日々の恐怖 3月17日 風鈴(2)
見ていた祖父と爺様達は、遠巻きに、
「 お、ゆっくりな、ゆっくり。」
「 でぇじにあつかえ。」
等、わけがわからないです。
丁寧に外し、よく見ると緑色に錆びた風鈴のようなものでした。
「 爺ちゃん、これ・・・。」
と祖父に渡そうとしても受け取らない、触ろうとしない。
「 おっ、いいからお前がもってろ。」
ちょっと待って下さい、お祖父ちゃん。
他の爺様達も笑顔だが、誰も近づかない。
その後すぐに村へ帰ることになりました。
祖父の家へ戻ると祖母も同じ反応でした。
近づこうとしない。
でも、泣くほど不安になったわけではありませんでした。
村中の人が祖父の家へ集まってきました。
お爺ちゃんお婆ちゃんだらけの中、
「 それにはおめぇ以外触れねえんだ。」
「 良い事があるよ。」
「 わしは二度目かの。」
「 まえは誰だった?」
等、笑いながら話していました。
祖父が、
「 それはお前のもんだ、綺麗にして大事にしなきゃな。」
と、小さな箱をくれました。
とりあえず箱へしまい、やっと重たいものから逃れられたような気がしました。
箱は仏壇へ納められ、私が帰る日までそのままでした。
帰る日まで村中の人から風鈴の経緯を聞かされていましたが、よいものである以外内容がまちまちなため、結局分からず終いでいます。
今年も風鈴をつるしてはいますが、残念ながら音が鳴らないです。
ただ、あの時のお爺ちゃんお婆ちゃん達の笑顔は子供のようでした。
もう何年も経ちましたが、今も何が起きるのかワクワクして眺めています。
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