日々の恐怖 7月18日 実家を継ぐ(2)
しかし、少しやんちゃな子供なら逆に興味を掻き立てられるような話だ。
成長すれば、大人への反発から敢えて蔵に入ろうとするかもしれない。
友人の祖父の発言はそれを煽っているようにも思えたが、友人やその親戚の子供たちは言いつけを守り、蔵に近づくことはなかったという。
「 あそこには、本当にナニかいるからな。」
「 入ったこともないくせに、なんでわかるんだ?」
私が少々の物足りなさを込めて言うと、友人はしばし逡巡するように眉を寄せた後、口を開いた。
「 人聞きのいい話じゃないが、実家はよく泥棒に入られるんだ。
田舎だからセキュリティなんてあってないようなもんだし、どこの誰かは知らんが、小さい蔵には値打ちものがどっさりある、なんて噂を流すバカがいて、それを信じるバカも多いんだ。
で、そいつらはいつも、例の蔵の前で翌朝発見される。
大抵、廃人状態でな。
病院で元に戻るヤツもいれば、一生戻らなかったヤツもいるそうだ。」
「 ・・・・・?」
「 まともに戻ったヤツらに話を聞いても的を得ないんだが、唯一はっきり口にするのは、女が蔵の中にいた、ということだけなんだ。
あの蔵の中には、人に害を為すナニかがいるんだよ。」
友人はそう言って、
「 ん~~~っ!」
と背中を伸ばした。
彼は、来年からその実家を継ぐことが決まっていた。
「 どうするんだ、それ?」
「 じいちゃんが死ぬ前までに蔵の真相が聞けたらいいが、そもそも知ってるかどうかわからんし・・・。
まぁ、さわらぬ神に祟りなしだな。
俺の子供がデカくなるまでには、なんとかしたいけどなァ・・・・・。」
彼はそう言って、肩をすくめて笑ってみせた。
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