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薔薇散歩2011年6月

2010-06-04 05:56:00 | 日記
2011/06/12
ぽかぽか春庭十一慈悲心日記2011年6月>薔薇さんぽ(1)庭園美術館のバラ

 4月の桜さんぽ、ゴールデンウイークの新緑さんぽに続き、5月後半は、薔薇さんぽを楽しみました。
 
 5月18日、港区白金の庭園美術館で「森の芸術展」を見たあと、久しぶりにお庭を歩きました。近代建築の庭園によくあるように、日本庭園と洋式庭園の両方を取り入れて二部式になっている庭です。西洋庭園の端にバラが植えられていました。株の数は多くないものの、きれいに咲いていました。ちょうど私が訪れた5月18日の庭園美術館の薔薇の写真をUPしているブログがありました。薔薇の手入れをする園芸家らしいです。
http://wplusl.exblog.jp/16349452/

 実は、もともとはあまりバラの花が好きではありませんでした。私が子どもの時代、豪華絢爛な花と言えば「牡丹芍薬薔薇の花」でした。母が庭に植える花は「コスモス、水仙、都忘れ」という「清楚系」の花々。母が好きだという花は「白萩、フリージャ、るりからくさ」
(瑠璃唐草は、オオイヌノフグリの別名。在来種の「犬のふぐり」は、実が陰嚢(フグリ)の形に似ているというので名付けられ、その「犬のふぐり」に似ているので「大犬のフグリ」という小さな青い花には似つかわしくない名になったのですが、別名はきれいな瑠璃唐草ルリカラクサ。こう言うほうがかわいらしい気がします。唐草というのはここでは「唐草模様」のことではなく、「唐(外国)から来た草」という意味。オオイヌノフグリは幕末開国から明治にかけて西洋船によって運ばれた外来種だというので、びっくり。江戸の時代劇で、黄門様やらが旅する野辺にこの花があったら、おかしいということになる)。

 母がバラや牡丹などの豪華系の花を好まないのに影響され、長い間「バラを好きになるのは気恥ずかしい」と思い込んでいたのです。「ベルサイユのバラ」も、ロシアの歌の「百万本のバラ」も、物語や歌の中では楽しめるけれど、実際のバラの花は、私には文字通りの「高嶺の花=高値の花」と思っていました。

 確かに、日本での薔薇栽培の歴史を見ると、明治以後のオールドローズもモダンローズも、「お金持ちのための花」というイメージで作られ、栽培が行われてきました。「我が庭のバラ園が花盛り」なんていう描写があったら、お金持ちの家に決まっていたのです。
 明治26年、貧困生活にあえいでいた樋口一葉は、日記に「下谷龍泉寺丁の借家家賃は一ヶ月1円50銭」と記録しています。それより少し時代はあとになりますが、「興農雑誌第83号1901年(明治34)発行」には、「白天國香」という種類のバラ苗木は1本1円、新品種は1本2円、と記載されています。東京下町の一軒の家賃と一本の薔薇の苗木が同じ値段だったのです。樋口一葉には決して手の届かない花でした。

 私にとっても、「百万本のバラ」どころか「誕生日の本数のバラ」をプレゼントするさえ、「豪華優雅な贈り物」の印象がありました。
 今、切り花ならバラ一本百円。苗木も一鉢500円。値段からみると、だいぶ庶民的な花になりました。私のイメージの中で「バラ=豪華絢爛」という印象は変わらないのですが、もう「お金持ちの花だから、私らのような庶民には縁遠い」とは思わずに、見て歩ける時代になったようです。年齢の数だけバラを買うとしても、清水の舞台から飛び降りなくても買えそうです。(誕生日に年齢の数のバラの花束をプレゼントされたことなど一度たりともなかったですけど、そう遠くはない古稀祝いには自分で自分にバラの花束を贈りましょう。まっき~さんには青いバラをリクエスト。夫には、、、、、私の誕生日など覚えていない人なので、リクエストしようもない)

 白金の庭園美術館のバラを見て、5月下旬は都内薔薇めぐりをしようと決めました。
 バラを訪ねて、文京区の本郷給水所公苑、調布市の神代植物公園など都内薔薇名所をさんぽしました。
「薔薇」といえば次にくっつくことばは、私には「イコノロジー」です。絵画の見方をならった若桑みどりの著作『薔薇のイコノロジー』。25年ぶりに読み返しました。(若桑先生の『クワトロ・レガッツーノ(四人の若者)』天正少年使節を描いた方は、あまりに分厚い本なのでまだツンドクです。若桑先生、ごめんなさい)。『薔薇のイコノロジー』、やはり、すごい本です。では、薔薇のイメージをめぐらせながら、バラ散歩を楽しみましょう。

<つづく>
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2011年06月14日


ぽかぽか春庭「都電のバラ」
2011/06/14
ぽかぽか春庭十一慈悲心日記2011年6月>薔薇さんぽ(2)都電のバラ

 5月22日日曜日は、都電バラめぐりを楽しみました。
 都電の線路沿いがバラ名所になっているということを、これまで知らずにいました。都電は我が町の電車であり、大学への通学にも、子ども達を遊園地へ連れて行くにも利用した電車ですが、最近は利用することがなく、バラの新名所になっていたことを知りませんでした。沿線住民によって線路際にバラが植えられたのは、ここ数年のことのようです。
 都電の一日乗車券を買い、乗ったり降りたり、一日中都電に乗っている日曜日にしようと思い立ち、出かけました。以下、一日の記録。

 7時すぎ、出発。都電IC一日パス400円を運転手さんに申し込む。スイカカードにチャージができた。
8時15分 早稲田着。~8:45 早稲田甘泉園さんぽ。40年前もこの公園はあったのに、一度も入ったことがなかった。文学部キャンパスと本部キャンパスは離れているとは言っても、数分歩けば来られた場所にあったのに、当時は都電に乗ったこともなかったし、公園をさんぽするなどという気持ちもなかった。都内の公園を歩くくらいなら、田舎に帰って故郷の山を見たほうがよかったから。

~9:15 神田川沿い遊歩道散歩。ここも、歩いたことのなかった道。樹齢の古そうな桜並木が続いている。こんなに木が太いのだから、40年前もこんなふうに川沿いに桜並木があったのかしら、と思って案内板を読んだら、豊島区側の桜は1982年(昭和57)に整備された、という説明が書いてあった。樹齢は30年。それじゃ、私が見たことなかったのも頷ける。当時「神田川」といえば、恋人と安アパートに住む貧乏ぐらしのイメージがすべて。安アパートでもいいから恋人と住んでみたかったけど、当時「非モテ系」に徹していたからなあ。

 早稲田から三ノ輪行きの都電に乗るのは初めてのこと。鬼子母神や学習院下を通り、住宅地の間を抜けていく。
 向原から大塚まで、沿線にバラが植えられている。もう一度ここで降りるつもり。西ヶ原四丁目で降りてみたいと思ったのだけれど、今日は「バラ」の日だから、移転した大学跡地がどうなったのか、の探索は別の日にしよう。

 北区から荒川区へ入ると、都電沿線はバラの花が咲き誇っている。沿線住民のボランティア活動で、このように線路際にたくさんのバラが植えられたのだという。運転手さんの後ろの席に座れたので、両側のバラを楽しめた。
 北区の木はさくら、区の花はバラ。荒川区の木もさくら、区の花はつつじ。それなのに、北区側にはバラは一本もなかった。北区側沿線も植えるべし!
~10:30三ノ輪橋着 駅周辺にはたくさんのバラ。写真を撮っている人もたくさんいた。私も「都電とバラ」のシーンをたくさん撮った。

 三ノ輪橋の商店街を抜け、浄閑寺へ。遊女無縁仏の碑と荷風記念碑参拝。
~11:20まで、地下鉄三ノ輪駅前マックでコーヒー120円。マックのコーヒーがおかわりできるということをt******さんのカフェ日記で初めて知って、飯田橋駅前のマックで試してみたら、ほんとうにおかわりができたので、ここでも店内で一杯のみ、おかわりしてテイクアウトし、飲みながらさんぽ。ほんと、無料おかわり、いい制度だわ。

~12:00 三ノ輪橋ジョイフル商店街。古本屋で文庫3冊300円。どこに出かけても入りたい店は古本屋。商店街の中の「釜飯玄」でイナダ味噌漬け焼き定食500円。

 昼ご飯のあとも、バラ散歩つづきます。

<つづく>
05:39 コメント(1) ページのトップへ
2011年06月15日


ぽかぽか春庭「荒川遊園地のバラ」
2011/06/15
ぽかぽか春庭十一慈悲心日記2011年6月>薔薇さんぽ(3)荒川遊園地のバラ

 商店街から荒川二丁目へ。都電沿線のバラをもう一度楽しみました。
12時半から13時まで、荒川自然公園。
 幼い娘を連れ、遊びに来たことがあるけれど、娘はこの公園を覚えていないと言う。三河島水再生センターの2階屋上に土を入れ、公園にした施設だけれど、階段を上って公園内に入れば、ここが人工地盤で人工池ということも忘れるほどの豊かな緑。入り口の階段の壁際を覆っていたつるバラの前でセルフタイマーで写真を撮った。バラといっしょに自分が写るのは初めてのことかも知れない。バラの似合う婆になってきたかしら。ベルサイユの薔薇、ウルサイユの婆ら。はい、婆ギャグのおそまつ。

 13:00再び、都電沿線のバラを眺めながら、荒川遊園地へ。ここは娘も息子もよく覚えている、わが家の行楽の定番だった。なにせ、安かった。今も安い。入園料大人一人200円。遊具は100円か200円。ポニーに乗るのは昔も今も無料。
 地震と節電の影響で、乗りたかった観覧者とスカイサイクルは停止中だった。
13:30まで、園内の売店で生ビール一杯400円を買って休憩。
 園の入り口でバラ苗木の鉢を販売していた。21日のバラ祭りで販売した残りかも。遊園地入り口から都電の駅までの公園にも薔薇の花がいっぱいだった。調子にのって、セルフタイマーで「婆バラ写真」をたくさんうつす。中に一枚くらいはバラのような笑顔があるに違いない、、、、。

~14:00 大塚駅前。
~14:30 大塚駅前マックコーヒー120円。また、おかわりをもらった。フフ、無料おかわりがやみつきになったかも。向原までコーヒー片手に歩こうと思っていたのだけれど、天気予報の通りに雨が降り出した。ここでバラさんぽは中止。
~15:00 王子駅着
 5月22日の行楽費用。都電一日切符、昼ご飯、コーヒー、ビール、遊園地入場券ほか、合計2000円ほど。同額を震災復興へ寄付予定。

荒川区のホームページより
http://www.city.arakawa.tokyo.jp/kanko/miryoku/arakawasenbara.html

 家に戻ってから、バラ蘊蓄をチェック。
 バラは、野生種としては和名「うまら、うばら、いばら」として、万葉集や風土記にもその名が記載されており、「いばらぎ(茨城)」の地名のもとになった伝説が『常陸国風土記』に以下のように書かれています。(原文は変体漢文体。抄出本の写本なので異文あり)

 「或るもの曰へらく、山の佐伯(さへき)、野の佐伯、自(みづか)ら賊(あた)の長(をさ)と為(な)り、徒衆(ともがら)を引率(ひきゐ)て、国中(くぬち)を横しまに行き、大(いた)く劫(かす)め殺しき。時に黒坂命(くろさかのみこと)、此の賊(あた)を規(はか)り滅(ほろぼ)さむとて、茨(うばら)を以(も)ちて城(き)を造りき。所以(このゆゑ)に、地(くに)の名を便ち茨城(うばらき)と謂(い)ふといひき。(常陸国風土記)」
 (春庭訳)ある者が語ったことである。山の佐伯と野の佐伯は、山賊の頭となって、仲間を引き連れて国中で盗みや殺しなど悪行を働いていた。あるとき、黒坂命が、この山賊を滅ぼそうと計画を立て、茨(うばら)の刺によって柵(城)を施した。このゆえに、このあたりを茨城と言うようになった、という。

 薔薇は古代から愛好されてきた植物ですが、ヨーロッパで近代以後バラの新品種産出が盛んになりました。交配種のもとになった8種類のうち、3種類は日本に自生していた「野茨ノイバラ」「照葉野茨テリハノイバラ」「浜茄子ハマナス、浜梨ハマナシ」です。
http://www.hana300.com/noibar.html
http://had0.big.ous.ac.jp/plantsdic/angiospermae/dicotyledoneae/choripetalae/rosaceae/hamanasu/hamanasi.htm

現代は、次々に新しい品種が開発され、公募して名前を決定したり、有名人の名を冠したり。
 もっとも難しいとされた「青い薔薇」も登場しています。もっとも、私の目には青い薔薇ではなく、「青に近い青紫色」に見えます。
http://www.suntory.co.jp/company/research/hightech/blue-rose/index.html

<つづく>
05:41 コメント(1) ページのトップへ
2011年06月17日


ぽかぽか春庭「本郷給水所のバラ」
2011/06/17
ぽかぽか春庭十一慈悲心日記2011年6月>薔薇さんぽ(4)本郷給水所公苑のバラ

 5月の第4週は、仕事の帰りに寄り道をして、都内のバラ名所を見て歩くという一週間にしました。
 23日月曜日は、文京区の本郷給水所公苑を訪ねました。ここは、東京都水道局の本郷給水所の2階上部に作られた公苑です。(公苑の管理は文京区)。5月22日に行った三河島水再生センターの2階屋上が荒川区の自然公園に整備されているのと同じように、建物の2階に人工地盤を作って公苑にしているのです。荒川自然公園ほど広くありませんが、給水所公苑の半分は日本庭園、半分はバラ園にしつらえてあるので、バラの時期に訪ねれば華やかな色と香りが楽しめます。

 普段は近所のオフィスビルの人々が昼休みに休憩しに来る程度で、あまり一般の人には知られていない公苑です。バラの時期だけは大勢の人で賑わうのかと思いきや、雨の予報が出ている月曜日の夕方、バラを見るでもなく所在なさそうにベンチに座っている人が数人。カメラ三脚を持ってバラ撮影に励む人がひとり。バラのわきに全財産とともに昼寝中のホームレスさんひとり。

 通り道ならバラの花が目に入って、「あれ、こんなところにバラが咲いている」と思って立ち寄る人もいるのでしょうけれど、階段登っていく建物の2階屋上にバラ園があるとは気づかず、「知る人ぞ知る、秘密の花薗」なのかもしれません。
 しばらく一人バラ園を独占して様々な種類のバラを楽しみました。オバサンふたり組が入ってきたときには、予報通り雨がぱらついてきたので、急いで公苑を出ました。

 文京区の本郷給水所公苑お知らせページ。
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_kouen_annai_kuritukouen_kouen_hongoukyuusuijyokouen.html

 5月25日は、都内バラ新名所のひとつとして、「ビル屋上のバラ園」を訪ねました。銀座ファンケルビルの10階ロイヤルルームと屋上にバラ園をしつらえ、この時期に一般客に公開しているというので、見に行ったのです。
 ファンケルは自然食品や化粧品を扱っている会社ということで、企業イメージを高めるためのバラ園。武蔵野バラ会という団体が世話しているバラの鉢植えを屋上に並べています。

 小さなビルの屋上なので、花の数は少なかったですが、バラ作りを趣味とする人たちが丹精込めた花々、特に「盆栽仕立てのバラ」という鉢を面白く見て来ました。ジェミニという品種のバラがとてもきれいでした。
 ウーロン茶のペットボトルと紙コップがおいてあり、「ご自由にどうぞ」とあるので、一杯いただきました。「ご自由に」が好き!23日25日のバラ巡り行楽費、無料。
http://www.fancl.co.jp/fh/shopinfo/presummer10/index02.html

 バラは季語としては夏です。以下、バラの句あつめ。
・夕風や白薔薇の花皆動く (正岡子規)
・薔薇深くぴあの聞ゆる薄月夜 (正岡子規)
 子規と薔薇では、「くれないの~」の短歌が有名ですが、夜遅くどこからかひそかに聞こえてくるぴあのの音の中で聞く薔薇というのもつややかな印象です。闇も深く薔薇の色も深く、見入っている子規の心もふかくふかく静まっていきます。

 散り敷いたバラの花びらも美しい
・見るうちに薔薇たわたわと散り積もる(高浜虚子)
・薔薇散るや拾ふ子挘(むし)る子かがやかに(渡部水巴)
・散る薔薇に下り立ちて蜂吹かれけり (渡辺水巴)
・バラ散るや己がくずれし音の中(中村汀女)
・一片の薔薇散る天地旱の中 (西東三鬼)
・朝日淡し厨の土間に薔薇散りて (香西照雄)
・朝焼おそき旦薔薇は散りそめぬ (種田山頭火)

 バラを見てののち、家族への思いもさまざまに
・薔薇の辺やこたびも母を捨つるがに(石田波郷)
・バラ挿して眠る家族に嗅がせたり(秋元不死男)

 朝のバラ。夜のバラ、雨の日のバラ。
・薔薇熟れて 空は茜の 濃かりけり 山口誓子)
・日の出の薔薇呟き癖も癒えて止む(加藤楸邨)
・月いでて 薔薇のたそがれ なほつづく (水原秋桜子)
・咲き満ちて 雨夜も薔薇の 光りあり (水原秋桜子)

 バラの花を手に持てば、豊かで満ち足りた気分にもなり、半円の門に仕立てたつるバラのアーチをくぐるにも華やかであたたかい気分になります。異国情緒をかきたてられたり、ほの暗い花屋の店にいてさえ気分は高揚します。
・手の薔薇に蜂来れば我王の如し(中村草田男)
・とほるときこどものおりて薔薇の門(大野林火)
・薔薇を撰り花舗のくらきをわすれたる(橋本多佳子)
・サルタンの妃の墓に薔薇もあり (横光利一)
・一束の緋薔薇貧者の誠より (杉田久女)

 薔薇は多品種創出の中、春咲きのほか、四季咲きとなり、秋にも冬にも花を咲かせることができるようになりました。
 ついでに冬薔薇の句。
・冬枯の垣根に咲くや薔薇の花(正岡子規)
・冬薔薇の一輪風に揉まれをり(高浜虚子)
・尼僧は剪る冬のさうびをただ一輪(山口青邨)
・冬薔薇(ふゆそうび)石の天使に石の羽(中村草田男)
・夫とゐて冬薔薇に唇つけし罪(鷹羽狩行)

・わが乳腺よりほとばしる乳の色の薔薇白き(春庭)
・花びらの腐され散るや薔薇の園(春庭)
・我が罪の緋文字の如き薔薇散りぬ(春庭)

 自作の駄句はどうも景気が悪い。やはり私には薔薇が似合わない。薔薇を見に行って、「ご自由にお飲み下さい」のウーロン茶ごときに喜んでいるようでは、薔薇を楽しむ身分にはまだまだ遠いということでしょう。

<つづく>
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2011年06月18日


ぽかぽか春庭「神代植物園のバラ」
2011/06/18
ぽかぽか春庭十一慈悲心日記2011年6月>薔薇さんぽ(5)神代植物園のバラ

 5月26日夕方、神代植物園へ行きました。なんと、40年ほど昔に行ったことがあるきりで、2度目の訪問でした。
 38年前に行ったときは、友人のK子さんといっしょでした。1973年の春、花盛りのつつじや藤の花の前でいっしょに撮った若かりし日の写真が残っています。二人とも若い!そりゃそうだ、今はジャズダンスのレッスンでいっしょに「足が上がらない、ターンができない」と言っている二人ですが、40年前は若かったんです。

 園内は、何度か模様替えが行われてきたのだろうと思いますが、中のようすにまったく記憶がありません。昔もこんなに木がうっそうとしている森があったかしら、と思うのですが、残された写真のチューリップ花壇がどこだったのか、藤の花がどこに咲いていたのか、当時のことはまったくわかりませんでした。いつか、K子さんを誘って来てみよう。今回は、仕事の帰りにふらりと立ち寄ったのだし、雨の予報が出ていたので、K子さんを誘わず、残念だったので、いつの日かまた。

 入園して、まずはバラ園をめざしたのですが、その手前にある芍薬園も見事な花盛りでした。牡丹にいろいろな種類があることは各地の牡丹園を見ていましたが、芍薬にも様々な種類の花があるのだと知りました。これまで芍薬は芍薬としか知らなかった。
 で、私には牡丹と芍薬の区別がつきません。私の座っている姿が牡丹で、立っていれば芍薬とは思うのだけれど!?立っても座っても、ぼってり重い私なので、牡丹と芍薬の違いもその程度かと。

 バラ園は、ちょっと盛りを過ぎた感じですが、今回のバラ散歩で見たどこよりも広く、バラがたくさんあり、さまざまな品種のバラの色や香りを堪能しました。
 つるバラのコーナー、大輪バラのコーナーなどがあり、なかでも「オールドローズとバラ原種のコーナー」で、現在のバラの原種となった中国のコウシンバラや、日本のハマナス、テリハノイバラなどが植えられているところ、さすが植物園だと思いました。ハマナスは花がありませんでしたが、テリハノイバラはかろうじて数輪、花が咲いていました。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/teriha-noibara.html

 バラは、さまざまな園芸植物のなかでも、もっとも園芸家が腕をふるった植物のひとつです。新品種の開発に、育種家は人生を賭け、さまざまな色と香りの新しい花が開発されました。
 以前は、バラが好きではなかったと書きましたが、その理由のひとつは、子どもの頃に読んだ小説にあります。バラ育種家が、「真っ赤な血の色のバラ」を栽培するために、「若い女性の血」がもっともよい肥料だという妄想をいだき、つぎつぎと女性を殺してバラの根本に埋めていく、というホラー小説を読んだのです。なんていう作家のなんという小説だか、タイトルも忘れてしまったのだけれど、ものすごく恐ろしくて、もうバラをみる気になれないほどでした。日頃からこわがりの私が、どうしてそんなホラー話の本を手にとったのだか。「きれいなバラを咲かせる人の話」だと思って読み始めてしまったのかもしれません。
 
 白、黄色、ピンク、深紅、さまざまな色と形の薔薇、ひとつひとつネームプレートも読んだのだけれど、さて、どれがどれやら覚え切れません。園内の休憩所で、クレープとお団子を買って食べました。あはっ、やっぱり私は「花よりだんご」みたい。おだんごは「クルミ味噌だれ」のみたらしで、おいしかったです。クレープ400円おだんご300円

 神代植物園は5時に閉園になりました。深大寺のほうへ出て、山門そとの蕎麦屋で食べたいと思ったのですが、「名代深大寺生蕎麦」とか「十割そば」と看板が出ている店はみな5時に閉店してしまい、「本日は終了」の札。平日は植物園終了と共に、客もいなくなるので、それに合わせての閉店みたいです。

 門前の観光客用の広い座敷が2階にあるという店(140席)だけが開いていたので、「野草山菜てんぷらそばセット」を食べました。お値段1800円は、普段は立ち食い蕎麦派の私にしてみれば、高額!ですが、バラの美しさに酔ってという理由で大盤振る舞いしたのです。
 お味のほうは、、、たぶん私が蕎麦の味がわからない人間だからかもしれませんが、普段はもっぱらこっちばかりである立ち食い蕎麦と比べて、特別おいしいという気もしなかった。創業は文久年間という老舗らしいですが、蕎麦ファンのランキングサイトなどをみると、「俗にいう観光地にありがちな味」というCランクにもランクインしていない店だったので、ま、私が「立ち食い蕎麦と変わらない」と感じたのも、あながち舌オンチというわけでもないかも、、、、
 5月26日の行楽費、植物園入園料、クレープ、団子、蕎麦、合計3000円。

<つづく>
09:13 コメント(1) ページのトップへ
2011年06月19日


ぽかぽか春庭「薔薇のうた」
2011/06/19
ぽかぽか春庭十一慈悲心日記2011年6月>薔薇さんぽ(6)薔薇の歌

 神代植物園、6月16日にも仕事帰りの散歩をしました。薔薇巡りの次のさんぽテーマ紫陽花華菖蒲巡りで行ってみたのですが、薔薇もまだまだ咲き残っていました。5月の花盛りのころに比べると花数はぐんと少なかったのですが、遅咲きの品種や原種に近い種類はきれいに咲いていました。ハマナスは赤い花もあり、クスリとして利用されてきた丸い実をつけていました。テリハノイバラも白い素朴な花を咲かせていました。

 神代植物園の再訪、実は5月26日の深大寺蕎麦がイマイチだったので、蕎麦リベンジのために出かけたという理由もありました。昼ご飯を食べにわざわざ行ってみたのです。仕事を終えてからの昼ご飯なので3時すぎの食事になりましたが、6月16日は、植物園の深大寺出口の前にある「松葉」という店に入りました。深大寺蕎麦ランキングの上位にあった店です。10割蕎麦せいろというのを食べました950円。
 評判の店の蕎麦ですが、私にはやはり「これが最高!」という味には思えない。

 結局のところ、私にとって「母や父が蕎麦打ちした、そば粉10割でとろろをつなぎに使った家の味」が最高の蕎麦であって、それ以外のものはどれも「立ち食い蕎麦と変わらない」という味覚になっているのだろうと思います。もう二度と味わえない、母が打った蕎麦、父が打った蕎麦。母の死後蕎麦打ちをはじめた父は、知り合いから譲ってもらった蕎麦の実を自分で石臼で挽いてそば粉にするという懲りようでしたが、いつも「まだまだお母さんの味にはならない」といいながら晩年をすごしました。
 よくある「地球最後の日に食べたいものは何」という質問に、私は「母が打ったうどんと父が打った蕎麦」と答えます。

 せっかくの薔薇見物なのに、食べてばかりの春庭で申し訳なく、最後に「薔薇の歌」をご紹介しましょう。古代から現代の「薔薇族文学」まで、薔薇は文学の中に入りこみ、愛されてきました。
 近代短歌で一番有名なのは、正岡子規の歌。たいていの国語教科書に載っていました。
・くれなゐの 二尺伸びたる 薔薇の芽の 針やはらかに 春雨のふる (正岡子規)
 60センチほどに伸びた薔薇の枝。薔薇のとげもふっくらと伸び、まだ人を傷つけようとする堅い気配を見せずに春雨にぬれています。明治33年4月21日、子規はじっと茅屋の庭の薔薇に目を向けています。この半年ののち肺病が悪化、大量喀血のあとは床に横たわる日々となります。

・目を開けて つくづく見れば 薔薇の木に 薔薇が真紅に 咲いてけるかも (北原白秋)
・大きなる 紅ばらの花 ゆくりなく ぱっと真紅に ひらきけるかも (北原白秋)
・ゆくりなく 庚申薔薇の 花咲きぬ 君を忘れて 幾年か経し (北原白秋)
 コウシンバラは、薔薇の原種のひとつ。中国雲南地方の原産だそうです。神代植物園の「原種薔薇コーナー」にも植えられていました。コウシンバラは、古代にすでに日本へ入ってきており、『源氏物語』(少女、賢木)に「薔薇(さうび)」として出てくるのはこの庚申薔薇だろうと言われています。

 また、『能因本枕草子』には「草の花は」の段に「さうび」が出てきており、能因本を底本としている『日本古典文学全集』の『枕草子』には、第七十段にあります。「『広辞苑』の「薔薇」(そうび)の解説で、出典として能因本が引かれており、「①ばら、しょうび。能因本枕草子(草の花は)「さうびは近くて枝のさまなどはむつかしけれどをかし」と記載されています。しかし、私が持っている岩波文庫版の『枕草子』だと、柳原紀光自筆本を典拠にしているので、第67段の「草の花は」に出てきません。

・羽ならす蜂あたたかに見なさるる窓をうづめて咲くさうびかな(橘曙覧)
 江戸時代の和歌、野茨、木香薔薇、庚申薔薇、どれかはわかりません。橘曙覧は、窓いっぱいに咲くバラの花を見て、さぞかし「楽しい」思いになったことでしょう。

 近代短歌 女のバラ歌。
・たそがれの鼻唄よりも薔薇よりも悪事やさしく身に華やぎぬ (斎藤史)
・妹のパレットを見し夜のゆめ紅さ異る幾百の薔薇 (石川不二子)
・あやまちて切りしロザリオ転がりし玉のひとつひとつ皆薔薇 (葛原妙子)
・ためらひもなく花季となる黄薔薇何を怖れつつ吾は生き来し(尾崎左永子)

 近代短歌 男のバラ歌。
・みづからの光のごとき明るさをささげて咲けりくれなゐの薔薇 (佐藤佐太郎)
・薔薇抱いて湯に沈むときあふれたるかなしき音を人知るなゆめ (岡井隆)
・剪花の紅ばら挿せば美しかるむらがりつくれり壷いっぱいに (木下利玄)
・舞踏会みにくき母の復讐のため少年が胸にさす薔薇 (寺山修二)

 冬の薔薇も。
・寒き日に濃きくれなゐの薔薇を愛でしばらくにして昼寝ぬわれは (斎藤茂吉)
・はらはらと黄の冬ばらの崩れ去るかりそめならぬことの如くに (窪田空穂)

春庭の腰折れ歌。 
・薔薇ぞのに埋めしロザリオ若き日の罪はつみなれ許されずともよし(春庭)
 (エヘヘ、私もマリアと同じく結婚前の懐胎でしたよん)。
・防人の君の足刺す道遠く野のウマラ我が胸に刺してむ(春庭)
 (夫を防人に出した東歌の妻になった気持ちで)。
・湯に浮かべし薔薇の花びらことごとく我が肌(はだえ)より剥がれし如散る(春庭)
 (西安で見た楊貴妃風呂の主人公になった気分で、、、、)。

<おわり>

=======
もんじゃ(文蛇)の足跡:
植物としての場合は「バラ」、イメージのときは「薔薇」と用字を替えて表記したつもりなのですが、たぶん、ごちゃごちゃの表記になっているかも。
01:45 コメント(4) ページのトップへ
2011年06月21日


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