日々の恐怖 1月14日 輸入雑貨(3)
しかし、俺の主張に彼女は難色を示した。
「 あれが原因とは限らないじゃん。
違ってたらもったいないもん。」
どうしても捨てるのは嫌だと言う彼女と折衝を重ねた結果、とりあえず何日か俺が預かってみることで話が付いた。
俺はネックレスを持ち帰り、彼女がしていたようにベッドの脇に置いて眠ってみたが、特に悪夢は見なかった。
だが、彼女の方は効果覿面だった。
ネックレスを手元に置かなくなってから、悪夢を見る事がなくなったのだ。
明らかな変化に、今度は彼女の方から処分を頼んできた。
彼女は俺が鈍感だから影響を受けないのだと茶化したが、
「 だからって普通に捨てたりしないで、ちゃんとした人にやってもらってね。」
と俺の身を案じてくれた。
俺は彼女の言葉に従い、神社で禰宜をやっている知人に処分をお願いした。
そのネックレスを見るなり、知人は、
「 あ~、多分、これ遺品。」
と言った。
詳しく話せと言われて経緯を話すと、
「 なるほどね。」
と頷かれた。
「 前に似たようなの預かった事があって調べたんだけど、アフリカとかの貧困地域だと死者の遺品は遺族の大事な収入源なんだよ。」
宗教観もあるのだろうが、手元に置いて故人の思い出に浸る事よりも、明日ご飯を食べる事の方がよほど大事なのだろう。
そんなわけで、遺品を安く買い取って物価の高い国に持ち込んで売ってるような露店ってのは結構あるそうだ。
最近だとネットオークションにも多いらしい。
一応、
「 俺が影響を受けないのは、鈍感だからですか・・・?」
と聞いたら、
「 それもあるかもしんないけど・・・・。」
と大笑いされた。
「 まぁ多分、女性の方が影響受けやすいんじゃないかなぁ。
何かが憑いてるというより”念が残ってる”って感じなんだけど、そういうのは女性の方が感じやすいし。
それに、これは女性の持ち物だっただろうから、同性の方が思いを共有しやすいのかもね。」
モノが手元を離れれば問題ないとのことだったので、ネックレスだけ供養してもらうことになった。
かくしてアフリカの遺品ネックレスは、遥か極東の神社でお焚き上げ供養を受け、天へと還った。
輸入雑貨が持て囃される昨今だが、出処のはっきりしない物を買うということのリスクを痛感した出来事だった。
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