大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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なんじゃもんじゃ物語1-2 もんじゃ王国にて

2006-06-29 10:08:41 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語1-2 もんじゃ王国にて


なんじゃもんじゃ物語 5

(もんじゃ王国)
 
 「 もんじゃ王国、国旗掲揚~。」

 真っ白な旗がするするとポールに揚がりました。
もんじゃ王は、近くに居る召使に言いました。

「 おい、おまえ、何時見ても真っ白なすばらしい国旗じゃのう。
 なんじゃ王国の薄汚れた、ボロ赤国旗とは、えらい違いじゃなぁ。」
「 ははー、王様、いい洗剤を使ってますから。」
「 そうじゃろ、そうじゃろ。
 わが国の開発した洗剤を使っているからのう。
 わが国の科学技術庁長官は、知能指数180じゃからのう。
 この前も蚊取り線香を作ると言って、すばらしい胃の薬を発明したからのう。」

 もんじゃ王国の王様の名前は、正式には、どんな・もんじゃ王と言う名前でした。
言い伝えによると、この島にまだ名前がついていなかった頃、北の方から白い旗を立てたいかだに乗ってやってきた一人の神様がおりました。
そのころ、まだ、この島の島民は、自分たちで火をおこすことができませんでした。
海岸から上がってきた神様は、木と木をこすり合わせて火をつける方法を島民に教えました。
炎がついたとき、神様は言いました。

「 どんな、もんじゃ。」

その最初の言葉が、あまりに感動的だったので、島の人たちは、神様をどんな・もんじゃ様と呼びました。
そして、島民は島の守り神になっていただくように、神様にお願いしました。
承諾した神様は、この島で妻をめとり代々王として、島を統治するようになったということです。
それと同時に、島の名前は、もんじゃ島となりました。
 もっとも、なんじゃ王国にも同じような伝説が残っています。
なんじゃ王国にやってきた神様は、赤い旗を立てたいかだに乗ってやってきました。
木と木をこすっても、なかなか火がつかなかったので言いました。

「 なんじゃ、こりゃ~。」

あとは、まったく同じです。



なんじゃもんじゃ物語 6

「 大臣、チカーメ大臣はおらんのか。
 あいつ、また寝ておるな。
 王より遅く起きるとは、けしからん。
 早く、呼んで来い。」

もんじゃ王は、近くに控えている召使に言いつけました。
直ぐに、大臣がやってきました。

「 まだ、11時だと言うのに起こされては、困りますわ。」

もんじゃ王国のチカーメ大臣は、女性だったのです。
大臣は、渦を巻いたメガネをかけ、表紙だけ汚れた辞書を片手に、長いスカートにがに股の足を隠して王室に現れました。
このチカーメ大臣は、この3つの島の真ん中の島であるホンジャ島に建てられた、ホンジャ大学出身と言われていました。
 ホンジャ大学は、なんじゃ王国ともんじゃ王国の中立地帯のホンジャ島にある学校で、ふたつの王室が昔仲の良かった頃、資金を折半してできた3島唯一の学校でした。
創立当時は非常に難しく、入学試験を受けたもの全てが不合格で、入学者が一人もいませんでした。
しかし、もんじゃ王のおじいさまにあたるもんじゃ大王様が18歳の桜が咲く頃に、決断をされました。

「 わしは、ホンジャ大学に絶対入るぞう。
 入りたいぞう。
 わしが、入れなかったらこんな大学つぶしちゃうぞう。」

この話を聞いてホンジャ大学の、ただ一人の教授であるワールシュタットヒンデンブルグノーベル教授、略して教授が、頭を痛めました。
この大学の危機を如何に乗り越えるか。
3日間昼も夜も寝ず、ワレビッチの同型定理を使って考えました。
そして、3日目の朝、頭を使いすぎ、ろくに食事を摂っていず、頬は痩せこけ、目は落ち窪んでいましたが、気分はうれしさにあふれていました。
大王様は、入試の前の日、教授にそっと耳打ちされました。

「 あの~、僕、入れるでしょうか?」

教授は、何も答えずにっこりされました。
そして、合格発表の日、合格者掲示板を見た受験生は小躍りして喜んだのでした。
全員合格。
大王様も合格していました。
なにしろこの大学ができて以来180年間一人の合格者もいなかったのに、この年には一挙に25人の合格者が出たのです。
中には、もう72回目の受験で合格した受験生は、目から鼻から口から涙をぼろぼろ流して感涙にむせんでおりました。
大王様は、掲示板を見ながら感慨深げにつぶやきました。

「あ~、難しかった。」

でも、テストの問題と言うのは、

第一問
自分の名前を書きなさい。
第二問
なんじゃ島ともんじゃ島にある王国の名前を、それぞれ書きなさい。
第三問
ロンドンについて知っていることを書きなさい。

と言うものでした。



なんじゃもんじゃ物語 7

 大王様は、第一問、第二問は即座にお書きになりました。
しかし、第三問については、何かおかしいと考えられました。

「 何、ロンドンについて書け、とな。
 ロンドンならばイギリスの首都だろう。
 まてよ、我もんじゃ国が維持費を半分も出しているホンジャ大学だ。
 何か裏があるに違いない。
 もっと難しいに違いない。
 そうだ、絶対そうだ。」

そこで、全知識を総動員してお考えになりました。

「 わかった、わかったぞ。」

大王様は、うれしくなって教壇に座っている教授の方を見て、ニタッと笑いました。
教授も安心して、ニタッと笑い返しました。
「 そうだ、あれは確か日本とか言う国の・・・。
 大阪だ。
 大阪の天王寺にロンドンと言う喫茶店があったと言うことを島に流れ着いた男から聞いたことがあるぞ。
 きっとそうだ、ムフフフフ。」

そこで、大王様は、大阪の天王寺の喫茶店の名前とお書きになったのです。
答案を見た教授は、頭を抱え、結局2問以上正解の者を全員合格にしたのです。
そして、それ以来、大学合格者が山ほど出るようになりました。
 今のもんじゃ王も、28年前、同じような苦労を経た後大学に合格しました。
この時、アルバイトで大学の教室掃除をしていたのが、チカーメ大臣なのです。
しかし、もんじゃ王は、同じ学生と勘違いし、学校にただ一人の女学生として
尊敬していました。
 四年経って卒業式の日、このチカーメ大臣は名前を呼ばれもしないのに勝手に卒業証書をとりに壇上へ行き、まんまと卒業証書を手に入れました。
名前をホワイトで消してチカーメと書いて一丁出来上がりです。
その時、一人の男の学生と教授が卒業証書が足りないと言って式場をウロウロしていたことを王様は覚えていましたが、何故そうなったかは、もとより知りませんでした。
そして、その次の日、もんじゃ王は、チカーメを大臣に抜擢したのでした



なんじゃもんじゃ物語 8

 もんじゃ王が、困った顔で言いました。

「 おい、チカーメ大臣。
 困りますわ、では困りますでありまするぞ。
 だいだい、お・・・・。」

その言葉が、終わるか終わらないうちに、一人の漁師が王室に飛び込んできました。
この城は、王と后と王女と大臣と日帰りの召使が2人いるだけでしたから、誰でもお城に入れるのです。
漁師は、目を白黒させてあわてて言いました。

「 た、大変です。」
「 どうしたんじゃ。」
「 なんじゃ王国で、ホイ大臣が戦争再開だと叫んでいたという情報が入りました。」
「 おお、七年ぶりじゃのう。
 どうせまた、声だけじゃろうて。
 久しぶりに、我軍勢を出してみるか。」

もんじゃ王は、軍勢を呼ぶために天井からぶら下がった紐を思いっきり引っ張りました。
プツッという音をたてて紐は切れましたが、呼び鈴はけたたましくなりました。
五分と経たないうちに、漁師の格好の男が5人王室に集まりました。
5人の男は、順に喋りました。

「 ハハー。」
「 王様。」
「 何か。」
「 用で。」
「 ござい。」

もんじゃ王は、怒りました。

「 わしは、王様だぞう。
 王様に向かって、ございとは何事だ!!」

5人は、また順に喋りました。

「 ハハー。」
「 それは。」
「 最後の。」
「 ますか、と言う男。」
「 が、風邪で寝込ん。」

そこまで言って、5人はじゃんけんをしました。
そして、じゃんけんに勝った第一の男が言いました。

「 でいるのです。」


なんじゃもんじゃ物語9

 キョトンとしているもんじゃ王に、チカーメ大臣が言いました。

「 王様、王宮の経済は困窮しております。
 少しでも節約するため、優秀そうな男を6人だけ選んで、あとはみんなクビにしました。
 そして、私は6人の男に、これからは6人が一心同体であると言いました。
 だから、どんな仕事をするにしても、みんなで分担しなければならないと強く申し渡しておきました。
 故に、今、王様に申し上げた言葉も、みんなで分担して言ったのでございます。
 ただ、6人目の男が悪性のインフルエンザにかかりまして、今日は参上しておりません。
 だから、言葉尻が抜けて”ござい”になったのでございます。
 第6の男がいると、ちゃんと”ございます”になるのです。
 どうか、ご了承ください。」

もんじゃ王は眼を細めて、満足して言いました。

「 世は、満足じゃ。
 チカーメ大臣ご苦労であった。」

 いつも、王宮の経済は、困窮しておりました。
クビにした男たちの給料は、みんなチカーメ大臣の給料に加算されておりました。
その上、王室の金庫から、常に持っている辞書に、お金をはさんで持って帰って使っていたのです。
それに、この6人の男たちは、大臣直属の部下でした。
もんじゃ王は、もとよりチカーメ大臣を信頼していたので、疑う気持ちはさらさらありません。

「 チカーメ大臣、指揮をそちに任す。」
「 ありがとうございます、王様。
 必ず、ご期待に沿うように努力いたします。
 それでは、作戦をたてますので、これにて失礼いたします。
 皆の者、ついておいで!!」
「 はい。」
「 わかり。」
「 ました。」
「 チカーメ。」
「 大臣。」

そこで、再びじゃんけんをしました。
勝ち残った、第三の男が言いました。

「 様。」

なんじゃ王は、にっこりしました。

「 あっぱれ、あっぱれ。
 これからも職務に励めよ。」

五人の男たちは、そろって礼をしました。
そして、チカーメ大臣の後ろについて、王室を出て行きました。




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