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ぽかぽか春庭「私はまだ生きている I am still alive.」

2016-12-28 00:00:01 | エッセイ、コラム
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2016十六夜さまよい日記(2)私はまだ生きている I am still alive.

 河原温の「I am still alive」シリーズ、「I got up ○○am.」シリーズを見たのは、東京都現代美術館でだったと思います。近代美術館だったかもしれません。記憶あやふやなのは、いつものことです。
 河原温は、ニューヨークに暮らした現代美術家。2014年に没したのはわかっているけれど、生年さえ1932年説と1933年説があるくらい、私生活については謎に包まれたままの人でした。

 渡米後の作品は「概念芸術 コンセプチュアルアート」と呼ばれるもので、時間と存在がテーマらしい。
 河原が出かけた世界各地から「私はまだ生きているI am still alive.」と書かれた電報を送るシリーズ。その電報紙を並べて展示。

 毎日、友人ふたりに当てて絵ハガキに「私は○○時に起きた」と、起きた時間だけをゴムスタンプで記入して送るシリーズ。絵はがきは、そのとき河原がいた場所で買い求めたもの。ニューヨークが一番多いけれど、パリもあるしストックホルムからもあります。太平洋上、クイーンエリザベス号から、という絵はがきも。
 1968年から毎日、特定の2人の人物に送られた絵葉書、住所などはゴム印でおされています。1979年にこのゴム印が入ったカバンが盗まれてしまい、シリーズは終了。

 11年間に送られた絵はがきの一部を展示するとこうなる。(画像借り物。於グッゲンハイム美術館)
 レゲエヘアのにいちゃんは、ハガキの絵の側を、裏側の3人は文字側を見ています。


 2011年3月。地震が収まっても揺れを感じ続けて不安定な心理になった春庭。報道などでこの「揺れ続ける」のは「地震酔い」というもので、多くの人にこの「後揺れ症候群」が現れたことを知りました。自分を落ち着かせるために始めたのが、河原温の絵はがきのまねっこです。
 自分が「まだ生きている」ことを直接ハガキで知らせていく、という「コンセプチュアルアート」のマネ。自分自身の「生きている感」を取り戻すためのものでした。ハガキを受け取ってもらう相手は、友人の青い鳥さんにお願いしました。

 河原温の絵はがきシリーズは毎日ふたりの友人に出していましたが、春庭発青い鳥受取人の絵ハガキは、3日に1度、1ヶ月に10枚と決めました。河原温と異なるところは、毎回の絵はがきに毎回異なる話題の200~300字くらいの文章を書き込むところ。

 2011年4月にNo.1から始めて、2016年12月で690枚。最初の頃は「目標は千枚」と言っていたのですが、美術館などに行くと「青い鳥さんに、どの絵はがき送ろうか」と、選んで買うのも楽しみになったし、美術館においてある展覧会案内チラシの絵や雑誌のグラビア写真などで絵はがきを作ることも心のリハビリのひとつになり。すでに絵はがきのストックは1500枚分たまっていて、12年後の申年の分まであるのです。

 ブログは、娘息子に「母はこんなことを感じながら生きてきた」という遺言のつもりで2003年から書き始めて、ほぼ毎日、一日に40字×40行3ページほど書き続けてきました。駄文ながら続けることが大事と思って書き連ねてきたのに、今年初めて「数ヶ月の休載」となりました。第2の地震酔いかもしれず、気持ちの余裕がなくなったのです。

 しかし、絵はがきは途絶えず書き続けました。毎月10枚、近況報告やら季節だより、絵はがきの絵の解説など。青い鳥さんに「受け取り拒否」なんてされないよう、さまざまな話題を選びました。

 受け取り拒否せず、私の勝手な送付絵はがきを受け取ってくださる青い鳥さんに感謝です。私は生来の悪筆で、読みにくい文字を書きます。ワープロという近代文明のたまものに出会って狂喜乱舞したくらいです。それでも絵はがきは手書きを続けています。読みにくい文字を読んでくださり、青い鳥さん、ありがとうございます。
 来年も絵はがきを受け取ってください。
 私の「まだ生きています」が続けられますように。

 そして、河原温が絵はがきの受取手をふたりにしていたのにならい、2017年からは絵はがきの宛先を青い鳥さんと、もうひとり、「このブログを読んでくださるあなた」にして、送ろうを思います。私の「まだ生きています」を受け取ってください。
 月に10回ほどの更新になる予定です。

 <おわり>
コメント (2)
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