会場に入ると、どこかの女性から、カメラのシャッターを押してほしいと頼まれた。
夫の絵の前で、知人と3人で記念写真を撮りたいということらしい。
カメラは、なつかしい「サムライ」である(京セラが80年代後半に発売した縦型のハーフカメラ)。
くだんの絵は、杉本道昭「家路」(100号)だった。
筆者の知らない人だ(あとで検索をかけてみたけど、まったくヒットしなかった)。
目録にも、(札幌)と . . . 本文を読む
デジタルカメラ全盛のこのご時世でもなおモノクロ優位のつづく札幌の学生写真界。しかし、ついにというか、やっとというべきか、今回の展覧会は、カラー(たぶんデジタルが多い)9人、モノクロ14人で、両者が拮抗(きっこう)してきました。モノクロ銀塩の関係商品(印画紙など)はかなり値上がりしており、これまで学生のモノクロ銀塩志向をささえてきた価格の要因が変わりつつあることから、今後が注目されます。
カラ . . . 本文を読む
(承前)
私が君にはじめて会ったのは、私がまだ札幌に住んでいるころだった。私の借りた家は札幌の町はずれを流れる豊平川という川の右岸にあった。その家は堤の下の一町歩ほどもある大きな林檎園の中に建ててあった。
そこにある日の午後君は尋ねてきたのだった。
(有島武郎「生まれ出づる悩み」)
札幌農学校の教壇に立っていた有島武郎が引っ越し魔であったことについては、札幌芸術の森に残されている彼の . . . 本文を読む
世はデジタル時代ですが、藤女子大写真部は今回もモノクロ銀塩が圧倒的に多い展覧会になりました。傷やほこりのついていない、しっかり現像したネガを、きちんとメリハリをつけて焼く伝統をしっかり引き継いでいます。いまさらモノクロ銀塩でもないだろう-という人もいるかもしれませんが、この姿勢は偉いなあと素直に評価したいです。
題材も、さびしげな風景が多いのが、藤女子らしいと感じました。
今野真理子さん「 . . . 本文を読む
富田さんは札幌在住で、行動美術と全道展の会員。
時計台ギャラリーでは5年ぶりの個展となる。
その間、2004年にはギャラリーどらーる(閉廊)で、05年には深川のアートホール東洲館や函館で個展をひらいているが、筆者は見ていない。
美術作品は見た瞬間が勝負だ-という意味のことを言った美学者がいた。
良し悪しは一瞬でわかる、というのである。
富田さんの絵を見ると、そのことばを思い出す。
. . . 本文を読む
竹田さんは砂川在住。これまで地元や岩見沢で個展をひらいてきたほか、札幌でもグループ展には出品したことはありますが、札幌での個展となると初めてだそうです。
竹田さんの作品は、鉢カバーなど。
「花が好きなんですが、じぶんが使いたいと思うものがなくて」制作を始めたとのこと。
たしかに、一般的な「陶芸」というイメージからは、相当かけ離れた自由な作品が並びます。
右側の軽やかな絵は、かき落 . . . 本文を読む
精力的に制作、発表をつづける室蘭の陶芸家、毛利史長(ふみおさ)さん。
会場に入るなり
「ヤナイさん、ごめん。3月のさいとうギャラリーでの2人展のを、そのまま持って来ちゃいました」
と言われましたが、その2人展を見逃してしまったので、自分としては新鮮でした。
インスタレーションというか、オブジェ的な作品も手がけている毛利さんですが、今回はうつわが大半。
青白 . . . 本文を読む
北翔展は、もともと久守昭嘉さん(春陽会会員、全道展会員)の教室でした。現在は、息子の浩司さんが指導を引き継いでいます。
筆者は、この北翔展以外で浩司さんの作品を拝見したことがなく、指導に全力を注いでいるのでしょう。ことしの出品者は83人で、1人1点。油彩の教室としては道内でも屈指の規模と思われます。
今回、昭嘉さんの油彩4点が、会場中央に飾られていました。
遠景から川や黄色い畑を望んだ「 . . . 本文を読む
会社は休み。
こういう日に限って、雨が降る。
たぶん、ことしはじめての雨。
風も強い。
目の前でビニール傘がぶっ壊れる光景を2度も街角で見た。
朝、遅く起きてギャラリー回りへ。
豊平橋停留所でバスを降りて札幌市民ギャラリーへ。日陽展と北翔展。
札幌市写真ライブラリーで札幌学院大学写真部展。
鉄道病院前のバス停留所まで10分かけて歩き、ギャラリー粋ふようへ。砂川で陶芸をし . . . 本文を読む
会期終了まぎわの展覧会場にすべり込むと、出品作の題名パネルの大半に、売約済みであることを示す赤い丸がついていました。
この不景気の北海道で、これほど絵が次々と売れていくのは、石垣さんの展覧会以外では見られない現象です。
比較的安いのが一因なのは間違いないでしょうが、やはり、作品に魅力があるからなのでしょう。
石垣さんの絵は、たしかにリアルです。一般的な水彩画ということばからは、想像もつきま . . . 本文を読む
今年から、これまでの「推薦制」をやめて、事実上のアンデパンダン(自由出品)に移行した抽象派作家協会展。
一般出品者として11人がエントリーしました(うち1人は都合で出品とりやめ)。ベテランから大学院を修了したばかりの若手まで世代は幅広く、同人の今荘義男さんも
「入場者が増えたし、若い人が率先して受付などをやってくれるので頼もしい。来年以降も出品してほしい」
と笑顔で話しておられました。
. . . 本文を読む
(承前)
上の地図をごらんいただくと(ケータイで見てる人、ごめんなさい)わかると思うのだが、勤医協病院の前の交叉点の太い道路が、昔の遊郭の中央を貫いていた通りだ。
その両側を通っている、やや細い道路が、遊郭の境界だったらしい。
この道路が、ほかと違う性質を持っていることは、菊水稲荷神社の角が、クランクになっていることからわかる。地図をよく見ると、その反対サイドの、保育園の角もク . . . 本文を読む
「ボックスアート」
ということばの正確な定義があるかどうかはわからない。ただ、美術業界では、米国のジョセフ・コーネルの作品が有名で、ボックスアートを名乗る作品は多かれ少なかれ彼の影響を受けているともいえる。
ギャラリーたぴおでは、これまで4度、「閉塞形状展」というサブタイトルのついたボックスアートのグループ展がひらかれてきた。
いずれも「たぴお」の主宰者だった竹田博さん(昨年死去)の音 . . . 本文を読む
北海道新聞の4月19日、函館・道南版で、北斗市(旧大野町)の「孤高の画家」鵜川五郎さんが亡くなっていたことを知りました。
ブリューゲルなど北方ルネサンスを思わせる画風で、戦争や現代を諷刺する鵜川さんの絵は、「鋭い」などという並みの形容詞でくくれるようなものではないと思います。
そこには、人間のもつ狂気へ根源的な洞察があり、呪詛さえ、色濃く感じられるのです。だから、鵜川さんの絵は「社会派」と . . . 本文を読む