日々の恐怖 1月21日 足(1)
大学時代、一つ上の先輩(女性)から聞いた話です。
小学4年生の夏頃、学校から帰るときいつもある脇道からでてくる中年の男性がいた。
しかも常に彼女がその脇道を通りかかる時に出てきてぼんやりと立っていたという。
幼心ながら不気味に思っていた先輩はそのことを母親に相談した所、しばらく車で送り迎えをすることになった。
1ヶ月ほど車で送り迎えを行った後、もうそろそろいいだろうと言いことになり再び徒歩での登下校になった。
そして実際、それからしばらくは何も無かった。
しかし、その男は再び現れた。
彼女がいつものように帰り道を歩き例の脇道にさしかかったときだった。
ヌッと誰かが脇道から出てきた。
あの中年の男だった。
そしていつも黙って立っているだけだった男は、彼女の方をみてこう言った。
「 足が欲しい。」
気がつくと彼女は自宅の前にいた。
しかも、その間の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっていた。
それ以降、その男には一度もあっていないという。
「 そういえば、そのおっさん、腰から下がどんな風だったか、全然思い出せない。」
先輩は話の最後にそう語った。
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