(写真・保坂駱駝)
国民から“増税メガネ”と揶揄されることを、本人は相当気にしているようだ。岸田文雄首相は、9月25日に「税収増等を国民に適切に還元するべく、経済対策を実施したい」と発言して以降、たびたび「減税」をアピールしている。森山裕総務会長や世耕弘成参院幹事長などの自民党幹部も同調し、国会では“減税解散”が噂されている。
だが、騙されてはいけない。実際は、これから増税の予定が山積みなのだから。
「この10年で、国民の負担は明らかに増えています」
と話すのは、ファイナンシャルプランナーで家計コンサルタントの八ツ井慶子氏だ。
今回、八ツ井氏は2013年から2023年の10年間で、どれだけ家計に負担が増えているかをシミュレーションしてくれた。
厚生年金や介護・雇用保険料率の上昇や、消費増税などを考慮すると、年収300万円世帯は年8.7万円、500万円世帯は年14.4万円、700万円世帯は年17.8万円の負担増となるという(すべて1000円未満は切り捨て)。
「会社員の夫の年収が920万円、パートの妻の年収が109万円、公立高校2年生の子供がいる家庭の場合、いわゆる『106万円の壁』(短時間労働者の厚生年金・健康保険の適用拡大)が創設されたことや、高校授業料無償化の所得制限が導入されたことで、年間の負担は49万円も増えることになるのです」
2023年10月からは、「106万円の壁」または「130万円の壁」を超えることで発生する保険料を肩代わりする企業への補助金支給が始まったが、扶養に入っていない人には不公平になるうえ、物価の上昇に比べれば“焼け石に水”だ。
さらに、税理士の脇田弥輝氏は「10月から導入されたインボイス制度の影響は大きい」と語る。
「これまで、売上げが1000万円以下の事業者は消費税の納付が免除されていましたが、課税されるケースが多くなりました。物価高、人件費が高騰しているなかで、商品価格に転嫁できずに苦しんでいる中小企業は多く、政府が推奨しているサラリーマンの副業の拡大にも逆風でしょう」
身近なところだと「ふるさと納税」も改悪されるという。
「これまでも、自治体には『経費は寄付額の5割まで』というルールがありましたが、10月からは寄付金受領証の発行費用なども経費に含まなければなりません。そのぶん、これまでもらえていた1キロのお肉が800グラムに減ってしまうかもしれないのです。それでも生活を守るために、『ふるさと納税』は利用したほうがいいと思います」(脇田氏)
2025年に廃止されるかもしれない扶養控除も見逃せない。
「私が小さな子供を2人育てていた民主党政権時代の2010年に『子ども手当』が新設され、その代わりに『年少扶養控除』が廃止されました。その後の2012年に子ども手当は廃止されたのに、『年少扶養控除』が復活することはありませんでした。今回、岸田政権は児童手当の対象を高校生まで広げるとしていますが、一方で16歳以上の扶養控除が廃止される可能性があります。自分が苦労した経験があるので、実現性に疑問符がつきます。毎年12月に公表される『税制改正大綱』で、しれっと増税案が盛り込まれていないか、注意しましょう」(脇田氏)
岸田政権の甘言は、色メガネで見ておいたほうがよさそうだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます