光明真言和讃
興正菩薩撰
おんあぼきゃべいろしゃのまかぼだらまにはんどまじんばらはらばりたやうん
不空羂索灌頂 光明真言願はくは 長夜の闇を照らしつつ
恵日の影を見せ玉へ 八万十二の正法は 病にしたがふ薬にて
何れの救療あだならず 随宜の引摂たへなれど 自業自得のことわりを
忘れぬ教門なりければ 戒行欠けたる我等には 其益なきが如くなり
無福劣恵の身となりて 五濁のこの世に生をうけ今この神呪に値遇せずば
なにおか解脱の因とせん 法性同体大悲力 縁起難思の秘術にて
他作の善根隔てなく 自授の益をぞ與ふなる 法身遮那の真実語
阿弥陀如来の心中呪 萬億無数の諸佛の母 四摂菩薩の三摩地門
諸仏の秘蔵ことごとく 摂めて説ける法なれば 萬億無量の法門を
誦する功徳に異ならず 一たびこれを聞く人は 四重五逆も消滅し
しばしばこれを誦持すれば 往生浄刹疑はず 土砂を加持して尸陀林の
尸骸の上に散ずれば 朽骨光を放ちつつ 受苦の依身に及ばしむ
作業受果さだまりて 地獄鬼畜の身となれど 光明自然に照触し
衆罪すなわち消滅す 時に弥陀仏来迎し 死者のために手を授け
自ら荷負し玉ひてぞ 極楽浄土に引導す 無縁呪砂の力だに
直に菩提の因となる いはんや拙き身なれども 受持読誦の功をつむ
或は一日七日夜 或は長時尽形寿 人をもすすめ我も誦す
自他の善根際もなし 教王釈迦の因位にも 此の呪を常に受持しつつ
光明自然に生じてぞ 成等正覚したまひき 阿弥陀如来の光明は
諸佛の光に超越し 摂取不捨の妙なるも 是も此呪の徳ぞかし
光は佛の智恵なれば 無始の迷闇よく破り 無明すなはち明となる
智恵ぞまことの光なる 凡そ光明めぐまずば 我等がたぐひいかがせん
西も東もわけかねて 只常闇にぞ迷はまし 日月灯燭をりにふれ
衆務をなせる光まで 世間法性無二なれば 皆是れ神呪の利益なり
つらつらおもえば頼もしや 賢くこの会に遇ひにけり 此のたび空しく過ごしては
いつか生死の際ならん 一結慇懃一信じん 七日七夜不退修
善根虚空に周遍して 佛智も籌量(ちゅうりょう)したまはじ 今この功徳にこたえつつ
先人浄土に生まれなば 聖衆と共に来迎し 還て我等を導かん
おくれ先立つしばらくの 夢の迷途はありとても 我も人も諸共に
ひとつ蓮の佛なり ただ願はくは遍照尊 不空羂索観音等
各本誓あやまらず 衆会の望をみてたまへ 願得無垢眼
常見光明身 願共諸衆生 同入阿字門 (この和讃は西大寺興正菩薩の御撰なり。今敬み刻して以って四方に施す。天保九祀戊戌仲秋 明石密蔵院兼嵯峨御所西輪院
苾蒭密厳誌
興正菩薩撰
おんあぼきゃべいろしゃのまかぼだらまにはんどまじんばらはらばりたやうん
不空羂索灌頂 光明真言願はくは 長夜の闇を照らしつつ
恵日の影を見せ玉へ 八万十二の正法は 病にしたがふ薬にて
何れの救療あだならず 随宜の引摂たへなれど 自業自得のことわりを
忘れぬ教門なりければ 戒行欠けたる我等には 其益なきが如くなり
無福劣恵の身となりて 五濁のこの世に生をうけ今この神呪に値遇せずば
なにおか解脱の因とせん 法性同体大悲力 縁起難思の秘術にて
他作の善根隔てなく 自授の益をぞ與ふなる 法身遮那の真実語
阿弥陀如来の心中呪 萬億無数の諸佛の母 四摂菩薩の三摩地門
諸仏の秘蔵ことごとく 摂めて説ける法なれば 萬億無量の法門を
誦する功徳に異ならず 一たびこれを聞く人は 四重五逆も消滅し
しばしばこれを誦持すれば 往生浄刹疑はず 土砂を加持して尸陀林の
尸骸の上に散ずれば 朽骨光を放ちつつ 受苦の依身に及ばしむ
作業受果さだまりて 地獄鬼畜の身となれど 光明自然に照触し
衆罪すなわち消滅す 時に弥陀仏来迎し 死者のために手を授け
自ら荷負し玉ひてぞ 極楽浄土に引導す 無縁呪砂の力だに
直に菩提の因となる いはんや拙き身なれども 受持読誦の功をつむ
或は一日七日夜 或は長時尽形寿 人をもすすめ我も誦す
自他の善根際もなし 教王釈迦の因位にも 此の呪を常に受持しつつ
光明自然に生じてぞ 成等正覚したまひき 阿弥陀如来の光明は
諸佛の光に超越し 摂取不捨の妙なるも 是も此呪の徳ぞかし
光は佛の智恵なれば 無始の迷闇よく破り 無明すなはち明となる
智恵ぞまことの光なる 凡そ光明めぐまずば 我等がたぐひいかがせん
西も東もわけかねて 只常闇にぞ迷はまし 日月灯燭をりにふれ
衆務をなせる光まで 世間法性無二なれば 皆是れ神呪の利益なり
つらつらおもえば頼もしや 賢くこの会に遇ひにけり 此のたび空しく過ごしては
いつか生死の際ならん 一結慇懃一信じん 七日七夜不退修
善根虚空に周遍して 佛智も籌量(ちゅうりょう)したまはじ 今この功徳にこたえつつ
先人浄土に生まれなば 聖衆と共に来迎し 還て我等を導かん
おくれ先立つしばらくの 夢の迷途はありとても 我も人も諸共に
ひとつ蓮の佛なり ただ願はくは遍照尊 不空羂索観音等
各本誓あやまらず 衆会の望をみてたまへ 願得無垢眼
常見光明身 願共諸衆生 同入阿字門 (この和讃は西大寺興正菩薩の御撰なり。今敬み刻して以って四方に施す。天保九祀戊戌仲秋 明石密蔵院兼嵯峨御所西輪院
苾蒭密厳誌