額面から健康保険料や所得税などがガバッと“天引き”された「給与明細」にガッカリする人もいるはずだ。直接税や社会保険料など世帯の自由にならない「非消費支出」(以下、天引き額)が急増している。総務省が9日発表した「家計調査」によると、3月の天引き額(2人以上世帯の勤労者世帯)は9万1000円と前年同月比で11カ月連続の増加となった。2022年度のボーナスも含めた月平均は11万5000円で前年比4.8%も増えている。
立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)は「政府は給料から天引きされる税金や社会保険料をジワジワと増額してきました。それが長期にわたる消費の低迷を引き起こしたと言えます」と指摘する。
■02年度8万円→12年度9万円→22年度11万円
実際、天引き額は激増している。天引き額の推移について、総務省の公表データを基に作成したのが別表だ。20年前と比べ月3万2000円(年間38万円)、10年前からは2万3000円(同27万円)の負担増だ。これだけ天引き額が膨れ上がれば、手取りの少なさを実感するのも無理はない。
消費マインドはズタズタ
なお、総務省統計局によると消費税は「消費支出」に含まれており、家計にとって避けられない負担として、天引き額とは別に消費税もある。消費税は14年に税率5%から8%に、19年に10%(食料品などは8%)に増税されている。
「月給から11万円も引かれ、買い物で10%もの消費税を取られれば、消費マインドはズタズタです。経済的不安から結婚や出産を躊躇することにもなりかねない。消費を好転させ、少子化に歯止めをかけるには、国民に課している大きな負担を軽減するしかありません。ところが、少子化対策の財源として、消費税や社会保険料を増やす議論が盛んになっている。的外れと言わざるを得ません」(浦野広明氏)
値上げラッシュは長期化する見通しだ。手取りが減り続ければ、暮らしはボロボロだ。
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