大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 3月22日 音

2013-03-22 18:50:01 | B,日々の恐怖








     日々の恐怖 3月22日 音








 私の友人K君の同郷S君の体験談です。
S君は、

「 信じてくれるかどうかは、分からないですけど・・・。」

と前置きしてから話し出した。

 S君はラグビーが上手で、そちらの推薦枠で山梨県内の大学に入学し、日々練習に励んでいた。
そんな折、S君は練習中に足を骨折し、県内のK市にある病院に入院することとなってしまう。
 S君の病室は相部屋で通路の角にあり、後に暴走族だという若い男の子N君が、同じく足の骨折で入院してきた。
N君はバイク事故を起こして、ここにやってきたのだという。
 しばらくすると、N君はS君のことを先輩と呼ぶようになる。
2人は気性が似ていて気があった。
お陰で、入院生活はなかなか楽しいものとなった。
 そんな入院生活のなかでS君は、深夜に奇妙な音を聞くことがあった。
それは以下のような音であったという。
 
「 キーキーキー、シューシューシュー。」
 
別段、その音のことなど気にもならなかったS君は、昼間になるとすっかり音のことなど忘れてしまっていた。
 ある日、N君と会話をしていると、ふとした拍子に例の音の話題となり、N君も何度かその音を聞いたことがあることが判明した。
 しかし、二人ともその音の正体を知らない。
それで二人は、その音が一体何なのかを次に聞こえてきたときに確かめてみることに決めた。
 それから数日たった夜遅くS君が目を覚ますと、あの音が鳴っている。

「 キーキーキー、シューシューシュー。」

N君のベットを見ると、N君はすでにベット上に上半身起き上がった状態で構えていた。
 S君とN君は、目と目で合図を送り合った。
N君が通路の方を指差した。
音は通路から聞こえて来る。
 二人は病室から通路に出て、何処から聞こえて来るのか耳をそば立たせた。
どうやら、音はL字型の通路の角を曲がった向こうの通路からだ。
こちらからは覗き込まなければ見えない。
 しかし、二人ともビビッていたので覗き込むのは一寸怖い。
どうしようかと躊躇しているうち、音が徐々にこちらに近づいてきていることがわかった。
 二人でかたまって通路の角を凝視していると、車椅子に乗った老人がゆっくり現れたのだという。
老人はゲッソリと痩せており、鼻には酸素吸入のためのチューブが繋がっていた。
例の音は、このチューブによる呼吸音と、車椅子をこぐ度に発生する軋みからなるものだった。
 老人の姿に釘付けとなった二人は、恐怖で身動き出来なかった。
そんな二人の間を、老人は車椅子に乗ったまま進み込みS君の前で止まった。
S君の話によると、この時老人は、S君を何ともいえぬ恐ろしい表情で睨んだのだという。
 S君が恐怖のあまり動けずにいると、突然老人がその場から一瞬にして掻き消えた。
何が起こったのか呆然自失のS君に、N君が通路の窓の外を指差し何かを叫んだ。
見ると、今消えたばかりの老人が車椅子ごと空中に浮かんでいた。
そして、一瞬のうちに、それが掻き消えたのだという。
その後、退院するまで音は聞こえることは無かったそうだ。
 S君は自分の足を擦りながら言った。

「 でもね・・、直りが悪くってね・・・。」

二人の入院生活が予定より長引いたのは、それが原因かどうかは分からない。















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