日々の恐怖 4月11日 再会(2)
それから二年の月日がたったある日、俺はバイト先の古本屋で奴に再会した。
うだつのあがらない退屈な日々を過ごしていた俺は、時々奴のことを思い出していたのだが、
その再会は思いも寄らぬ事だった。
奴は深夜閉店間際に現れた。
一目でその異様さに気が付いたが、それが奴だと分からなかった。
つるつる頭に銀縁めがね、白髪まじりの無精ひげ。
がりがりに痩せこけていた。
「 すいません、もう閉店なんすけど。」
俺は立ち読みに耽る奴に声をかけた。
顔の肌はアトピーで荒れ、眉毛は無かった。
それでもかすかに面影があった。
「 もしかして○○?」
思わずそう訊ねると、奴はあらぬ方をきょろきょろ窺いながら、
後ずさりするみたいに店を出て行った。
ショックだった。
あれが本当にあいつなら、完全に気がふれていると思ったからだ。
その夜、複雑な気分のままバイトを終え、原付の置いてある駐車場に向かった。
シートからヘルメットを取り出そうとすると、不意に背後から声を掛けられた。
奴は自動販売機の影に潜んでいたらしい。
「 俺のこと分かるのか?」
突然のことで驚いたが、俺はすぐに気を取り直して答えた。
「 ○○だろ?」
「 本当にそう思うか?」
ああ、やっぱりこいつ頭がおかしくなってる。
「 中学からの付き合いだ。
忘れるわけないだろ。」
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