20201230
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>再録アストリッド
なぜか、「アストリッド」についてUPした記事が、画像のみ反映されていて記事がよめなくなっています。なんど再アップしても同じなので、ここに再録しておきます。
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20201124
ぽかぽか春4シネマパラダイス>2020虹のかなたに(3)アストリッド
2019年の映画『アストリッド(原題Unga Astlid)』を邦題『リンドグレーン』にしてしまったのは、売るためには仕方がなかったとは思います。『長靴下のピッピ』の作者がリンドグレーンだということをかすかに記憶している読者でも、彼女のファーストネームがアストリッドだということまで覚えているのはかなりコアなファンだろうから。
「アストリッド」というタイトルだと、映画見ようかという層は限られるけれど、リンドグレーンなら「カッレ君」ファンも「ロッタちゃん」ファンも「あ、子供のころ読んだあの作家か」と興味を持つかもしれない。
世界中から届いたファンレターを、晩年の彼女(93歳の長命の作家でした)が読んでいる姿から映画は始まります。彼女の紡ぎだした物語に夢中になった子供たちが「どうして子供の心がわかるのですか。あなたが子供だったのはずっと昔のことなのに」と、無邪気な質問を寄せます。
この映画は、一人の少女アストリッドが「リンドグレーン」という筆名を持つまでの話です。邦題をつけるなら「アストリッドがリンドグレーンになるまで」というほうが的確だったかも。
アストリッドがリンドグレーンになるまでもいろいろ修羅場があったのですけれど、それはまた別のお話。(妻子あるリンドグレーンとアストリッドの恋愛)
文才を見込まれ、新聞社の助手に採用されたアストリッド。友達の父親である社主と恋愛関係になりますが、離婚をしぶる妻ともめているうち、アストリッドは離婚成立前に妊娠。アストリッドは出産を決意します。
厳しいキリスト教社会の中で、シングルマザーとして生きるには、大きな試練がありました。アストリッドが働いて子供の養育にかかる費用を稼ぐには、息子を里子に出し、養母に養育を託さなければなりませんでした。
社主かがようやく離婚を法的にクリアし、アストリッドに「やっと結婚できる。子供を引き取っていっしょに暮らそう。これからは仕事をやめて家庭のなかだけでくらせるよ」と言ったとき、アストリッドは求婚を拒絶します。社主は古い女性感をアストリッドに押し付けるだけで、自立して生きようとする女性を認めない男でありアストリッドを少しも理解していない男だったのです。アストリッドは社主と分かれシングルマザーを続けます。
息子はたまに顔を見に来る生みの親より、毎日いっしょに暮らす養母に懐いています。
しかしデンマークで里子の世話を続けてきた養母は病気になり、アストリッドは5歳になった息子を引き取っていっしょに暮らすことにしました。しかし息子は養母を慕って泣きます。
デンマーク語とスエーデン語の違いという壁もありました。
デンマーク語とスエーデン語の違いは博多弁と青森弁くらいで同じ仲間の言語ですが、こどもには違和感があったでしょう。やっと会えた母親と言葉が通じないこともあるとつらかったでしょう。
しかし、アストリッドの家族とも次第に打ち解け、アストリッドは出版社の校正係として働き続けます。上司のリンドバーグ氏がシングルマザーのアストリッドに親切にしてくれるのが救いです。
映画は、アストリッドがたくましくも愛らしいキャラクターの子供たちを描き出した背後には、彼女の苦あり涙ありの人生模様があってのことだ、ということを描き出していました。
平穏無事な一生で、泣くことなど一度もない幸福な人生を送ったという女性作家もいたのかもしれませんが、ムーミンのトーベ・ヤンソンにしても、ピッピのアストリッド・リングレーンにしても、北欧の女性作家、強い意志を持って自分の道を切り開いていった生き方、いいなと思います。
もう一人、北欧女性作家は「ニルスの不思議な旅」)のスウェーデン女性作家セルマ・ラーゲルレーヴ(1858-1940)がいます。スウェーデン最初のノーベル文学賞受賞者あるラーゲルレーブは、女性解放論者でもありました。
女性の地位は参政権や男女機会均等法など法的には100年前150年前とは格段の違いがありますが、セクハラ問題やら夫婦別姓問題やらまだまだ日本の女性たちが抱えている問題は大きい。
「オールドミスを主人公にしたら、だれもそんな小説を読まない」と出版社に説得されて妥協し、ルイザ・メイ・オルコットは、自分自身は生涯独身であったのにもかかわらず、自らの自伝小説でもある『Little Women』では、3人の姉妹はそれぞれ結婚するストーリーしました。
現代ではオルコットのような妥協なんて昔話かと思いきや、ある女性作家のことばに「新人賞をとるためには、審査員が男性ある以上、彼らの価値観に沿った女性像を描かなければ、読んでももらえない。まず、下読みする雑誌社の男性社員の価値観に沿い、最終候補作を読む男性審査員に嫌われないように書かないと」と語っていたのを読んだことがありました。
リンドバークやトーベ・ヤンソンが果敢に自らの人生を切り開き、文学を豊かにしていったあとを、私たちは受け継いでいけるのでしょうか。
監督・脚本:ペアニレ・フィシャー・クリステンセン
製作:マリア・ダリン アンナ・アントニー ラーシュ・G・リンドストロム
製作総指揮:ヘンリク・ツェイン
アストリッド:アルバ・アウグスト、
マリア・ボネヴィー、
マグヌス・クレッペル、
ヘンリク・ラファエルセン、
トリーネ・ディアホム
スエーデンの映画、なじみのない俳優さんばかりでしたが、とてもいい演技でいい映画でした。
<つづく>
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>再録アストリッド
なぜか、「アストリッド」についてUPした記事が、画像のみ反映されていて記事がよめなくなっています。なんど再アップしても同じなので、ここに再録しておきます。
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20201124
ぽかぽか春4シネマパラダイス>2020虹のかなたに(3)アストリッド
2019年の映画『アストリッド(原題Unga Astlid)』を邦題『リンドグレーン』にしてしまったのは、売るためには仕方がなかったとは思います。『長靴下のピッピ』の作者がリンドグレーンだということをかすかに記憶している読者でも、彼女のファーストネームがアストリッドだということまで覚えているのはかなりコアなファンだろうから。
「アストリッド」というタイトルだと、映画見ようかという層は限られるけれど、リンドグレーンなら「カッレ君」ファンも「ロッタちゃん」ファンも「あ、子供のころ読んだあの作家か」と興味を持つかもしれない。
世界中から届いたファンレターを、晩年の彼女(93歳の長命の作家でした)が読んでいる姿から映画は始まります。彼女の紡ぎだした物語に夢中になった子供たちが「どうして子供の心がわかるのですか。あなたが子供だったのはずっと昔のことなのに」と、無邪気な質問を寄せます。
この映画は、一人の少女アストリッドが「リンドグレーン」という筆名を持つまでの話です。邦題をつけるなら「アストリッドがリンドグレーンになるまで」というほうが的確だったかも。
アストリッドがリンドグレーンになるまでもいろいろ修羅場があったのですけれど、それはまた別のお話。(妻子あるリンドグレーンとアストリッドの恋愛)
文才を見込まれ、新聞社の助手に採用されたアストリッド。友達の父親である社主と恋愛関係になりますが、離婚をしぶる妻ともめているうち、アストリッドは離婚成立前に妊娠。アストリッドは出産を決意します。
厳しいキリスト教社会の中で、シングルマザーとして生きるには、大きな試練がありました。アストリッドが働いて子供の養育にかかる費用を稼ぐには、息子を里子に出し、養母に養育を託さなければなりませんでした。
社主かがようやく離婚を法的にクリアし、アストリッドに「やっと結婚できる。子供を引き取っていっしょに暮らそう。これからは仕事をやめて家庭のなかだけでくらせるよ」と言ったとき、アストリッドは求婚を拒絶します。社主は古い女性感をアストリッドに押し付けるだけで、自立して生きようとする女性を認めない男でありアストリッドを少しも理解していない男だったのです。アストリッドは社主と分かれシングルマザーを続けます。
息子はたまに顔を見に来る生みの親より、毎日いっしょに暮らす養母に懐いています。
しかしデンマークで里子の世話を続けてきた養母は病気になり、アストリッドは5歳になった息子を引き取っていっしょに暮らすことにしました。しかし息子は養母を慕って泣きます。
デンマーク語とスエーデン語の違いという壁もありました。
デンマーク語とスエーデン語の違いは博多弁と青森弁くらいで同じ仲間の言語ですが、こどもには違和感があったでしょう。やっと会えた母親と言葉が通じないこともあるとつらかったでしょう。
しかし、アストリッドの家族とも次第に打ち解け、アストリッドは出版社の校正係として働き続けます。上司のリンドバーグ氏がシングルマザーのアストリッドに親切にしてくれるのが救いです。
映画は、アストリッドがたくましくも愛らしいキャラクターの子供たちを描き出した背後には、彼女の苦あり涙ありの人生模様があってのことだ、ということを描き出していました。
平穏無事な一生で、泣くことなど一度もない幸福な人生を送ったという女性作家もいたのかもしれませんが、ムーミンのトーベ・ヤンソンにしても、ピッピのアストリッド・リングレーンにしても、北欧の女性作家、強い意志を持って自分の道を切り開いていった生き方、いいなと思います。
もう一人、北欧女性作家は「ニルスの不思議な旅」)のスウェーデン女性作家セルマ・ラーゲルレーヴ(1858-1940)がいます。スウェーデン最初のノーベル文学賞受賞者あるラーゲルレーブは、女性解放論者でもありました。
女性の地位は参政権や男女機会均等法など法的には100年前150年前とは格段の違いがありますが、セクハラ問題やら夫婦別姓問題やらまだまだ日本の女性たちが抱えている問題は大きい。
「オールドミスを主人公にしたら、だれもそんな小説を読まない」と出版社に説得されて妥協し、ルイザ・メイ・オルコットは、自分自身は生涯独身であったのにもかかわらず、自らの自伝小説でもある『Little Women』では、3人の姉妹はそれぞれ結婚するストーリーしました。
現代ではオルコットのような妥協なんて昔話かと思いきや、ある女性作家のことばに「新人賞をとるためには、審査員が男性ある以上、彼らの価値観に沿った女性像を描かなければ、読んでももらえない。まず、下読みする雑誌社の男性社員の価値観に沿い、最終候補作を読む男性審査員に嫌われないように書かないと」と語っていたのを読んだことがありました。
リンドバークやトーベ・ヤンソンが果敢に自らの人生を切り開き、文学を豊かにしていったあとを、私たちは受け継いでいけるのでしょうか。
監督・脚本:ペアニレ・フィシャー・クリステンセン
製作:マリア・ダリン アンナ・アントニー ラーシュ・G・リンドストロム
製作総指揮:ヘンリク・ツェイン
アストリッド:アルバ・アウグスト、
マリア・ボネヴィー、
マグヌス・クレッペル、
ヘンリク・ラファエルセン、
トリーネ・ディアホム
スエーデンの映画、なじみのない俳優さんばかりでしたが、とてもいい演技でいい映画でした。
<つづく>