大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月21日 奈落

2013-03-21 23:20:41 | B,日々の恐怖






    日々の恐怖 3月21日 奈落








「 今までも一度も考えたことないんだけど・・・。」

Mさんは去年飛び降り自殺を図ったという。

「 もう面倒くさくて・・・・。」

当時Mさんは結婚をしていたが、それ以外に恋愛中の男が一人、セフレが一人いたという。

「 誰にもバレてなかったんだけど、気持ちがグチャグチャで、精算したかったのもかもしれないなぁ。」

目に付いた五階建てのRCマンションの屋上に出ていた。
パークマンション○○という名前だった。

「 寝起きみたいなふらふらした頭で動いてた、現実感なんかなくて。」

金網をよじ登り、柵の向こう側、一歩先には奈落の底。

「 死にたいなんて、それまで今までも一度も考えたことないんだけど・・・。」

とくに覚悟を決めるでもなく、倒れるように宙に身を投げた。
一瞬、内臓がひっくりかえるような浮遊感を味わった。
すぐに気を失った。
 一命はとりとめたが、下半身に後遺症は残った。
退院後は旦那がかいがいしく世話を焼いてくれ、絶望をゆっくりと溶かしてくれた。



 旦那の書斎から、催眠術の本が見つかったのは一年後だった。
挟まったレシートから、購入日は当時のセフレが祝ってくれたMさんの誕生日だった。
一緒に仕舞ってあった日記は開かなかったという。

「 けれど、彼を問い詰めたい気持ちは沸いてこないの・・。
それどころか、申し訳ない気持ちでいっぱいなの・・・。」

そして、別れ間際、Mさんは震えそうな小声で聞いてきた。
まるで締め付けてくる喉に抵抗しているような、か細い声だった。

「 あのさ・・・・・。
自分が今も催眠術にかかっているか判断できる方法って知らない?」

「 知らない。」と、私は答えた。
















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