2009/12/21
ぽかぽか春庭くねんぼ日記>年末雑感・今年の百円本から(1)おひとりさまの老後
貧乏一家にようやく暖かさが!ってほどでもないけど、昨日、めでたくこの冬はじめて暖房を入れました。換気扇を取り外した穴をビニール袋でふさいで5年になる我が家、この冬は、暖房を入れずにすごす最長記録の更新です。親子して我慢大会を続けてきましたが、限界にきて息子風邪ひくし、娘はうつるし。まあ、寒い日々でした。
初暖房は12月20日朝。家にたったひとつの暖房器具であるストーブに石油をいれ、ファンヒーター運転開始。
これまでどうやって暖を求めていたかというと、食事時間以外は各自ふとんに潜って寝床読書やら寝床ゲームで自分の体温暖房という究極のエコ生活でした。でも、私、ふとんにもぐるとすぐに寝ちゃうから、家では読書時間ほとんどとれなかった。
このところの読書は、ほとんどが仕事関連に役立つと思える本や自分がレポート書いて提出するための参考書で、純粋な「お楽しみ読書」が極端に少なくなってしまった。お楽しみ読書用の本はほとんどが古本屋の百円均一本。専門書は高くても買わざるをえないけれど、お楽しみ本は百円本に限る。しかし読む時間は電車の中でとるしかないので、どうしても仕事本優先になってしまう。
仕事本といっても、自分の好きな分野の話であるから、読めばおもしろい。今年2009年に出版された本では、荒川洋平『日本語という外国語』、籾山洋介『日本語表現で学ぶ入門からの認知言語学』などおもしろく読みました。
ベストセラーというのは、出版された年にはレビューが新聞やネットにどっと出るので、おおよその内容はわかる。買うときのワタクシルール。①新刊書で買う②単行本が古本屋で半額になったら買う③文庫本になったら買う④単行本新書文庫本とも百円になったら買う、というランキングがあります。
百円本に出回るまで買うのをやめておこうと思った本、たとえば水村美苗『日本語が亡びるとき-英語の世紀の中で』2008年出版。レビューでだいたい内容がわかったし、自分には合わない論調だということもわかったので、すぐには読まなくてもいいと判断。2009年に小林秀雄賞を受賞したことによってまた売上げもあがったようですが、まだ百円均一本の中に出回ってこない。
ようやく百円本になってブックオフで買って読んだのが上野千鶴子『おひとりさまの老後』。2007年に出版されたときのレビューを見て、やはり「これは読んだら腹立つから、ほとぼりさめるまで読まんでおこう」と思ったのですが、百円均一本に出ていたので電車の中で読んでみましたが、レビューどおりでした。
ネットレビューのコピー
「シングルの老後についてのノウハウ本。といっても、「カネがそこそこあって、かつ友達がたくさんいる人」の話しか出てきません。きっと著者は、カネがなかったり友達がいない人は自己責任なので淋しく死になさい、という考えなのでしょう。
「やはり一部の成功した人、恵まれている人の立場で書かれたものだと思います。上野先生には期待して読ませていただいたのですが、もっと庶民の目線で書いていただきたかった。読んでいて無神経さが目に付き、とても疲れてしまいました。人間はそんなに強くない。順調な時ばかりではない。今、心身ともに元気な人には参考になると思います」
上野千鶴子に言われんでも、老後に「ある程度の金は必要」とか「困ったときに手をさしのべてくれるような友達がいること」とか、わかっているっつうの。
わかっているけど、現在心身弱っている高齢者予備軍にとっては、今の自分の境遇は、「若い頃は子育てや日銭かせぎにせいいっぱいで、友達を作る余裕すらなかった」「生活保護より低い金額の年金しか得られないことがわかっている」という現実の前に、心なえるばかり。
明日をも知れぬ爪に火ともす暮らしを続けているのに、「老後には年金にプラスするお金が必要、個人年金を加えよう」とか「○○さんは、生命保険を個人年金に仕立て直して一ヶ月100万円の年金を得ている」というような話ばかり並んでいると、「明日は公園の片隅で暮らす覚悟」を固めて年末すごす層の人間には、ウソ寒くなるって部分もありました。「友人をふやそう」という例でも、東大教授上野先生は「別荘に友達を集めてパーテイをする」という交流を楽しんでおられるよし。ゴミ屋敷のような2DKに母子片寄せ合って暮らしている我が家からみると、ため息が出ます。と、年末恒例愚痴特集にちょうどいい『おひとりさまの老後』でした。
<つづく>
04:07 コメント(2) ページのトップへ
2009年12月22日
ぽかぽか春庭「平安朝の生活と文学を読む平成の生活と文学」
2009/12/22
ぽかぽか春庭くねんぼ日記>年末雑感今年の百円本から(2)平安朝の生活と文学を読む平成の生活と文学
『おひとりさまの老後』は、友人のミサイルママにあげました。ミサイルママは、離婚後女手ひとつで息子ふたりを育て上げ、次男君は大学卒業後家を出て自立していますが、長男くんはアルバイトしながら演劇活動を続けており同居中。「パラサイト息子をかかえて、細々働く母親」仲間です。
いずれ一人暮らしで老後を過ごすことになるだろうと思っている人なので、一応参考のために本を回しましたが、彼女も読んだらため息ついて「こんなに余裕あるんなら、老後の心配なんぞすることないよ」と思うんじゃないかな。「老後も続けられる趣味を持て」という御教訓の部では、彼女はすでに、ジャズダンス、合唱団、独行山登りという趣味を持っているし。
1400円だして新刊書買ったなら、「ミサイルママとランチでもしたほうがよかった」って気にもなるけれど、100円ならね。読んで得るところもあったのだし、わびしい思いをつのらせることもないか。恵まれた老後をおくる人もいれば、うらぶれた暮らしを今のまま続ける私もいるってことで。
百円本、碩学のこのような貴重な作品をたった100円で買って申し訳ないと思いながら読むこともあります。池田亀鑑『平安朝の生活と文学』角川文庫。初出は1952年。文庫化されたのが1964年で、私が買ったのは1987年の第33版。息長く読まれてきた平安文学の理解を助ける平安朝の生活について書かれています。
橋本治『源氏供養・上巻』。下巻は100円の書棚にはなかった。それで、ついでに『平安朝の生活と文学』を買ったのです。源氏供養も平安朝の生活と文学も、仕事とは直接関わらないお楽しみ読書として、おもしろく読みました。直接仕事には関わらないと言っても、日本語教師は留学生にとって日本の文化の窓口ですから、どんなことであれ読んでおいて損はない。
加藤周一『日本人とは何か』、澤瀉久敬『「自分で考える」ということ』など、100円で買っちゃってすみませんねぇと思いながら読ませていただきました。
村瀬学『恐怖とは何か』なども、100円でなければ、手に取ることはなかったであろう専門外分野の本。身体感覚、安全からはずれることの恐怖などについて、まとめてありました。
おひとりさまで老後をすごすというとき、「もっとも安上がりな趣味」は、百円本読書だろうと思います。脳の老化防止に最適。本を読むのが楽しいと思えるとお得です。
自転車で10分のところに快適な図書館もあるし、古本屋もあるし、お金はなくともまあまあ楽しい「おひとりさまの老後」を過ごせそうでよかったと思います。
上野千鶴子は「老後退屈しない暮らし」には、「そこそこのお金と友人のネットワーク」が必要と書いていますが、私はなんとかして「お金も友達も少ないけれど、楽しい老後」をめざします。
東京都の老人交通パスがもらえるようになったら、「老人パスでめぐる文学歴史散歩」なんかもして、写真をネットにUPする楽しみ方もできそうだし、BS放送などやTutayaが始めた100円レンタルDVDなんか利用すれば映画もいろいろ楽しめそうだし、「退屈死に」はしないでしょう。
今のところ、映画は「映画パスポート」というのを借りられて、タダで見ています。
今年見た映画、日本映画では西川美和『ディア・ドクター』2009、役所広司『ガマの油』 2008、滝田洋二郎『おくりびと』2008など。今年封切りではなく、去年公開の映画が多いのは、ロードショウ館ではなく、二番館の飯田橋ギンレイホールで見ることが多いから。夫から「会社の福利厚生用」の映画カードを借りてタダで見る。なけなしの生活費を会社運転資金に貸し出した分の利子にもならんとは思うけれどね。
<つづく>
ぽかぽか春庭くねんぼ日記>年末雑感・今年の百円本から(1)おひとりさまの老後
貧乏一家にようやく暖かさが!ってほどでもないけど、昨日、めでたくこの冬はじめて暖房を入れました。換気扇を取り外した穴をビニール袋でふさいで5年になる我が家、この冬は、暖房を入れずにすごす最長記録の更新です。親子して我慢大会を続けてきましたが、限界にきて息子風邪ひくし、娘はうつるし。まあ、寒い日々でした。
初暖房は12月20日朝。家にたったひとつの暖房器具であるストーブに石油をいれ、ファンヒーター運転開始。
これまでどうやって暖を求めていたかというと、食事時間以外は各自ふとんに潜って寝床読書やら寝床ゲームで自分の体温暖房という究極のエコ生活でした。でも、私、ふとんにもぐるとすぐに寝ちゃうから、家では読書時間ほとんどとれなかった。
このところの読書は、ほとんどが仕事関連に役立つと思える本や自分がレポート書いて提出するための参考書で、純粋な「お楽しみ読書」が極端に少なくなってしまった。お楽しみ読書用の本はほとんどが古本屋の百円均一本。専門書は高くても買わざるをえないけれど、お楽しみ本は百円本に限る。しかし読む時間は電車の中でとるしかないので、どうしても仕事本優先になってしまう。
仕事本といっても、自分の好きな分野の話であるから、読めばおもしろい。今年2009年に出版された本では、荒川洋平『日本語という外国語』、籾山洋介『日本語表現で学ぶ入門からの認知言語学』などおもしろく読みました。
ベストセラーというのは、出版された年にはレビューが新聞やネットにどっと出るので、おおよその内容はわかる。買うときのワタクシルール。①新刊書で買う②単行本が古本屋で半額になったら買う③文庫本になったら買う④単行本新書文庫本とも百円になったら買う、というランキングがあります。
百円本に出回るまで買うのをやめておこうと思った本、たとえば水村美苗『日本語が亡びるとき-英語の世紀の中で』2008年出版。レビューでだいたい内容がわかったし、自分には合わない論調だということもわかったので、すぐには読まなくてもいいと判断。2009年に小林秀雄賞を受賞したことによってまた売上げもあがったようですが、まだ百円均一本の中に出回ってこない。
ようやく百円本になってブックオフで買って読んだのが上野千鶴子『おひとりさまの老後』。2007年に出版されたときのレビューを見て、やはり「これは読んだら腹立つから、ほとぼりさめるまで読まんでおこう」と思ったのですが、百円均一本に出ていたので電車の中で読んでみましたが、レビューどおりでした。
ネットレビューのコピー
「シングルの老後についてのノウハウ本。といっても、「カネがそこそこあって、かつ友達がたくさんいる人」の話しか出てきません。きっと著者は、カネがなかったり友達がいない人は自己責任なので淋しく死になさい、という考えなのでしょう。
「やはり一部の成功した人、恵まれている人の立場で書かれたものだと思います。上野先生には期待して読ませていただいたのですが、もっと庶民の目線で書いていただきたかった。読んでいて無神経さが目に付き、とても疲れてしまいました。人間はそんなに強くない。順調な時ばかりではない。今、心身ともに元気な人には参考になると思います」
上野千鶴子に言われんでも、老後に「ある程度の金は必要」とか「困ったときに手をさしのべてくれるような友達がいること」とか、わかっているっつうの。
わかっているけど、現在心身弱っている高齢者予備軍にとっては、今の自分の境遇は、「若い頃は子育てや日銭かせぎにせいいっぱいで、友達を作る余裕すらなかった」「生活保護より低い金額の年金しか得られないことがわかっている」という現実の前に、心なえるばかり。
明日をも知れぬ爪に火ともす暮らしを続けているのに、「老後には年金にプラスするお金が必要、個人年金を加えよう」とか「○○さんは、生命保険を個人年金に仕立て直して一ヶ月100万円の年金を得ている」というような話ばかり並んでいると、「明日は公園の片隅で暮らす覚悟」を固めて年末すごす層の人間には、ウソ寒くなるって部分もありました。「友人をふやそう」という例でも、東大教授上野先生は「別荘に友達を集めてパーテイをする」という交流を楽しんでおられるよし。ゴミ屋敷のような2DKに母子片寄せ合って暮らしている我が家からみると、ため息が出ます。と、年末恒例愚痴特集にちょうどいい『おひとりさまの老後』でした。
<つづく>
04:07 コメント(2) ページのトップへ
2009年12月22日
ぽかぽか春庭「平安朝の生活と文学を読む平成の生活と文学」
2009/12/22
ぽかぽか春庭くねんぼ日記>年末雑感今年の百円本から(2)平安朝の生活と文学を読む平成の生活と文学
『おひとりさまの老後』は、友人のミサイルママにあげました。ミサイルママは、離婚後女手ひとつで息子ふたりを育て上げ、次男君は大学卒業後家を出て自立していますが、長男くんはアルバイトしながら演劇活動を続けており同居中。「パラサイト息子をかかえて、細々働く母親」仲間です。
いずれ一人暮らしで老後を過ごすことになるだろうと思っている人なので、一応参考のために本を回しましたが、彼女も読んだらため息ついて「こんなに余裕あるんなら、老後の心配なんぞすることないよ」と思うんじゃないかな。「老後も続けられる趣味を持て」という御教訓の部では、彼女はすでに、ジャズダンス、合唱団、独行山登りという趣味を持っているし。
1400円だして新刊書買ったなら、「ミサイルママとランチでもしたほうがよかった」って気にもなるけれど、100円ならね。読んで得るところもあったのだし、わびしい思いをつのらせることもないか。恵まれた老後をおくる人もいれば、うらぶれた暮らしを今のまま続ける私もいるってことで。
百円本、碩学のこのような貴重な作品をたった100円で買って申し訳ないと思いながら読むこともあります。池田亀鑑『平安朝の生活と文学』角川文庫。初出は1952年。文庫化されたのが1964年で、私が買ったのは1987年の第33版。息長く読まれてきた平安文学の理解を助ける平安朝の生活について書かれています。
橋本治『源氏供養・上巻』。下巻は100円の書棚にはなかった。それで、ついでに『平安朝の生活と文学』を買ったのです。源氏供養も平安朝の生活と文学も、仕事とは直接関わらないお楽しみ読書として、おもしろく読みました。直接仕事には関わらないと言っても、日本語教師は留学生にとって日本の文化の窓口ですから、どんなことであれ読んでおいて損はない。
加藤周一『日本人とは何か』、澤瀉久敬『「自分で考える」ということ』など、100円で買っちゃってすみませんねぇと思いながら読ませていただきました。
村瀬学『恐怖とは何か』なども、100円でなければ、手に取ることはなかったであろう専門外分野の本。身体感覚、安全からはずれることの恐怖などについて、まとめてありました。
おひとりさまで老後をすごすというとき、「もっとも安上がりな趣味」は、百円本読書だろうと思います。脳の老化防止に最適。本を読むのが楽しいと思えるとお得です。
自転車で10分のところに快適な図書館もあるし、古本屋もあるし、お金はなくともまあまあ楽しい「おひとりさまの老後」を過ごせそうでよかったと思います。
上野千鶴子は「老後退屈しない暮らし」には、「そこそこのお金と友人のネットワーク」が必要と書いていますが、私はなんとかして「お金も友達も少ないけれど、楽しい老後」をめざします。
東京都の老人交通パスがもらえるようになったら、「老人パスでめぐる文学歴史散歩」なんかもして、写真をネットにUPする楽しみ方もできそうだし、BS放送などやTutayaが始めた100円レンタルDVDなんか利用すれば映画もいろいろ楽しめそうだし、「退屈死に」はしないでしょう。
今のところ、映画は「映画パスポート」というのを借りられて、タダで見ています。
今年見た映画、日本映画では西川美和『ディア・ドクター』2009、役所広司『ガマの油』 2008、滝田洋二郎『おくりびと』2008など。今年封切りではなく、去年公開の映画が多いのは、ロードショウ館ではなく、二番館の飯田橋ギンレイホールで見ることが多いから。夫から「会社の福利厚生用」の映画カードを借りてタダで見る。なけなしの生活費を会社運転資金に貸し出した分の利子にもならんとは思うけれどね。
<つづく>