第五一課 人間万歳
人間万歳
人間万歳
人間よ、泣きたくば泣け
人間よ、笑いたくば笑うも宜い
怒りたくば、怒っても宜い
迷うもなやむも好き勝手だ
人間よ、あなたの持つ七情を生かせ
人間よ、怒って、泣いて、笑って、迷って
まだまだあなたの心をみんな生かせ
憎みも愛も嫌いも好きもみんな生かせ
人間よ、生悟りは御免だ
人間よ、白ちゃけた行い澄した顔はおやめ
泣くより怒るより迷うより
ずっとみっともない、始末が悪い
だが、すこしお待ちよ人間
何もかもあなたの本来
性そのものを生かすが自然
だが、すこしお待ちよ人間
ここに一つの条件がある
怒るに怒るところを得よ
笑うも笑うところがある
泣くもなやむも程度がある
節度を知れ、場所を知れ
仏智の裁きでそれを知れ
仏智は各自の人間が持つ
仏を念じてそれを取り出せ
仏と人間が一つになる
いのれば人間が仏になる
仏になれる人間のまま
必ず仏になれる人間
仏になった人間が
「謡うたうも舞うも法のりの声」
怒るところに怒り得て
笑うところに笑い得る
嫌いも好きも程を知り
愛も憎みも当を得る
迷いなやみに傷つかず
それがそのまま悟りとなる
生きた悟り
性本来を少しも殺さず
活溌溌地の人間生命
精いっぱいに生き切る生命
そこで万歳
人間万歳
それこそ万歳
人間万歳
(これは「白隠禅師坐禅和讃」をかの子なりに解釈したものかもしれません。
「白隠禅師坐禅和讃」です。
「衆生本来、仏なり 水と氷のごとくにて 水をはなれて氷なく 衆生の外に仏なし
衆生近きを知らずして 遠く求むるはかなさよ たとえば水の中に居て 渇を叫ぶがごとくなり
長者の家の子となりて 貧里に迷うに異ならず 六趣輪廻の因縁は 己が愚痴の闇路なり
闇路に闇路を踏そえて いつか生死を離るべき
それ摩訶衍(まかえん)の禅定は 称歎するに余りあり 布施や持戒の諸波羅蜜 念仏懺悔修行等
其の品多き諸善行 皆この中に帰するなり
一座の功をなす人も 積みし無量の罪ほろぶ 悪趣いずくに有ぬべき 浄土即ち遠からず
辱なくも此の法を 一たび耳にふるる時 讃歎随喜する人は 福を得ること限りなし
いわんや自ら回向して 直に自性を証すれば 自性即ち無性にて すでに戯論を離れたり
因果一如の門ひらけ 無二無三の道直し 無相の相を相として 行くも帰るも余所ならず
無念の念を念として 謡うも舞うも法の声 三昧無礙の空ひろく 四智円明の月さえん
此の時何をか求むべき 寂滅現前するゆえに 当所即ち蓮華国 此の身即ち仏なり」