日々の恐怖 8月29日 オッサンの家(4)
そんな状況がしばらく続き、兄が小学生高学年になった年に奥さんはその部屋で死んでいた。
自殺した形跡もなく、ただ動かなくなってたと兄は言った。
(実際に警察も来たが心筋梗塞と言われたらしい)
その時点で自分も正直、母親のバカさ加減が原因とはいえなんでこんな家で暮らさなきゃいけないのか分からなくなったし、
それとオッサンがこの家を離れないのも疑問に思った。
で、兄に聞いた。
「 なんでそれでもこの家に住んでるの?」
すると兄は、
「 ここ離れたらお袋が出るんだってよ、鬼の形相で。」
と言った。
俺の疑問を感じ取ったのか、兄は話を続けた。
葬儀を終わらせて、オッサンの実家に休養を兼ねて行ったらしいんだが、オッサンは毎夜、
亡くなった奥さんが動かない赤ちゃんを抱いてオッサンに縋りつく夢を見たらしい。
夜中に何度も目覚め狼狽しているオッサンを見て、親族は疲れてるんだろうと同情こそすれノータッチだったそうだ。
オッサンは兄にその事を何度も話して同意を求めたらしいが、兄は自分で見てないので曖昧に相槌を打ってたらしい。
そして何故か家に帰るとその夢を見ることも無く、オッサンはだんだん元に戻っていった。
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