少し前、カルタ・歴史資料館に勤務していた時、カルタの成り立ちに疑念を持って調べ始め、5年の契約が切れて辞めるのを機に纏めて報告(卒論みたい)した、それが ちょっと物議をかもしたことは以前書いた。 それで済んだつもりでいたけれど、あちこちに配ったのを目にしたある教授から「もっと調べよ」というお話で、その大学の図書館を使っていいとまで申し出があった。そうなるとわが方もやらざるを得ないではないか。一旦もういいや、と思ったことでもあって以前の様な馬力ではできないが、再度挑戦ということになりました。そこでとりあえず十冊ばかり目を通したのだけれど、隔靴掻痒というところ、こちらの目指すことについてはどれも触れておらず、探索の方向転換する必要が出たという状況になった。ところでその見直しの中で、「なんじゃこれは?!」という発見アリ。壽岳文章「日本の紙」吉川弘文館、の中に「柳河藩(佐賀県)などでは、藩主の為にいわゆる「お留紙」を調進する紙漉工が存在し、特殊な権益を与えられて抄紙に専念したために、云々」とあった。さっそく柳川古文書館に問い合わせると、「当方にはそのような記録はありません」という返事。そもそも立花家内向きの資料がほとんどで、藩の経済・経営資料は殆んど無いそうであるが、では壽岳氏は何を根拠に書いたのか。まず柳川藩を佐賀県と書いているところから怪しい。もっとも、今でも大牟田を熊本県と思っている人がいるので、中央で生活している人にとっては肥前も筑後も区別がつかないのはわからないではないが。 佐賀には名尾紙があって、鍋島藩の御用達であったことは知れている。これと混同しているか? 以前この本は見たはずなのだけれど、その時は気が付かなかったという小生も相当にドジな話ではある。しかし書いたご本人はもういないので根拠の確かめようはない。有名な学者の壽岳氏、そして天下の吉川弘文館の刊行物である。重版もあって相当多くの人がこれまでに目を通しているはずなのにこの間違い。小生のカルタの考察には、福岡県百科事典の記事で正倉院御物の九州産の紙についての記述に根拠が示されてなく今となっては確かめようがないことを書いている。 「すべての権威を疑え」という事例は結構そこいらにある物だと心しなければいけない。ついでにこれまでの 経験を言えば、いくつも出版物の「間違い」を指摘してきた。一番大きいのは岩波書店の沖縄写真集である。なかの写真に「裏焼き」を見つけ、第二版でもあったので、訂正すべきではないかとハガキで知らせたのだが、数日後編集者から電話があって、「お前はいったい何者で、この指摘はどんな根拠で、何を目的にこんなことを言ってくるのか」と自分の本のことはまず触れずにのっけからけんか腰の言いよう。詳しくは別の機会に譲るけど、岩波・朝日・NHK・電通といったところは、記者や電通マンは自分が偉いと思いこんでいて、とても尋常の対応は望めない。間違いどころか意見を言ってもてんで相手にしようとしないし高圧的開き直りという場面・ひとが多い。その彼らが世の中を引っ張っているのですからねえ。けっして彼らの「常識・権威」を信用してはいけない。
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