大阪大学医学部附属動物実験施設/東京大学医科学研究所の真下知士教授、大阪大学微生物病研究所の竹田潤二招へい教授、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の堀田秋津講師らの研究チームは、新たに大腸菌由来TypeI-ECRISPRシステム(CRISPR-Cas3:クリスパー・キャス3)を開発した。ヒト細胞でゲノム編集ツールとして利用できる(12月6日発表)。本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」(オンライン)に12月6日掲載。
研究成果のポイント
〇真核細胞で利用できる新しいゲノム編集ツールCRISPR-Cas3を開発し、実際にヒトiPS細胞の遺伝子修復に利用できることを確認。
〇CRISPR-Cas3は、世界中で利用されているCRISPR-Cas9とは異なり大きくゲノムを削る特徴を持ち、さらに認識標的配列が長いためオフターゲットへの影響も極めて低いことを明らかにした。
〇従来よりも安全性の高い新しい日本発ゲノム編集基盤ツールとして、新たな創薬や遺伝子治療などへの利用、農水産物への利用など、さまざまな分野への応用が期待される。
研究の背景
ゲノム情報を操作することができるゲノム編集技術は、遺伝子の機能を理解するだけでなく、農水産業における品種改良や、遺伝子治療、再生医療での新規治療法開発など、幅広い分野における活用が期待されている。代表的なゲノム編集ツールであるCRISPR-Cas9は簡単で効率的にゲノムを操作することができるため、世界中でさまざまな生物や細胞に用いられている。ゲノム編集技術はさまざまな分野に応用されている一方で、標的配列以外のゲノム領域を誤って編集してしまうオフターゲット変異のリスクや、狙うことのできる標的配列の制限といった技術的問題がある。加えて、アメリカ主導で開発されたことによる知的財産の課題があり、日本における医療応用や産業用への利用が制限される懸念がある。こうした状況から、従来のゲノム編集技術とは異なる特徴を持った新しいゲノム編集ツール、特に国産の新規ゲノム編集ツールの開発が強く求められていた。
本研究の成果
本来、CRISPR-Casシステムは細菌、古細菌に存在する獲得性免疫システムと考えられており、細菌に感染するウイルス等のゲノムを切断することで、自らを守っている。CRISPR-Casシステムは、複数タンパク質の複合体でDNAを切断するClass1と、一つのタンパク質で切断するClass2に分かれているが、これまで開発されてきたCRISPR-Cas9やCpf1、Cas13などはClass2に分類される。一方、Class1の真核細胞でのゲノム編集技術はこれまで報告されていなかった。そこで本研究チームは、Class1に属するType I CRISPRに着目し、ヒト細胞でゲノム編集に利用できないか検討した結果、大腸菌由来のType I-E CRISPR-Cas3がヒト細胞内で変異を導入できることを見出した。
CRISPR-Cas3によって導入される切断パターンをキャプチャーシーケンスで解析したところ、標的配列の上流側に数百から数万塩基にわたって広範囲に配列が失われる欠失変異が導入されていることがわかった。この性質はCas9の標的部位に短い変異を導入する性質と大きく異なる。Type I-E CRISPR-Cas3は、27塩基を標的として認識するcrRNAと5つの因子から成るCascade複合体がゲノム上の標的配列を認識して、その後Cas3がDNA切断を誘導する。このCas3はヘリカーゼドメインを持つことから、二本鎖DNA構造をほどきながら標的配列の上流側で広範囲にわたってDNA切断を起こしたと考えられる。CRISPR-Cas3のオフターゲットへの影響について、全ゲノムシーケンス解析、また100カ所以上の類似領域のシーケンスを調べたところ、Cas9ではわずかにオフターゲット変異が確認された一方、Cas3ではオフターゲット変異は確認されなかった。すなわち、CRISPR-Cas3はオフターゲットへの影響がCas9と比較して少なく正確性が高いことが示唆された。
さらに、CRISPR-Cas3の遺伝子疾患に対する治療応用として、デュシャンヌ型筋ジストロフィー患者由来iPS細胞に利用した結果、エクソンスキッピングによりDMDタンパク質の発現が改善することを確認できた。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
CRISPR-Cas3はゲノムを大きく削ることから遺伝子や外来ウイルスなどを完全に破壊する、もしくは大規模領域をノックインすることに適していると考えられる。また標的を認識する配列が、Cas9が20塩基に対してCas3は27塩基と多く、オフターゲットへの影響の少ない安全なゲノム編集基盤ツールと考えられる。このようにCas9とは全く違った特徴を持つ日本発のゲノム編集ツールを今後さらに改良することで、医療や食品産業など多くの分野で応用できることが期待される。
◆用語説明
〇デュシャンヌ型筋ジストロフィー
筋ジストロフィーとは骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患の総称であり、デュシャンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンと呼ばれるタンパク質が全くもしくはほとんどないために起こる。ジストロフィンは筋細胞が壊れにくくする役割を持つタンパク質で、ジストロフィンが少ないと筋細胞が壊れ、炎症、線維化が起こり、筋力の低下による運動障害、呼吸筋障害、心筋障害などが引き起こされる。ほとんどの患者さんは20歳前後で死亡する。ジストロフィン遺伝子はX染色体に存在し、220万塩基の巨大遺伝子で、79のエクソンを持つ。
〇ヘリカーゼ
DNAなどの核酸をほどく酵素の総称。DNAに結合して、ATP、GTPなどを加水分解して得られるエネルギーを利用して、決まった方向へ核酸をほどいていく。
〇エクソンスキッピング
遺伝子の中でタンパク質合成の情報を担う部分をエクソンと呼び、直接タンパク質をコードしていない領域をイントロンと呼ぶ。例えばデュシャンヌ型筋ジストロフィーの患者では、いくつかのエクソンがなくなっていたり、重複していたり、塩基が変異していたりしており、正常なジストロフィンタンパクが作れなくなっている。異常のあるエクソンを読み飛ばしてやる(スキップする)ことで、機能的なジストロフィンタンパクを作らせることで治療する方法。
〇ノックイン
狙ったDNA配列の場所に、特定の配列を導入したり置き換える技術。外来遺伝子の導入や、標的遺伝子の標識化、病気に関連した配列への変換など、様々な目的に利用されており、新しい疾患モデルの作成や遺伝子治療に向けて必要不可欠な技術である。
◆CRISPR-Cas9
CRISPR-Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats / CRISPR associated proteins)とは、DNA二本鎖を切断(Double Strand Breaks=DSBs)してゲノム配列の任意の場所を削除・置換・挿入することができる新しい遺伝子改変技術である。第3世代のゲノム編集ツールとして2013年に報告されたCRISPR-Cas技術は、カスタム化(標的遺伝子の変更や複数遺伝子のターゲット)が容易であり、マウスといった哺乳類細胞ばかりではなく、細菌・寄生生物などの膨大な種類の細胞や生物種において、そのゲノム編集または修正に利用されている。
今日の天気は曇り。お日様が見えない冬の曇りの日は、寒さもあり、チョット憂鬱。
冬になると咲き始める花がある。冬でも咲く花は貴重で、”イソギク”もその一つだ。”イソギク”は伊豆半島や房総半島等の海岸に自生する多年草で、私達が目にするのは、園芸種(野生種がそのまま園芸店などに流通)。名(イソギク)の由来は、海岸に咲く菊から名づけられた。
葉や花が独特。葉は肉質で、葉裏の細かい毛で覆われて銀白色となっているのが葉表まで広がり、葉表の白い縁取りとなっている。花は沢山の小さな筒状花だけが集まって数mm程の大きさとなり、この集合体がさらに集まって散房状の頭花となっている。舌状花はない(まれに白色の舌状花がある、と言う)。
寒い早朝、駐車場の横のお庭で、咲き始めた”イソギク”を見つけた・・雪・氷の季節を実感する。
イソギク(磯菊)
別名:岩菊(いわぎく)
学名:Chrysanthemum pacificum
キク科キク属イソギク種
半常緑多年草
地下茎で増える、茎は木化して越冬する
原産地は日本(固有種)
開花時期は10月~12月
花は鮮やかな黄色
キク属では珍しい筒状花だけの花
特徴:水をあまり要求しない、生長がゆっくりしている
研究成果のポイント
〇真核細胞で利用できる新しいゲノム編集ツールCRISPR-Cas3を開発し、実際にヒトiPS細胞の遺伝子修復に利用できることを確認。
〇CRISPR-Cas3は、世界中で利用されているCRISPR-Cas9とは異なり大きくゲノムを削る特徴を持ち、さらに認識標的配列が長いためオフターゲットへの影響も極めて低いことを明らかにした。
〇従来よりも安全性の高い新しい日本発ゲノム編集基盤ツールとして、新たな創薬や遺伝子治療などへの利用、農水産物への利用など、さまざまな分野への応用が期待される。
研究の背景
ゲノム情報を操作することができるゲノム編集技術は、遺伝子の機能を理解するだけでなく、農水産業における品種改良や、遺伝子治療、再生医療での新規治療法開発など、幅広い分野における活用が期待されている。代表的なゲノム編集ツールであるCRISPR-Cas9は簡単で効率的にゲノムを操作することができるため、世界中でさまざまな生物や細胞に用いられている。ゲノム編集技術はさまざまな分野に応用されている一方で、標的配列以外のゲノム領域を誤って編集してしまうオフターゲット変異のリスクや、狙うことのできる標的配列の制限といった技術的問題がある。加えて、アメリカ主導で開発されたことによる知的財産の課題があり、日本における医療応用や産業用への利用が制限される懸念がある。こうした状況から、従来のゲノム編集技術とは異なる特徴を持った新しいゲノム編集ツール、特に国産の新規ゲノム編集ツールの開発が強く求められていた。
本研究の成果
本来、CRISPR-Casシステムは細菌、古細菌に存在する獲得性免疫システムと考えられており、細菌に感染するウイルス等のゲノムを切断することで、自らを守っている。CRISPR-Casシステムは、複数タンパク質の複合体でDNAを切断するClass1と、一つのタンパク質で切断するClass2に分かれているが、これまで開発されてきたCRISPR-Cas9やCpf1、Cas13などはClass2に分類される。一方、Class1の真核細胞でのゲノム編集技術はこれまで報告されていなかった。そこで本研究チームは、Class1に属するType I CRISPRに着目し、ヒト細胞でゲノム編集に利用できないか検討した結果、大腸菌由来のType I-E CRISPR-Cas3がヒト細胞内で変異を導入できることを見出した。
CRISPR-Cas3によって導入される切断パターンをキャプチャーシーケンスで解析したところ、標的配列の上流側に数百から数万塩基にわたって広範囲に配列が失われる欠失変異が導入されていることがわかった。この性質はCas9の標的部位に短い変異を導入する性質と大きく異なる。Type I-E CRISPR-Cas3は、27塩基を標的として認識するcrRNAと5つの因子から成るCascade複合体がゲノム上の標的配列を認識して、その後Cas3がDNA切断を誘導する。このCas3はヘリカーゼドメインを持つことから、二本鎖DNA構造をほどきながら標的配列の上流側で広範囲にわたってDNA切断を起こしたと考えられる。CRISPR-Cas3のオフターゲットへの影響について、全ゲノムシーケンス解析、また100カ所以上の類似領域のシーケンスを調べたところ、Cas9ではわずかにオフターゲット変異が確認された一方、Cas3ではオフターゲット変異は確認されなかった。すなわち、CRISPR-Cas3はオフターゲットへの影響がCas9と比較して少なく正確性が高いことが示唆された。
さらに、CRISPR-Cas3の遺伝子疾患に対する治療応用として、デュシャンヌ型筋ジストロフィー患者由来iPS細胞に利用した結果、エクソンスキッピングによりDMDタンパク質の発現が改善することを確認できた。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
CRISPR-Cas3はゲノムを大きく削ることから遺伝子や外来ウイルスなどを完全に破壊する、もしくは大規模領域をノックインすることに適していると考えられる。また標的を認識する配列が、Cas9が20塩基に対してCas3は27塩基と多く、オフターゲットへの影響の少ない安全なゲノム編集基盤ツールと考えられる。このようにCas9とは全く違った特徴を持つ日本発のゲノム編集ツールを今後さらに改良することで、医療や食品産業など多くの分野で応用できることが期待される。
◆用語説明
〇デュシャンヌ型筋ジストロフィー
筋ジストロフィーとは骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患の総称であり、デュシャンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンと呼ばれるタンパク質が全くもしくはほとんどないために起こる。ジストロフィンは筋細胞が壊れにくくする役割を持つタンパク質で、ジストロフィンが少ないと筋細胞が壊れ、炎症、線維化が起こり、筋力の低下による運動障害、呼吸筋障害、心筋障害などが引き起こされる。ほとんどの患者さんは20歳前後で死亡する。ジストロフィン遺伝子はX染色体に存在し、220万塩基の巨大遺伝子で、79のエクソンを持つ。
〇ヘリカーゼ
DNAなどの核酸をほどく酵素の総称。DNAに結合して、ATP、GTPなどを加水分解して得られるエネルギーを利用して、決まった方向へ核酸をほどいていく。
〇エクソンスキッピング
遺伝子の中でタンパク質合成の情報を担う部分をエクソンと呼び、直接タンパク質をコードしていない領域をイントロンと呼ぶ。例えばデュシャンヌ型筋ジストロフィーの患者では、いくつかのエクソンがなくなっていたり、重複していたり、塩基が変異していたりしており、正常なジストロフィンタンパクが作れなくなっている。異常のあるエクソンを読み飛ばしてやる(スキップする)ことで、機能的なジストロフィンタンパクを作らせることで治療する方法。
〇ノックイン
狙ったDNA配列の場所に、特定の配列を導入したり置き換える技術。外来遺伝子の導入や、標的遺伝子の標識化、病気に関連した配列への変換など、様々な目的に利用されており、新しい疾患モデルの作成や遺伝子治療に向けて必要不可欠な技術である。
◆CRISPR-Cas9
CRISPR-Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats / CRISPR associated proteins)とは、DNA二本鎖を切断(Double Strand Breaks=DSBs)してゲノム配列の任意の場所を削除・置換・挿入することができる新しい遺伝子改変技術である。第3世代のゲノム編集ツールとして2013年に報告されたCRISPR-Cas技術は、カスタム化(標的遺伝子の変更や複数遺伝子のターゲット)が容易であり、マウスといった哺乳類細胞ばかりではなく、細菌・寄生生物などの膨大な種類の細胞や生物種において、そのゲノム編集または修正に利用されている。
今日の天気は曇り。お日様が見えない冬の曇りの日は、寒さもあり、チョット憂鬱。
冬になると咲き始める花がある。冬でも咲く花は貴重で、”イソギク”もその一つだ。”イソギク”は伊豆半島や房総半島等の海岸に自生する多年草で、私達が目にするのは、園芸種(野生種がそのまま園芸店などに流通)。名(イソギク)の由来は、海岸に咲く菊から名づけられた。
葉や花が独特。葉は肉質で、葉裏の細かい毛で覆われて銀白色となっているのが葉表まで広がり、葉表の白い縁取りとなっている。花は沢山の小さな筒状花だけが集まって数mm程の大きさとなり、この集合体がさらに集まって散房状の頭花となっている。舌状花はない(まれに白色の舌状花がある、と言う)。
寒い早朝、駐車場の横のお庭で、咲き始めた”イソギク”を見つけた・・雪・氷の季節を実感する。
イソギク(磯菊)
別名:岩菊(いわぎく)
学名:Chrysanthemum pacificum
キク科キク属イソギク種
半常緑多年草
地下茎で増える、茎は木化して越冬する
原産地は日本(固有種)
開花時期は10月~12月
花は鮮やかな黄色
キク属では珍しい筒状花だけの花
特徴:水をあまり要求しない、生長がゆっくりしている