日々の恐怖 10月17日 辞めた理由(4)
その頃からかな。
体重が妙に減り始めて、元々結構細身だったんだけどズボンもベルトもどんどんゆるくなっていって。
まあ、高い給料に調子に乗って外食したり、いろいろ買い込んで食べたり、むしろ太りそうな生活をしていたのにね。
更に言うと、仕事から帰ってきて部屋に入った時、すっごい違和感を感じるようになった。
週2、3回くらいかな、
「 あれ、俺のへやこんな雰囲気だっけ?」
「 物の配置とかはまったく、間違いなく俺の部屋なんだけど。」
「 あれ~?」
って言う、なんとも気持ち悪い感じ。
退社する2ヶ月くらい前から、実家からやったら電話が来るようになった。
「 ちょっと、家に戻ってきてくれない?」
「 長男なんだし。」
「 なんかもう不安でさぁ。」
なんてことを毎回毎回言ってくるんだ、これが。
ほんと急に言い出すようになった。
これは、会社が何か手をまわしていたのかな?
元々痩せてたのに更に激痩せしてきてた俺も体調が不安になってきてて、上司になんとなく退社するかも、みたいに匂わせてみた。
「 そうかぁ、そうだな・・・。」
みたいな反応で引き止められる風もなかった。
結局、退社願いを出して、妙にすんなり通って、まあ規則で退社1ヶ月前に提出だったから、そこから1ヶ月、ほんとに気持ち悪かった。
物陰とか、何かの隙間とかから、ふいに視線みたいなのを感じる気がして、
“ え?何かいた?”
みたいな毎日だった。
先輩からは、
「 何最近キョロキョロしてんの?」
みたいに突っ込まれた。
危ないヤツと思われてたんだろうな。
それで退社日を迎えて、送別会なんてやってもらって、荷物はほぼ全部実家に送ってあったから、呼び出していた弟の車に乗って即実家戻りした。
そのとき、会社の前を車が通過して、弟が、
「 何か、今のところ気持ち悪かったな。」
って言葉が、俺にとって一番気持ち悪かった。
俺がいた会社が、そこだとは弟は知らないんだが。
とりあえずは、以上。
その後、実家に戻ってからは、瞬時に元気になった。
それで、次は住んでいる県の同業の会社に就職した。
給料は安くなったけど、今の会社では普通に元気でやっている。
しかし、もう前の会社の、あの一帯には近づきたくないでござる。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ