大智度論釋初品中尸羅波羅蜜義第二十一
卷(尸羅波羅蜜)・・4
云何が名けて破戒の人の罪となすや。破戒之人は人の不敬の所にして其家は塚の如く人の到らざる所なり。破戒之人は諸功徳を失す。譬ば枯樹の如く人愛樂せず。破戒之人は霜蓮花のごとく人喜見せず。破戒之人の惡心畏るべきこと譬ば羅刹のごとし。破戒之人は人歸向せざること譬ば渇人の枯井に向はざるがごとし。
破戒之人は心常に疑悔すること譬ば犯事之人の常に罪の至らんことを畏るるがごとし。破戒之人は田の被雹して依仰すべからざるが如し。破戒之人は譬ば苦苽の形は甘種に似たりと雖も不可食なるがごとし。破
戒之人は賊の聚落に依止すべからざるが如し。破戒之人は譬ば大病人の近くことを欲せざるが如し。破戒之人は苦を免るることをえず、譬ば惡道の過ぐること得難きがごとし。破戒之人は共止すべからざること譬ば
惡賊の親近すべからざるがごとし。破戒之人は譬ば火坑のごとく行く者は之を避く。破戒之人は共住すべからざるとこ譬ば毒蛇のごとし。破戒之人は近觸すべからざること譬ば大火の如し。破戒之人は譬ば破船のごとく乘渡すべからず。破戒之人は譬ば吐食のごとく更に噉ふべからず。破戒之人は好衆中にありて譬ば惡馬の善馬群にあるがごとし。破戒之人は善人と異ること驢の牛群にあるがごとし。破戒之人は精進衆にあれば譬ば儜兒(ねいこ・虚弱児)の健人中にあるがごとし。破戒之人は比丘に似ると雖も譬ば死屍の眠人中にあるがごとし。破戒之人は譬ば僞珠の眞珠中にあるがごとし。破戒之人は譬ば伊蘭(悪臭有毒の木)の栴檀林中にあるがごとし。破戒之人は形善人に似たりと雖も内に善法なく、復た剃頭染衣して次第に籌ちゅうを捉ひき名を比丘となすとも實には比丘にあらず。破戒之人は若し法衣を著すといえども則ち是れ熱銅鐵鍱以って其身を纒ふ。若し鉢盂を持するは則ち是れ洋銅器に盛るがごとし。若し噉食するところは則ち是れ燒鐵丸を呑み熱洋銅を飲むがごとし。若し人の供養供給を受ければ則ち是れ地獄獄鬼のこれを守るがごとし。
若し精舍に入れば則ち是れ大地獄に入るが如し。若し衆僧の床榻に坐すれば是れ熱鐵床上に坐すとなすがごとし。復た次に破戒の人は、常に怖懅(ふこ)を懷くこと重病人の常に死にいたるを畏るるがごとし。亦た五逆罪人の心常に自ら我は佛賊たり、藏覆・避隈すと念ふがごとし。賊の人を畏れて歳月日過ぐれども常に安隱ならざるがごとし。破戒之人は供養利樂を得るといえども是の樂は不淨なり。譬ば愚人の死屍を供養莊嚴するがごとし。智者は之を聞て惡みて見ることを欲せず。如是に種種無量なり。破戒之
罪は不可稱説なり。行者應當に一心に持戒すべし。
卷(尸羅波羅蜜)・・4
云何が名けて破戒の人の罪となすや。破戒之人は人の不敬の所にして其家は塚の如く人の到らざる所なり。破戒之人は諸功徳を失す。譬ば枯樹の如く人愛樂せず。破戒之人は霜蓮花のごとく人喜見せず。破戒之人の惡心畏るべきこと譬ば羅刹のごとし。破戒之人は人歸向せざること譬ば渇人の枯井に向はざるがごとし。
破戒之人は心常に疑悔すること譬ば犯事之人の常に罪の至らんことを畏るるがごとし。破戒之人は田の被雹して依仰すべからざるが如し。破戒之人は譬ば苦苽の形は甘種に似たりと雖も不可食なるがごとし。破
戒之人は賊の聚落に依止すべからざるが如し。破戒之人は譬ば大病人の近くことを欲せざるが如し。破戒之人は苦を免るることをえず、譬ば惡道の過ぐること得難きがごとし。破戒之人は共止すべからざること譬ば
惡賊の親近すべからざるがごとし。破戒之人は譬ば火坑のごとく行く者は之を避く。破戒之人は共住すべからざるとこ譬ば毒蛇のごとし。破戒之人は近觸すべからざること譬ば大火の如し。破戒之人は譬ば破船のごとく乘渡すべからず。破戒之人は譬ば吐食のごとく更に噉ふべからず。破戒之人は好衆中にありて譬ば惡馬の善馬群にあるがごとし。破戒之人は善人と異ること驢の牛群にあるがごとし。破戒之人は精進衆にあれば譬ば儜兒(ねいこ・虚弱児)の健人中にあるがごとし。破戒之人は比丘に似ると雖も譬ば死屍の眠人中にあるがごとし。破戒之人は譬ば僞珠の眞珠中にあるがごとし。破戒之人は譬ば伊蘭(悪臭有毒の木)の栴檀林中にあるがごとし。破戒之人は形善人に似たりと雖も内に善法なく、復た剃頭染衣して次第に籌ちゅうを捉ひき名を比丘となすとも實には比丘にあらず。破戒之人は若し法衣を著すといえども則ち是れ熱銅鐵鍱以って其身を纒ふ。若し鉢盂を持するは則ち是れ洋銅器に盛るがごとし。若し噉食するところは則ち是れ燒鐵丸を呑み熱洋銅を飲むがごとし。若し人の供養供給を受ければ則ち是れ地獄獄鬼のこれを守るがごとし。
若し精舍に入れば則ち是れ大地獄に入るが如し。若し衆僧の床榻に坐すれば是れ熱鐵床上に坐すとなすがごとし。復た次に破戒の人は、常に怖懅(ふこ)を懷くこと重病人の常に死にいたるを畏るるがごとし。亦た五逆罪人の心常に自ら我は佛賊たり、藏覆・避隈すと念ふがごとし。賊の人を畏れて歳月日過ぐれども常に安隱ならざるがごとし。破戒之人は供養利樂を得るといえども是の樂は不淨なり。譬ば愚人の死屍を供養莊嚴するがごとし。智者は之を聞て惡みて見ることを欲せず。如是に種種無量なり。破戒之
罪は不可稱説なり。行者應當に一心に持戒すべし。