2020.11.2(月)雨
9月29日、舞鶴引揚記念館に行く。ユネスコ世界記憶遺産登録5周年特別企画として日本の記憶遺産を紹介、展示されていると新聞紙上で見つけたからだ。その中に山本作兵衛さんの絵が展示されているというので勇んで出かけていった。 舞鶴引揚記念館
作兵衛さんの絵に逢ったのはもう30年近く前である。新聞の書評に岩波新書の名著復刊というので「地の底の笑い話」という本が紹介されて、その挿絵が作兵衛さんの絵であった。明治から昭和までの炭鉱の様子を実にリアルにスケッチされ、説明文もふんだんに入れられていて、記録としての価値も充分にありながらなんとなくユーモラスなタッチで描かれていて心に残る絵が随所に挿入されている。作兵衛さんは画家でもなく、50年間主に中小の炭鉱を渡り歩いた炭鉱夫なのである。だからこそ本当のヤマの様子が手に取るように分かるのである。退職してから描き続けた絵が3百余点というからものすごい。
世界の記憶パンフレット
ところが新書本なので絵は白黒で小さく、説明文も虫眼鏡がないと読めない。一見ユーモラスな感じの絵なんだが、内容は強烈で、厳しい労働と生活、今では考えられないような労務管理の様が描かれている。
そして2011年、作兵衛さんの絵が日本初の世界記憶遺産として登録されたのだ。(祝・山本作兵衛さん 2011.5.27参照)もっと絵が見たいと思い、古本屋で「画文集 炭鉱に生きる」講談社刊を購入、作兵衛さんの絵に実に細かい彩色がしてあることに気づく。説明の文もはっきり読めて、記録としてこれほど確かな資料は他にない。記憶遺産に登録される所以である。作兵衛さんの絵は田川市石炭歴史博物館に所蔵されているそうだが、一度も行ったことがなく、是非本物を見たいものだと思っていた。
御堂関白記や東寺百合文書など名だたる記憶遺産が展示される中、全て画文集などで見知った絵だが作兵衛さんの数点の絵だけを見てまわる。残念なことに全てが複製画であり、本物が見られるという期待は見事に裏切られてしまった。つづく
画文集にある絵、色づかいが素晴らしい。