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  思い出を歩いて発掘

   健康を歩いて増進

膵臓がんの実験モデルをショウジョウバエで作製

2019-12-10 | 科学・技術
 北海道大学遺伝子病制御研究所の園下将大教授らは、ショウジョウバエを使って膵臓(すいぞう)がんの実験モデルを作製した。膵臓がんに深く関わるとみられている4つの遺伝子を変異させた。膵臓がん患者に特徴的な4遺伝子、「KRAS」「TP53」「P16」「SMAD4」である。
 実験モデルをマウスでの4遺伝子変異は、時間とコストがかかってしまう。米国ではショウジョウバエを使った探索から、抗がん剤開発につながった例もあることから実験モデルをショウジョウバエで作製した。既存薬や新薬候補物質から膵臓がん治療に適した薬の選別に活用する。
 研究が順調に進み治療薬候補が見つかれば、2021年以降に北大病院と連携して臨床研究に乗り出す。
 ◆膵臓がん
  膵臓がんは難治がんの代表で、早期発見や手術、放射線治療が難しい。将来的には肺がんに次いで死亡者の多いがんになると予想されている。
 膵臓がんの5年生存率は、他のがんの5年生存率と比べると非常に低く、全症例のデータをみると、膵臓がんの5年生存率は9.0%である。

腎細胞がんに特異的に発現するタンパク質を発見、腫瘍マーカーや抗がん剤への活用期待

2019-12-09 | 健康・病気
 千葉大学大学院医学研究院の安西尚彦教授と市川智彦教授らの研究グループは、腎細胞がんの細胞に特異的に発現して転移にも関わるタンパク質を見つけた(11月29日発表)。本研究成果は、「Scientific Reports」に掲載。
 共同研究グループは、ヒトの細胞内でアミノ酸を運ぶ役割を担う膜タンパク質「アミノ酸トランスポーターLAT1 (SLC7A5)」が腎臓においてがんに特異的に発現し、がんの転移や発現に関わることを解明した。このトランスポーターが腎細胞がんの腫瘍マーカーや治療標的になると見ている。さらに、このトランスポーターを阻害するLAT1阻害剤(JPH203)が抗がん剤として使える可能性もあるとしている。
 研究の背景
 アミノ酸トランスポーターは細胞の中にアミノ酸を運ぶ役割がある。特にLarge neutral aminoacid transporter (LAT) は人体の維持に必要な必須アミノ酸(ロイシンなど)を取り込む役割がある。LATには1~4の種類があるが、中でもLAT1 は様々ながん細胞に発現することで近年注目を集めている。これまでに、ジェイファーマ株式会社の遠藤仁氏と安西らはLAT1を阻害する薬剤 (JPH203) を開発しており、消化器領域の一部のがんでは抗がん作用が確認されていた。
 研究の成果
 ①腎細胞がんとアミノ酸トランスポーターLAT1の関連を解明
 腎細胞がんの手術を受けた患者のがん組織と正常組織をLAT1 に反応する抗体で染色したところ、LAT1 ががん部に多く発現しており、また、がん部のLAT1 の発現が多いほど転移や再発が多いことがわかった。
 ②アミノ酸トランスポーターLAT1 阻害薬が腎細胞がん細胞に対して抗がん作用をもつことを解明
 腎細胞がんの細胞に対してLAT1阻害薬(JPH203)を投与すると、細胞の中に入るアミノ酸の量が減ることがわかった。また、必須アミノ酸の流入が減少することにより、アミノ酸などの栄養素によって活性化され、がんの細胞増殖に重要な役割を果たすリン酸化酵素mTOR の活性が低下することを理由の一つとして、腎細胞がんの細胞増殖が抑制されることがわかった。
た。
 今後の展開:新規治療法の実用化に向けて
 実験の結果から、このアミノ酸トランスポーターLAT1 自体が腎細胞がんの腫瘍マーカーとなる可能性があり、また、阻害薬(JPH203)はその治療薬となる可能性がある。今後は、腎細胞がんだけでなく前立腺がん、膀胱がんなど他のがんへの応用研究や、ヒトへの阻害薬投与を行う臨床試験を計画しており、実用化に向けて着実に研究を進めていく。

 天気は晴れ。風は弱く、微風程度。
 散歩道沿いのお宅の玄関前の”カクレミノ”。実が沢山付いている。でもまだ黒く熟していない。・・黒く熟した実は、小鳥達の好物・・なので、じきに実や枝が整理される・・。
 ”カクレミノ”は日本原産の常緑樹。本州の千葉以南~沖縄にかけて分布し、湿り気のある樹林内や海岸近くに多く自生している。名(カクレミノ:隠蓑)の由来は、若木の頃の葉は深い切れ込みが入り、その姿が昔の雨具の「蓑(みの)」に形が似ているから、と言う。成長して成木になると切れ込みのない葉が出たり、老木になると古い葉が秋に紅葉し、成長とともに葉が変化していく。
 カクレミノ(隠蓑)
 別名:カラミツデ、テングノウチワ、ミツデ、ミツナガシワ、ミツノカシワ、ミソブタ
 学名:Dendropanax trifidus
 ウコギ科カクレミノ属
 常緑の亜高木
 日陰や潮風に優れた耐久力を持っている
 葉の形は変異が大きく、若木では3~5裂し、成木では全縁の楕円形の葉が多くなる
 開花時期は7月~8月
 枝先に散形花序で、黄緑色の小さな両性花と雄花が混じって咲く
 果実は径1cm位で、晩秋に黒紫色に熟す


炭素-炭素単結合を持つ安定な化合物の創出に成功、新たな材料開発の進展が期待

2019-12-08 | 科学・技術
 興味深い記事を見つけた。1年以上前の2018年3月9日発表の技術記事である。
 北海道大学石垣侑祐助教・大学院生の島尻拓哉氏・鈴木孝紀教授らの研究グループは、通常の結合長より17%も長い炭素-炭素単結合を持つ安定な化合物の創出に成功した。今回の成果は、世界記録の更新に留まらず、化学結合の極限状態で生じる現象の解明につながるもの。例えば、1.8Aを超える「超結合」は、外部刺激に柔軟に応答する可能性を秘めており、新たな材料開発への応用が期待され、新たな材料開発の進展が期待される。
 ポイント
 〇1.8 A を超える炭素-炭素単結合を有する安定な化合物の創出に世界ではじめて成功。
 〇通常の結合長より17%も長いにもかかわらず、このような結合が存在することを実験的に証明。
 〇市販の化合物からわずか3工程で合成可能であり、新たな材料開発の進展に期待。
 背景
 有機化合物は炭素や水素・酸素・あるいは窒素といった原子で構成され、これらの原子同士が互いに結合することで有機分子を形作る。この「化学結合」は、物質を創る最も基本的な要素であり、その本質を理解することは極めて重要な研究課題である。中でも炭素-炭素共有結合は有機分子の基礎となる結合であり、ほぼすべての化合物で単結合長は1.54 A という決まった値をとる。これらの結合を組み合わせることで数多くの分子が創られているが、1.7 A を超える炭素-炭素結合長を有する化合物の報告例は限られたものしかなかった。世界一長い炭素-炭素単結合の創出は、単なる数字の追求だけではなく、化学の本質解明に向けた至上命題ともいえる。
 研究手法
 研究グループは、以前に1.791(3) A の結合長を有する化合物を報告しており、通常の結合よりもはるかに長いが故に弱い結合(コア)をいかにして安定化させるかが、記録更新への課題であった。今回の研究では、本来不安定なコアを大きく剛直な骨格(シェル)で保護するような分子設計戦略を採用して、二つのジベンゾシクロヘプタトリエン骨格を有する新たな化合物を設計した。理論計算化学により分子構造を予測したところ、大きな二つのシェルが非対称に折れ曲がり、中心の結合を効果
的に保護するような「分子内コア-シェル構造」が確認された。その特異な構造によって長い炭素-炭素結合の存在も予測されたことから、市販の化合物から3工程で得る効率的な方法を考案し、実際に合成した化合物を用いて検討を行った。その結果、X線結晶構造解析によって結晶中での結合長を明らかにし、結合の存在を裏付ける結合電子を観測した。また、炭素-炭素結合に特徴的な伸縮振動をラマン分光法によって直接観測することで、実験的に結合の存在を証明することに成功した。
 研究成果
 新たに合成した化合物のX線結晶構造解析を低温(-73℃)で行ったところ、計算により予測された構造とよく一致し、中央の炭素-炭素結合は1.7980(18) A と従来の記録を超える結合長が明らかとなった。通常の単結合は強固であるため温度によって値が変化することは稀であるが、このように長い結合は結合エネルギーが小さく、伸縮性があると考えられる。そこで、様々な温度(-173~+127℃)で測定を行ったところ、高温では結合が長くなり、+127℃において1.806(2) A という世界一の炭素-炭素結合長を示した。高精度の解析が可能な実験を行うことで、結合電子対の存在を確認することもできた。また、ラマン分光法によっても結合の伸縮振動が理論予測と一致して観測され、世界で初めてとなる1.8 A を超える結合を実証した。
 特筆すべき点はこの物質の安定性である。一般的には結晶状態で安定でも溶液中では分子の運動が大きくなり、結合が切断したり分解生成物が生じたりする可能性もあります。そこで、溶液中での安定性についても確認したところ、+127℃の高温下でも全く分解は見られず、大気中室温で100日放置しても安定だった。以上の研究結果から、本分子設計指針である「分子内コア-シェル構造」の有効性が確かめられ、「世界一長い炭素-炭素単結合の創出」に成功した。
 今後への期待
 今回の研究によって,1.8 A を超える炭素-炭素単結合を創出し、その存在を実験的に証明することができた。このような「超結合」の伸縮振動はラマン分光法によって明らかにされ、通常の結合エネルギーより著しく小さいことが特徴的である。これにより、本来強固な化学結合に柔軟性が付与され、圧縮や引張といった機械刺激に応答する新規材料の創出につながると考えられる。
 ◆用語解説
 〇コア-シェル構造
 中心の核(コア)を外殻(シェル)が覆うような集合体のこと。本研究においては、長く弱い結合(コア)を剛直な骨格(シェル)が保護していることを意味する。
 〇A(オングストローム)
 0.1 nm(ナノメートル)、即ち1 ミリメートルの1/1000 の更に1/10000の長さ。
 〇結合エネルギー
 二個の原子がばらばらに存在するときのエネルギーと、共有結合を形成して安定化しているときのエネルギーの差のこと。結合エネルギーが小さいということは、外部からの刺激などで結合が切断してしまいやすく、不安定であることを意味する。
 〇超結合(hyper covalent bond)
 1.8~2.0 A の範囲にある長い炭素-炭素結合のことで、石垣助教らはこのような共有結合を「超結合」と呼ぶことを提唱している。通常の共有結合には見られない「伸縮性」や「応答性」の発現が期待される。
 〇理論計算化学
 コンピューターを用いて分子の構造を予測したり、反応経路を解析したりする手法のこと。本研究では,密度汎関数(DFT)法と呼ばれる手法を用いて,結晶の最適化構造やエネルギーを導いている。この方法は電子密度から計算するものであり、有機化合物に広く用いられている。
 〇X 線結晶構造解析
 試料(単結晶)にX 線を照射し、結晶構造を明らかにする解析法のこと。分子の構造を確認することで、結合長や結合角といった情報を取得できる。
 〇伸縮振動
 結合がバネのように伸び縮みする現象のこと。結合の強さと原子の質量によって検出される波数が異なる。
 〇ラマン分光法
 レーザーを照射し、ラマン散乱光を検出することで、分子内の伸縮振動などを検出できる測定法のこと。

 今日は雲多いが晴れ。風は穏やかで微風程度。
 散歩道沿いで、赤い実・黄色の実が沢山付いた”ピラカンサ”を見つけた。まだ鳥に食べられていない・・綺麗だね、自宅の”ピラカンサ”の実は殆どない。
 ”ピラカンサ”は、バラ科トキワサンザシ属(Pyracantha) の種類の総称である。日本では赤色の実の”トキワサンザシ:常磐山査子”、黄色の実の”タチバナモドキ:橘擬”、赤色の実の”カザンデマリ:花山手毬”の3種類が多く栽培されており、これをピラカンサと一括りで呼んでいる事が多い。赤いこの実は、”トキワサンザシ””カザンデマリ”・・どちらかかな。
 ピラカンサ
 バラ科トキワサンザシ(ピラカンサ)属
 常緑低木
 開花時期は4月~6月
 花は小さく、白い5弁花
 果実は径2cm位で赤・橙・黄色に熟す、見頃は10月~12月
 ピラカンサと呼ばれる
  タチバナモドキ(橘擬)
   学名:Pyracantha angustifolia
    果実は橙(黄)色
  トキワサンザシ(常盤山櫨子)
   学名:Pyracantha coccinea
    果実は鮮紅色に熟す。カザンデマリと相似し区別しにくい
  カザンデマリ(花山手毬)
   学名:Pyracantha crenulata
    果実は赤い。別名ヒマラヤトキワサンザシ


高温で瞬時に約2千倍硬くなる高分子ゲルを開発

2019-12-07 | 科学・技術
 北海道大学大学院先端生命科学研究院の野々山貴行特任助教、グンチェンピン教授らの研究グループは、高温で瞬時に約2千倍硬くなる新規高分子ハイドロゲルを開発した。本研究成果は、2019年11月18日(月)の「Advanced Materials」誌に掲載。
 ポイント
 〇加熱すると瞬時に2,000倍近く硬さがジャンプする高分子ゲルを開発。
 〇一般的な高分子の性質とは逆の,低温で柔らかいゴム状態,高温で硬いガラス状態を示す。
 〇温度に応答して硬くなるスマートプロテクター等の応用に期待。
 一般にペットボトルなどの高分子材料は低温で硬く(ガラス状態)、高温で柔らかく(ゴム状態)なる。研究グループは、温泉源などに生息する好熱菌の100℃以上の高温でも変性しないタンパク質構造に着目し、一般の高分子とは逆に低温で柔らかく高温で硬くなる高分子ゲルを作製した。食品添加物にも使用されるこの高分子ゲルは、汎用性のある安価で無毒な原料から簡単に作製できる。室温付近の比較的低い温度では柔らかく伸びやすいが、ある温度以上で急激に硬くなる。これは、柔らかい食用ゼリーが硬いプラスチックへ瞬時に変わるほどの劇的な変化だ。冷やすと元の柔らかい状態へ戻り、急激な硬化を何度でも繰り返せる。
 この高温で硬くなる性質を利用して本高分子ゲルとガラス繊維布を複合した材料は、交通事故やスポーツのアクシデントの際に発生する大きな摩擦熱に応答して硬くなり、身体を保護するスマートプロテクターとしての応用が期待できる。実際に、アスファルト表面に荷重を掛けて高速で引きずったところ、ゲル繊維複合体が摩擦熱で硬くなり、ほとんど壊れないことが実証された。また、硬くなる際に大きな熱吸収を伴うため、本高分子ゲルは昨今の酷暑対策となる熱吸収材としての応用も期待できる。窓ガラス等に本高分子ゲルを貼っておくと、太陽からの熱の一部を吸収し、室内の温度上昇を抑える効果が確認された。

 今日の天気は、青空が見えない曇り空、雨や雪は降ってない。風は弱く、寒いけど暖かい?。
 久しぶりの散歩。歩いて気が付いた、”ヤツデ”に白い球状に集まった花が咲いている。
 ”ヤツデ:八手”は名の如く大きく裂けた葉が特徴である。花は雄性先熟で、一つの花が始めに雄花(雄花期)となり、次に花弁と雄しべを落として雌花(雌花期)となる。一つの枝で雄性期と雌性期が同時になる事は少なく、雄性期と雌性期をずらして自家受粉を避けている。始めに咲く雄花には花弁が5枚と長い雄しべが5本あり、雌花は短い雌しべが発達し、雌しべのみの花となる。(写真には雄花と雌花がある。)
 原産地は日本。葉が掌状に7~11裂する葉を「手」に見立てた命名。「八」は”数が多い”という意味から。学名:Fatsia japonicaの”Fatsia”は日本語の”八”で、”八”は古い日本語の発音では「ふぁち」・「ふぁつ」とF音を使っていた。例えば、「母」の発音は「ふぁふぁ」・「ふぁわ」だった。”japonica”は日本産を意味する。
 ヤツデ(八手)
 別名:天狗の葉団扇(てんぐのはうちわ)
 学名:Fatsia japonica
 ウコギ科ヤツデ属
 常緑低木(丈は1.5m~3m)
 開花時期は11月~12月
 小花が枝分かれした柄の先にまとまる


貴金属使わずアンモニア合成触媒となる新物質を発見

2019-12-06 | 科学・技術
 東京工業大学物質理工学院材料系の鯨井純(修士課程1年)、元素戦略研究センターの北野政明准教授と細野秀雄栄誉教授らは、貴金属を使わずに低温でアンモニア合成活性を示す物質を発見した。研究成果は米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」オンライン速報版に11月22日付で公開。
 ●ポイント
 〇BaCeO3の酸素の一部を窒素と水素に置き換えた新物質を低温で合成。
 〇ルテニウムなどの貴金属を使わずに高いアンモニア合成の触媒活性を発見。
 〇窒素イオンと水素イオンが活性点として働く新しい反応メカニズムを提唱。
 ●ルテニウム(Ru)を使う触媒でアンモニアを合成
 農作物など植物の生育には窒素(N)が必須で、その供給源としてアンモニア(NH3)が使われている。世界の人口は70億人を超え、この人口増加を支えるのが農作物の安定供給である。これには窒素肥料が必要で、肥料原料はアンモニアである。最近では、燃やしても窒素と水しか生成されないため、再エネと組み合わせた水素貯蔵媒体としても期待されている。
 アンモニア合成には高温・高圧を必要とし、エネルギーを大量に消費する。一般的には、アンモニアの生産は「ハーバー・ボッシュ法z(HB法):1906年ドイツで開発」と呼ぶ技術で、400℃~600℃、数百気圧の条件で水素と窒素を反応させて作る。
 早稲田大学関根泰教授・中井浩巳教授らは日本触媒と共同で、化学肥料や医薬品の原料になるアンモニアを合成する新手法を開発した(H29.6)。研究チームはルテニウム(Ru)を使った触媒に直流電圧をかけると、水素イオンと窒素分子が反応し、同200度、9気圧程度でも効率よくアンモニアができることを突き止めた。この反応の原因を電子顕微鏡観察や赤外分光分析などを用いて解析した結果、直流電場中での水素イオンのホッピングが反応を誘起していることを突き止めた。この際、N2H+が中間体となっていることを明らかにした。
 しかしルテニウムは高価な貴金属であり、豊富に存在する安価な金属を利用し、温和な条件下で作動する触媒の開発が望まれていた。
 ●研究の内容
 北野准教授らの研究グループはペロブスカイト型の混合アニオン材料に着目し、新たな合成方法を見いだした。
 近年、ペロブスカイト型酸水素化物など酸素サイトの一部をヒドリドイオン(H-)に置き換えたような混合アニオン化合物がいくつか報告されており、その一部はアンモニア合成触媒として機能することが報告されている。通常、ペロブスカイト型酸化物の合成には900℃以上の高温での加熱処理が必要であり、酸素サイトの一部をヒドリドイオンに置き換えるために、CaH2(水素化カルシウム)などと550℃付近の温度で一週間程度加熱する多段階の合成プロセスとなっている。またペロブスカイト型酸窒化物の合成も光触媒などさまざまな分野で合成が行われているが、ペロブスカイト型酸化物をアンモニア雰囲気中で800℃以上の高温で加熱することにより合成されている。これは、ペロブスカイト型酸化物の酸素が非常に安定であり、ほかのアニオンで置換することが困難であることに由来している。
 北野准教授らはCeO2(酸化セリウム)とBa(NH2)2(バリウムアミド)を直接反応させることにより、ペロブスカイト型酸窒素水素化物(BaCeO3-xNyHz)の一段合成に成功した。これまでこの物質は合成例がなく、新物質であることも明らかとなった。
 原料であるBa(NH2)2は200℃程度の低温から分解するためCeO2とよく反応し、ペロブスカイト構造を形成すると同時に、酸素のサイトにBa(NH2)2由来の窒素および水素が導入される。この手法を用いると、ペロブスカイト構造が300℃という非常に低温から形成され550℃でほぼ均一な材料が得られる。
 これは一般的なBaCeO3の合成温度(約1000℃)と比べてもかなり低温で合成できていることが分かる。一方、BaCeO3をアンモニア雰囲気、900℃で加熱しても酸素のサイトにほとんど窒素が導入されないことも分かった。これらのことから、北野准教授らが開発した合成方法が、ペロブスカイト型混合アニオン材料の合成に有用であることが分かる。
 このペロブスカイト型酸窒素水素化物(BaCeO3-xNyHz)はルテニウムなどの金属ナノ粒子を固定しなくても安定したアンモニア合成活性を示すことが分かった。一般的にBaCeO3などの金属酸化物は全くアンモニア合成活性を示さないことから、アニオン(陰イオン)サイトに導入された窒素イオンや水素イオン(ヒドリドイオン)が触媒活性に寄与していることが分かる。
 さらに、BaCeO3に鉄やコバルトを固定した触媒では、ほとんどアンモニア合成活性を示さないのに対し、BaCeO3-xNyHzの表面に鉄やコバルトを固定すると、既存のルテニウム触媒よりも低温で優れたアンモニア合成活性を示すことも明らかとなった。窒素や水素の同位体ガスを用いた実験から、BaCeO3-xNyHz中の窒素および水素イオンがアンモニア合成に直接関与するユニークなメカニズムで反応が進行することも明らかとなった。
 ●今後の展開
 開発した触媒は低温低圧条件下で優れたアンモニア合成活性を示し、貴金属フリーなアンモニア合成触媒として極めて有望な材料であることが示された。今後、触媒の調製条件などを最適化することでさらなる活性向上が見込まれ、アンモニア合成プロセスの省エネルギー化に大きく貢献することが期待される。
 ◆用語解説
 〇ペロブスカイト型
 化学組成がABX3の無機化合物に見られる結晶構造の1つであり、AやBは金属カチオンでXは酸素などのアニオンからなる。Aが単位格子の中心に、Bが各格子点に、Xが各稜の中心に位置した構造である。
 〇ヒドリドイオン
 負の電荷を持った水素イオン(H-)であり、ほかに水素は電荷を持たない原子状水素(H0)や正の電荷を持った水素イオン(プロトン、H+)の形態を持つ。
 〇エネルギーキャリア
 エネルギーを貯蔵、輸送するための担体となる物質。例えば、アンモニアは窒素分子1つに水素分子が3つ付いており、多くの水素を貯蔵できる。さらに、水素と比べて簡単に液化できるため、水素の貯蔵、輸送を行うために便利な物質として注目されている。
 〇混合アニオン材料
 例えば、金属酸化物の酸素サイトの一部が窒素や水素などの異種元素で置換され、複数のアニオンが存在する物質。

日経MJヒット商品、東横綱:ラグビーW杯、西横綱:キャッシュレス

2019-12-05 | 社会・経済
 年末12月になるとヒット及びヒット商品番付が発表される。
 日本経済新聞社は2019年の日経MJヒット商品番付をまとめた。1月~12月の消費動向や売れ行きなどを基に担当記者がランク付けしたものである。
 東の横綱には「ラグビーワールドカップ(W杯)」。前回大会で南アフリカを破る大金星を挙げてから4年。初のベスト8入りを果たした日本代表の活躍に日本中が熱狂した。改元や消費増税といった節目の多かった年でもあり、日本代表のように、着実に実績を積み重ねてきた商品やサービスが上位に並んだ。
 西の横綱は「キャッシュレス」。官民の還元施策が奏功した。ヤフーなどが出資する「PayPay(ペイペイ)」をはじめ、各社が還元合戦を展開しスマートフォンを使った決済が広がった。さらに政府が消費増税に合わせてキャッシュレス決済のポイント還元施策を導入。中小小売店などでもスマホ決済が利用できる店が増えている。
 ◆2019年日経MJヒット商品番付
     東        西
 横綱 ラグビーW杯    キャッシュレス
 大関 令和       タピオカ
 関脇 天気の子     ドラクエウォーク
 小結 ウーバーイーツ  サントリー「こだわり酒場のレモンサワー」
 前頭 ライオン
    「ルックプラスバスタブクレンジング」
             任天堂
             「ニンテンドースイッチライト」
 前頭 渋谷スクランブルスクエア
             バスチー
 前頭 ハンディファン  鬼滅の刃
 前頭 渋野日向子    八村塁
 前頭 アナと雪の女王2  すみっコぐらし
 前頭 お皿いらず冷食   カニカマ
 前頭 100均コスメ「UR GLAM」 ロート製薬「デオコ」
 前頭 Official髭男dism  ソニーワイヤレスイヤホン
 前頭 脱プラスチック   セルフ美容院
 前頭 あなたの番です   横浜流星
  ・

2019年のユーキャン新語・流行語大賞は、「ONE TEAM」

2019-12-03 | ニュース
 「現代用語の基礎知識選 2019ユーキャン新語・流行語大賞」の表彰式が行われ、今年の新語・流行語大賞 年間大賞&トップ10が発表された(2019年12月2日)。
 2019年の間に発生した多種多様な「ことば」の中から、広く大衆に親しまれた新語・流行語を選び、発表された。本賞は、本年度で36回目。「現代用語の基礎知識」(自由国民社)編集部調査をもとに、ノミネート30語を選出し、その中から選考委員会が10語を選定している
 年間大賞:ONE TEAM
 ラグビー・ワールドカップ(W杯)で日本代表を率いたジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチが掲げた「ONE TEAM(ワンチーム)」が選ばれた。
 トップテン (受賞者か受賞団体)
 ONE TEAM(年間大賞):ラグビー日本代表チーム
 計画運休:国土交通省
 軽減税率:秋葉弘道氏(有限会社「アキダイ」代表取締役社長)
 スマイリングシンデレラ/しぶこ:渋野日向子氏(プロゴルファー)
 タピる:たぴりすと。華恋氏、たぴりすと。奈緒氏
 #KuToo:石川優実氏(アクティビスト)
 ○○ペイ:PayPay株式会社
 免許返納:免許返納された全ての人
 闇営業:FRIDAY編集部
 令和:御田良知氏(坂本八幡宮 宮司)
 ◆新語・流行語大賞
 新語・流行語大賞は、自由国民社がその年1年間に発生した「ことば」のなかから、世相を軽妙に映し、多くの人々の話題に上った新語・流行語を選び、その「ことば」に関わった人物、団体を顕彰するとされている賞。2004年より、ユーキャン新語・流行語大賞に改称している。
 1984年(昭和59年)に創始された。
 候補となる言葉は『現代用語の基礎知識』(自由国民社・刊)の読者アンケートの結果から編集部によって選出された30語から50語が候補としてノミネートされ、その中から新語・流行語大賞選考委員会(選考委員7名)によってトップテンと年間大賞が選定される。
 創始当初は、新語部門と流行語部門に分かれて、それぞれ金賞を筆頭として各賞が選ばれていたが、8回目の1991年(平成3年)からは年間大賞が設けられ、11回目の1994年(平成6年)からは両部門を合わせて選定されるようになった。2003年(平成15年)には株式会社ユーキャンと提携し、翌2004年(平成16年)より現代用語の基礎知識選「ユーキャン新語・流行語大賞」に改称された。
 日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」、第一生命の「サラリーマン川柳」、住友生命の「創作四字熟語」、東洋大学の「現代学生百人一首」と並んで、現代の世相を反映する一つの指標として取り上げられている。

表示部を巻き取れる有機ELディスプレー、シャープとNHK共同で開発

2019-12-02 | 科学・技術
 シャープは、表示部を巻き取れる有機ELディスプレーをNHKと共同で開発したと発表した(11月8日)。
 30型で高精細な4K映像を表示できるディスプレーを開発した。赤・緑・青の各色に発光する素子を使った巻き取れる有機ELディスプレーとしては、世界最大との事。信号処理技術やパネルの駆動技術などでNHKと協業し、画面の明るさの均一性や鮮明度を向上させた。柔軟性の高いフィルム基板の活用で半径2cmと小さく収納できる。
 因みに、巻き取れるディスプレーは、韓国のLG電子が巻き取り式テレビの開発を発表している。シャープは折り畳める有機ELディスプレーについては、既に開発を発表済み
 実用化の時期などは未定。オフィスでのモニターや家庭用テレビなどでの実用化を視野に検討を進める。

 今日の天気は晴れ、午後から曇り~雨、、夜には強い雨の予想。
 所要があり、郊外に出かけた。郊外のお家のお庭に”ヒイラギ”が植えられており、花が咲いている。開花時期は11月~12月だ。良く似た”ヒイラギモクセイ(柊木犀)”の開花時期は10月頃だから、少し遅れて咲く。
 ”ヒイラギ”は古くから邪気を払う木(縁起木)とされ、庭に植える習慣がある。葉に鋭いトゲ(鋭鋸歯)があるから。名(ヒイラギ)の由来も、固くてギザギザ(さわると痛い)した葉に触れると「ひいらぐ(疼く、ひりひり痛む)」から、ひいらぎぎ(疼木)→ひいらぎ、となった。
 ”ヒイラギ”は雌雄異株である。雄株の花は2本の雄蕊が発達し、雌株の花は花柱が長く発達して結実する。写真の花は雄株の花かな。
 ヒイラギ(柊、疼木・柊木)
 学名:Osmanthus heterophyllus
 モクセイ科モクセイ属
 常緑の低木
 雌雄異株
 原産は日本を含む東アジア
 開花時期は11月~12月
 花にはキンモクセイに似た芳香がある
 花冠は4深裂し、径5mm程。花弁は強く反り返る
 果実は長さ12~15mmになる核果で、翌年6月~7月に暗紫色に熟す


海水中で素早く強力に接着し、繰り返し使用可能な新規接着剤を開発

2019-12-01 | 科学・技術
 北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)・同大学院先端生命科学研究院のFan Hailong(フアン ハイロン)研究員、同研究拠点・同研究院・同大学国際連携研究教育局の剣萍(グン チェンピン)教授らの研究グループは、海水中で素早く強力に接着し、繰り返し使用可能な新規接着剤を開発した。本研究成果は、2019年11月12日公開の「Nature Communications」誌に掲載。
 ポイント
 〇海水中で素早く強力に接着し、繰り返し使用可能な新規接着剤の開発に成功。
 〇本接着剤の化学構造は、海洋付着生物であるイガイの接着タンパク質を参考に設計。
 〇海中作業における接着剤やシーリング材、また海中でのコンクリート硬化剤として期待。
 イガイやフジツボなどの海洋付着生物は、「接着タンパク質」と呼ばれる接着剤を分泌することによって、海水中で岩に強固に接着する。一方、ほとんどの人工的な接着剤は空気中では材料に強く接着するが、水中や海中では使用出来ない。
 研究グループは、イガイの接着タンパク質中では+に帯電したカチオン性部位と芳香環と呼ばれる部位が隣り合って並んでいることに着目し、カチオン性部位と芳香環部位が隣同士に配置された高分子化合物を合成した。得られた高分子化合物は海水中で接着剤として働き、石・ガラス・プラスチックなどの様々な固体を強く、素早く接着させることが出来た。その接着強度は最大で約60kPa(接着面1m2あたり6tもの重さに耐える)と非常に丈夫であり、また剥離と再接着を何度も繰り返すことも出来る。一方で、カチオン性部位と芳香環がランダムに配列した高分子化合物では、上記のような強い接着は見られなかった。すなわち本化合物による海水中での強い接着は、カチオン性部位と芳香環が隣同士に配列した構造に由来することがわかった。
 本研究は、海水中において繰り返し使用可能な接着剤の開発を報告する世界初の例になる。本材料は、海水中において仮止め剤や破損の修復剤として使用可能であるほか、本技術を活かした海水中でのコンクリート製造なども可能になると期待される。

 今日の天気は、雲が多い晴れ。早朝に畑に行ったら、霜が降りていた。寒い朝だった。
 小さなお花畑で、まだ”マリーゴールド”の花が咲いている。八重花が多い。
 ”マリーゴールド (marigolds)”のマリーとは聖母マリア様のこと。聖母マリアの祭日に、この花が咲いていたことから”聖母マリアの黄金の花”が名前の由来。
 ◆聖母マリアの祭日
 最も名高いものとしては、最古のマリアの祝日とされる8月15日の聖母被昇天の大祝日がある。
 マリーゴールドには幾つかの種(約50種)があり、代表品種としてはフレンチ・マリーゴールド(French marigold)、アフリカン・マリーゴールド(Aflican marigold)、メキシカン・マリーゴールド(Mexican marigold)など。よく見かけるのは、フレンチ・マリーゴールド、かな。
 マリーゴールド(marigolds)
 別名:紅黄草(こうおうそう)、孔雀草(くじゃくそう)、万寿菊(まんじゅぎく)
 学名:Tagetes patula
 キク科タゲテス属(マンジュギク属)
 一・ニ年草
 原産地:メキシコを中心とする中米
  江戸時代前半に渡来したと言われる
 開花時期は5月~11月
 多くの種があり、花姿(咲き方)は一重・八重・カーネーション咲きなど