎蔵曼荼羅の虚空蔵院には虚空蔵菩薩の周囲にこの十波羅蜜菩薩が配置されてある)。十三佛の主尊たるはこの現実と理想とを調和して具体化したる点に存するので宇宙を人格化したる大日如来を通じてこの菩薩を見てはじめて虚空蔵菩薩の広大無辺の新生命は活動する。