道に聽て途に説は徳の棄(すたれる)なりじゃ。知らずして妄に評判するは。皆碌々たる小人の好むところじゃ。他の嘲りはさもあらばあれ。佛法の中にも其人は希なじゃ。其人なきに就て眞正法も次第に衰ふる。近世に至て諸宗分派して。鋒(ほこさき)を唇舌に争ふ。みな家々の私事にて。正法の規則は地を掃て無というも可なりじゃ。有佛無佛性相常爾の十善も。無戒、破戒の者の手に隠没するじゃ。十善が隠没するに就て。人情に随順して名を求め利に走る。名利に走るに就いては正しきことを嫉む。闇夜に裸者の燈燭を憎むが如じゃ。我相を逞しくし善事をつとめねは今時諸宗の通弊となりきたる。書籍を讀む者。識別有る者の類は信ぜぬようになる尤なことじゃ。
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