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[FT]照明市場を揺るがすLED 勝ち残る企業は

2012年12月18日 08時08分21秒 | 経済
(2012年12月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 トーマス・エジソンとジョセフ・スワンが白熱電球を発明してから130年以上。よりエネルギー効率のよい照明を求めて白熱電球を段階的に廃止する動きが強まり、世界の電機業界を揺るがしている。


■世界の照明市場が1000億ユーロ規模へ




白熱電球はLED電球に取って代わられようとしている(独オスラムの白熱電球)=ロイター

 白熱電球の置き換えが進むのは、9月にエネルギー効率の悪い白熱電球の販売を停止した欧州連合(EU)だけではない。例えば、米国は2015年、中国は17年までに白熱電球の販売を禁止する見通しだ。

 実用性や効率の良さから白熱電球に代わり急速に普及しているのは、蛍光灯、高輝度放電(HID)ランプ、とりわけ発光ダイオード(LED)だ。ビルのデザインや標識、自動車といった新たな分野で採用が広がっている。

 照明は世界の電力の19%を消費しているが、長い間、安い消耗品だったため、照明について深く考える消費者は少なかった。「照明への意識は本当に低かった。誰にとっても、ありふれた生活用品だった」と、独ベレンベルグ銀行のウィリアム・マッキー氏は指摘する。

 こうした意識は近々変わりそうだ。米コンサルティング会社、マッキンゼーによると、昨年は730億ユーロ規模だった世界の照明市場は、20年までに1000億ユーロ規模に拡大すると見通しという。多くのアナリストはLED照明への転換点が近づいていると指摘する。特に商業分野では、製品価格が低下し、初期の投資コストを回収できる時期が迫ってきた。


■LED照明が当たり前に


 マッキンゼーによれば、世界の照明市場に占めるLEDの割合は昨年には12%だったが、16年に41%、20年には63%に増えるという。

 LEDは半導体技術に基づくため、従来の照明製造のノウハウは必要ない。このため、日本の日亜化学工業や米クリー、英国の企業などLED素子を手掛けるメーカーが市場に参入できた。
 「LEDは世界中で当たり前の照明になると確信している」と語るのは、IQEの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のドリュー・ネルソン氏だ。IQEはウェールズの企業で、半導体チップに使われる極薄のウエハーを製造。現在はLED分野にも事業を拡大している。




LED電球は照明の活用方法を変える可能性がある(11月9日、相模原市で開かれた、LED電球を使ったイルミネーションイベント)=共同

 「LEDは照明の活用方法を変えると思う。あたかも太陽のように、場所や雰囲気に合わせて光の具合を変えられるからだ」

 最近、英国の電子材料大手のクックソンから分社したLED部材メーカー、アレントのスティーブ・コルベット最高経営責任者(CEO)は「LED市場は爆発的に広がる寸前だ。電球1個の製造コストが現在の8ドルから4ドルに下がれば市場は離陸する」と見る。


■リストラ迫られる既存メーカー


 この照明革命は、フィリップスやシーメンス傘下のオスラム、ゼネラル・エレクトリックといった既存の照明メーカーを混乱に陥れている。これまで各社は、照明と照明用部材でシェアの合計が60%以上の寡占状態を続けてきた。

 LED照明の寿命は白熱電球の最大50倍で、買い替え需要に大きく依存してきた旧来の照明メーカーにとって大きな脅威だ。

 そこで既存メーカーは新規事業への投資を増やして、照明器具のような「下流」の事業に進出。省エネ効率の悪い照明の生産能力を縮小している。

 LED照明の製造に必要な技術は白熱電球とは違ううえ、白熱電球ほど労働力を必要としないため、短期的には利益や雇用は減るだろう。

 「白熱電球のような斜陽産業から資本を引き上げ、雇用を減らすリストラの動きが続くだろう」とベレンベルグ銀行のマッキー氏は言う。


■実は有利な既存メーカー


 売り上げで世界第2位の照明メーカーであるオスラムは12年度に1900人の人員を削減したのに続き、14年までにさらに4700人を削減すると先月発表した。オスラムは12年9月期に売り上げを54億ユーロまで拡大したが、最終損益は前の期の3億900万ユーロの黒字から1億2100万ユーロの赤字に転落した。同社は来年、シーメンス傘下から独立する予定だ。

 オスラム・リヒトのウォルフガング・デーエン最高経営責任者(CEO)は、将来の照明技術による雇用の拡大は「既存事業の変化の一部を補うだけだろう」と話す。
 照明の売り上げ世界一で、LEDの部品から照明器具まで幅広い製品を手がけるフィリップスも、複数の工場の閉鎖と数千人の人員削減を余儀なくされた。

 同社の照明部門の利益率は10年1~3月期の14%から11年10~12月期には3.7%まで低下した。

 フィリップスの子会社でLED素子大手のルミレッズは、生産能力の引き上げを急いだことに加え、レアメタルの価格上昇に見舞われ損失を出した。フィリップスによれば、今年10~12月期には黒字転換の見通しという。

 実は、アナリストは既存メーカーが照明革命の勝ち組になると予想する。こうした企業は、LEDに置き換わるまでの「つなぎ製品」として、エネルギー効率の高い既存照明を高価で販売できるからだ。

 これにより、既存メーカーはLEDの研究開発に順調に資金を投入できるだろう。


■新規参入の韓国メーカーに逆風


 一方で、中国を中心に生産能力が急増し、供給過剰や価格下落が生じて「上流」のLED素子メーカーを苦しめている。価格が下がればLEDへの移行は進むが、メーカーが研究開発に投資する余力は小さくなる。

 「LEDは成長著しい分野だが、競争も激しく利益を上げるのは非常に難しい。特に新規参入者には厳しい」。IMSリサーチのジェイミー・フォックス氏は現状をこう分析する。

 韓国では、サムスン電子とLG電子がテレビやタブレット端末、スマートフォンのバックライト開発で得た技術ノウハウを照明分野に活用し、シェア拡大を目指している。

 大和証券によると、10年にLG電子は1兆ウォン(9億3000万ドル)、サムスン電子は6000億~7000億ウォンをLED分野に投じたという。

 しかし、生産能力が過剰な一方で需要は盛り上がらず、工場の稼働率はサムスン電子が60%、LG電子は50%にとどまっている。


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