福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

十善戒和讃略解(慈雲尊者・釋雲照)、17

2020-02-17 | 十善戒

足ることを知る人の身は 地上に臥すも 浄土なり 己をせめて施せよ 多欲は餓鬼の主因なり 」 
これより意業について説く。一切万善の中で意業がもっとも大切であり、、一切万悪のなかで意業がもっとも恐るべきものである。なぜなら善悪の諸行は皆心より出るものであるから。心が真理に順って善い赴くときは身口意も善とならざるはなく、心が悪に向かうときは身口意も悪を行じる。身に殺盗淫を行じ、口に妄語・綺語・悪口・両舌するもただこれ一心の迷いより犯すものである。もし心が貪瞋痴を離れるときは、一切の悪はおのずから止み、一切の善は期せずして自ら備わることとなる。

以下、不貪欲の功徳を略解する。三界の慈父大聖世尊、末世の我らがために違勅をたれてのたまはく「汝等比丘、若し諸の苦悩を脱せんと欲せば、当に知足を観ずべし。知足の法は則ち是、富楽安穏の処なり。足ることを知る人、地上に臥すと雖も、猶お安楽とす。足ることを知らざる者は、天堂に処すと雖も、また意に称わず。(・・足ることを知らざる者は、富めりと雖も而も貧し。足ることを知る人、貧しと雖も而も富めり。足ることを知らざる者は、常に五欲の為に牽かれて、足ることを知る者の憐愍する所と為る。是を知足と名づく。)(佛遺教経)」孔子は蔬食を食ひ、水を飲み、肱をまげて枕とす、楽その中にありと陳せられたるもこの不貪欲戒(不慳貪戒)の真相を自得せられたるなり。(『論語』述而に「子曰く、『蔬食(そし)を飯ひ水を飲み、肱(ひじ)を曲げて之を枕とするも、楽しみも亦其の中に在り。不義にして富み且(か)つ貴きは、我に於いて浮雲の如し』と」とあります)・・世に貧困故に施善を作すことあたわざるものと思へる者あり、是れ大いなる迷見なり。優婆塞戒経に「たとえ貧賤なりともひとつまみの麦・米粒を施す能わざるもあるべからず。この少しの物でも蟻子・細虫に施せば彼飽満する」と説きたまへり。
富貴なるものは過去に於いて不慳貪戒を護持せし功徳の発現し来るものなるを知って、ますます喜び勇みて広く困窮者を救済しいよいよ不慳貪戒を遵奉して未来生々の福報の妙因を植えるべし。今日の富貴はけっして己の自然に富貴なるにあらず。必ず前世の父母師兄善友の教えにより一切衆生の恩頼によらざるはなし。現在の境遇は決して自然に来たれるものにあらず、また他の造物主の作すところにあらざるを信じて、因果の真理を忘るることなく足ることを知りていたずらに苦慮することなかれ。・・貪欲のものは一期命尽ののちは必ず餓鬼道に落ちる。
・・この不慳貪戒に随順するものは一麻一米も吾身を保つに足る。見聞覚知の境遇、一として小欲知足不慳貪戒ならざるはなく、当来必ず天に生じ衣服自然にして常に意の如くならざるなし。・・




十善戒和讃全文「 帰命頂礼 十善戒、 十方三世の諸如来の三十二種の妙相もこの浄戒を種因とす。戒定智慧も三密も三十七の道品も身三口四と意三より 皆生じたる功徳なり。世間諸善の根本にて人の人たる道なれば、出家在家も持つ(たもつ)べく老若長幼奉ずべし 。龍樹菩薩の教誡に 仏果を期して戒なきは、渡りに船のなき如く 到るを得じと、のたまえり。昔、比丘あり、行く道に渇きに迫り水を得て、蟲の命をあわれみて 死して道果を得たりけり。また八才の少沙弥の、水の流れて蟻穴に入るを救いし功徳にて 夭死転じて長寿せり。また、毘舎伽母の指の輪の 落ちて入江に沈みしも、元の指端に還りたるためしは実にいなまれず。影勝王の像の子の産に臨みて悩みしを牧牛の女の操もて、誓いて分娩せしめたり。斑足王の猛悪も 実語のとくに感悟して、九十九余の命をも放ちて道に入りにけり、言辞弁舌明瞭に生まれし種(もと)は不綺語なり。時候和順に資産富み 草木さえ皆色ぞ増す。人天中に香はしきものは善語に過ぐるなし。妻子眷属和悦して上下人心、皆服す。主従和睦違わぬは 不両舌語の功徳なり。親好厚く和敬せば これぞ菩薩の心なる。足ることを知る人の身は 地上に臥すも浄土なり。 己をせめて施せよ、多欲は餓鬼の種因なり。世を乱し、身を滅ぼすは皆一朝のいかりなり。一切男女は過去の父母、とか一子の慈悲を運ぶべし。八正の道広けれど 邪見の人ぞ踏み迷う。己が顔貌智慧技量 皆善悪の影ぞかし。神も聖もみ仏も みなこの道に由りたもう。これぞ真実の道なれば この道撥無するなかれ。妻子珍宝及王位 死出の旅路の共ならず。唯この戒の功徳のみ 身に添う三世の友ぞかし。百歩の間持(たも)つすら 仏になるとのたまえば、萬行中の易行なり 唯 ひたすらに守るべし]
 

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