日々の恐怖 3月5日 キジムナー(2)
翌朝、6時少し前にセットした目覚ましで俺は眼を覚ました。
寝ぼけ眼の妹を起こし、6時5分には祖母の家を出た。
祖母は何時も通り既に出かけた後だったから、色々聞かれる事もない。
待ち合わせ場所は集落の外れ、バス停の前だ。
車もほとんど通らない道路を渡り、山側に続く道に入る。
妹もすっかり眼を覚まして元気に歩いていた。
やがて、パイナップルに着いた。
親戚の子は、
「 良いか、直ぐに手を伸ばしちゃ駄目だぞ。」
「 え、じゃあどうするの?」
「 こうするんだ。」
運動靴のかかとで、捨てられたパイナップルの山を勢いよく蹴った。
“ バシッ!!”
と湿った音の後に甘ったるい、ジャムみたいな匂い。
「 こんな所には虫が集まって、それを食べる鳥も集まる。
そんでたまに、鳥を狙ってハブがいる。
まあ、今日は大丈夫だな。」
俺は上の空で、その子の声を聞いていた。
それは、蹴り飛ばしたパイナップルの影に見えていたんだ。
大きなカブトムシ、赤茶色のノコギリクワガタ、その他にも色々。
デパートで売っているのを見た事しか無かったのに、それが眼の前にいた。
俺と妹は夢中になってカブトムシやクワガタを捕まえた。
上機嫌で祖母の家に帰った時、
「 ラジオ体操行かなかったんだね。
早起きしたのに、何処行ってた?
まさかこの子連れて、釣りに・・・?」
見た事も無い、祖母の厳しい表情だった。
「 違うよ、これ。
〇〇君と一緒に・・・。」
虫籠のカブトムシとクワガタを見せる。
「 パイナップル畑に行ったんだね?」
「 うん。」
「 だから、まだこの子連れて水場に行っちゃ駄目だと言ったろう、あんなに。」
「 でも、水場は・・・・。」
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