KUMIの句日記

写真と一日一句で綴るブログ。句の転載を禁じます。

生涯消えぬ?職業意識

2021年06月04日 | 俳句
天気 雨

かなりの雨になって梅雨入りかも・・という私の体調。でも梅雨入りはせず、大雨も今日だけで終わるらしい。
写真は昨日の梔子の花。香りが先にくる花、昨日も誰も居ない道をマスク外していたので、どこに咲いているのだろう?と見まわしてしまった。雨の前後にはとくに香が強まるようだ。

どこにも行かなくても、ここに住んでいると書くことのネタには困らない。何しろ、毎日、認知症の方の観察だけでも飽きることがない(失礼!)
最近思うのは、認知機能がどんなに落ちても、かつての職業は身についたままになっているらしい・・ということ。
何とか自力歩行はしていて食事も自分で摂れるが、1分前の「過去」も忘れてしまう、という女性が居る。
食事が運ばれてくると
「食べてもいいの、お金持ってこなかった」
「まとめて前払いしてありますよ、〇〇さん、忘れたのかもしれないけど」
「そうなの、忘れた・・これ、どうやって食べるの」
介護士さんが「ここにお箸があります、これが味噌汁で、これがご飯・・」
「解った解った。大丈夫」
箸を持つと、自分のすべきこと、を思い出すらしく。日本語と箸の使い方は忘れないようだ。以前、彼女の部屋のある3階へ行ったとき、介護士さんに「平家物語」を教えていた。「・・沙羅双樹の花の色・・」なんて昔のことは覚えているのだ。
彼女は、高校の教師だったそうで。近いテーブルで食事しているが「ありがとう」を言うのは聞いたことがない。介護士を自分の教え子と思っているらしく「〇〇してちょうだい」「はい」介護士さんたちも慣れたもの。厳格な先生だったに違いない。背筋はピンと伸びていて、食べる姿勢もとても良い。この威厳、たいしたものです。

やはり「1分前の過去」も忘れる元社長が居る。彼女よりも歩行は自力で出来るのが困る。食事をやたら早く食べ終わる。薬を飲ませてもらい、普通なら介護士さんが部屋へ連れて帰るのだが・・待てない。
食事介助の必要な人が何人も居るから、彼だけに付いている訳にもいかず。ちょっと目を離すと、一人でエレベーターに乗ってしまう。とにかく、自分が3階から下りてきたのを忘れているので、一緒に乗る人が居ないと私の部屋のある最上階の4階へ来てしまう。廊下をウロウロ、自分の部屋を捜しまわり、やたらとドアを開けようとする。
他の人よりも早く食べ終わる私は、何十回も彼を3階まで連れ戻した。人手不足の最近はその回数が増えてきた。悪い人ではないし、私は厭ではないが、ほおっておいたら施錠していない人の部屋へ入り込むかもしれない・・トイレが近い人なのでちょっと困る。彼の認知症を理解していない人とトラブルになるのは必須だ。
食べるのが早いのは「現場では早飯じゃなきゃダメなんだよ」小さな建設会社の社長だったらしい。「喰ったら歯ぁ磨いてすぐに寝る。明日の現場は早ぇんだよ」歯ブラシをポケットに入れていることがある。時々、まだ仕事をしているつもりになっている。「今日の飯場の見回りしなきゃ」なんて言ったり。
この人も「財布忘れちまったよ」と食事の前に言うことがある。介護士さん、
「つけとくから大丈夫よ」
会社のツケにすれば安心するらしい。もう、言ったことは1分後には忘れているし。

人ごとではない、自分もいつか・・と思いながら、そっと観察しているだけ。まだまだ、そんな話は尽きない。家族が居るとしたら、どんなに苦労したことだろう・・と思ってしまう。

角曲がる梔子の香にいざなはれ  KUMI
コメント (4)
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